2006/08/27

第1話 健康は人を幸せにする

「10年前、肺がんで、もう永くないといわれた時は正直、まだ死にたくねえなって思ったよ」 叔父はそう言ってグイっと日本酒を飲みました。

ドイツで歯科医をしている叔父が久しぶりに日本に戻ってきたのです。叔父は10年前に肺がんで、余命いくばくもないと宣告されたのです。それ以来、叔父は人生を全速力で駆け抜けてきました。

 

いつも、べらんめい口調で、「酒も飲まずに長生きするくれぇなら死んだ方がましだぜ」というチャキチャキの江戸っ子です。今夜一緒にお酒を飲んだらもう、明日には大阪へ行き、次会えるのは早くても3年後です。そんな叔父と、ひとときをかみ締めるように共に過ごしていました。

 

まさしく一期一会です。

 

「でも今ぁ、いつ死んでも何のこうけぇ(後悔)もねえな」

「なんでそう思うの?」と聞くと、「そういう生き方をしてきたからよ」冷酒のコップを見つめたまま言いました。一緒にお酒を飲む短い時間に、叔父は、口は悪いですが、私に何かを伝えようとしていました。「おめえも、でぇじ(大事)な人生を全力で生きな」という言葉が私の胸の中に飛び込んできました。

 

私の過去に関わってきた人の中には、志半ばで亡くなっていった人がいます。

とても残念でたまりません。今、私の身のまわりには、本当は自分のやりたいことがあるのに、「体力的に難しいから」「自分はもうそれをやるには年だからできない」と、漏らす人がたくさんいます。その人たちは志があるのに、体に自信がないということで、あきらめが出てくるのです。

 

私はスポーツトレーナーとして、志のある人の、夢が詰まったボディを健全に保つために全力を注いでいます。

出来ることは何でもやろうと思っているのです。

 私がなぜ「志ある人のリッチエイジング」を書くに至ったかを話します。

 

<アニマルのような家族>

 

私は埼玉県幸手市に生まれ、育ちました。四人兄弟の三番目で、唯一の女の子でした。

頑固な父は建設会社を営んでおり、豪快な家族の肝っ玉母さんは底抜けに明るい人でした。

荒川というその名の通り、荒々しいオトコにまみれて、花一輪生けていないような家で育ちました。兄弟で取っ組み合いのケンカをすると、「何やってんだ!並べ!」といわれて生まれた順に並び、「番号!」といわれると「1,2,3,4」と声を出します。

私は3番目だったので「3!」といっていました。

 

 兄や弟は、けんか、バイク事故、車の事故、サッカーでの複雑骨折など、男の子の起こす事件は全てやったというような人たちです。

そのたび、父は夜中に病院や事故現場に走り、兄を殴ってしかったり事故の被害者とケンカしたりして4人の子供を育ててくれました。私たち4人を成人させる間、父は一度も倒れたことがありませんでした。激しい家族でしたが、愛情で守られていました。

 

<おじさんの死といとこ>

 

ある日、衝撃的なことが起こりました。

私には仲良しのいとこがいました。夏休みになると決まって、いとこの住む横須賀に泊まりに行っていました。内気な私に、おじさんはいつも優しく接してくれましたが、昼間でも、酒を浴びるように飲んでいました。子供の眼からみても、アル中というのはすぐに分かりました。

 

いとこが小学三年生の時、おじさんはこの世を去りました。

いとこはその後、二年くらいお母さんと離れて、私の家の近くの小学校に通うことになりました。健康を害し命を失うことは、なんて理不尽なことなのでしょう。私の大好きないとこがどんな思いであの二年間を過ごしたかは、よくわかっていました。

 

今の年齢になってみればわかることですが、おじさんは人生に希望を失っていたと思います。酒に依存して、人生に対するやりきれない想いを紛らわしていたのかもしれません。

これが、人間は目標を失うと、目に見えない内面に大きな影響を与えてしまうこと、それが周りにどれほど大きな影響を及ぼすことになるのかを知る、最初の体験でした。

 

<父の挫折と私の誓い>

 

私がインストラクターになって少したったとき、父の会社は倒産しました。

借金の取立てに遭い、家に来たり電話口で脅され、生きた心地がしないような日々が続きました。親戚からは批難され、家族はみんな、言葉ではいいようのないやりきれなさと不安の渦の中にいました。私はこんなときでも、ジムのお客の前で、笑顔でいなきゃいけないと思う自分に「自分の心は健康なんだろうか」と尋ねていました。

 

ゼロからスタートしようと、60歳の父は雇われ人として工事現場で働きだしました。

「やせ我慢してナンボ」を美徳と考える父は、「久しぶりに現場にでると、何かこう、体がスッキリするな」と言いました。

「体がしんどい」といわれるより数倍、私には辛さが伝わります。私はその言葉を聞いたとき、胸からこみ上げる感情をおさえながら、父に対して「ずっと健康でいてほしい」という気持ちから、「今度は私が父を守る」そして、じわじわとある決意が生まれました。 

 

「頑張っている人の身体を、私は守ろう。

身体が元気なら気持ちが病んでも立て直すことができる!」

そしてきっと、気持ちが健康ならば、身体も健全である!と。

 

<豊かな人生には志と体力が必要だ>

 

わたしは、現在フィットネスインストラクターとして,頑張っている人がその分野で活躍し続けられるにはどうしたらいいのかを考えています。

人の健康は物質的なこと(腰痛、膝イタ、四十肩、更年期障害、生活習慣病など)だけではなく、私のおじさんのように、目に見えない精神的なことに強く影響をうけるのです。

そして、私の父のように肉体を奮い立たせることで精神を立て直すこともできるのです。

 

私のお客様の人生には色んなことが起きています。

 

・仕事で活躍していた女性が、結婚し、高齢で出産をしました。その後、「責任のある仕事であるが故に、生半可な気持ちではできない」と復帰に二の足をふんでいる人が、一念発起して、ジムに通うようになって見違えるように元気になっておられます。

・自分は医者で患者に「痩せなさい」といっているのに、「自分が太っているから説得力がない」と運動をはじめたという人。

・60歳を超え功成り名を遂げた人が、「もう一度人生でやるべきことをやるために運動している」とおっしゃる人。

 

皆、私の愛すべき、志ある人ばかりだ。

 

今まで関わってきた、志半ばでくじけそうになった人達すべてに、私にできることが

あったはずだと思っています。

 

身体が整えば、気持ちも整う。肉体の準備できれば、魂は叫ぶ。

その逆もまたしかりです。

世のリーダーが限られた人生の時間で、夢が叶えられるよう、やるべきことがしっかりこなせる身体でいられるよう、夢をつめたボディを保ち、心を保てるようにするのが、私の「みんなの身体を守る」という志です。

 

エイジング:・・・人生の一歩一歩をパワフルに着実に踏めるよう、そして毎年誕生日を迎える時は「何年も生きているけど今が一番幸せ」と思えるよう、リッチな人生を願って皆さんに、心と身体のアンチエイジングを実践的にお話させて頂きたいと思います。

志あるリー ダーのための「寺子屋」塾トップページへ