2007/03/19  

第9話 「身体に意識をむける」腰痛は改善できる

今や国民病と呼ばれるほど、多くの人が患う腰痛をはじめ、皆さん、肩こりや膝の痛みに悩まされた経験はありませんか?

 

 症状はさまざまだと思いますが、辛いひとは仕事どころではなく、ただただ、痛みと戦わなければなりません。病気ではないにしても日常のパワーを欠き、志に向かってまい進するエネルギーに小さなブレーキをかけているとすれば、改善したいものです。

 

 私はトレーナーとして、まず筋肉、骨格レベルでの話になりますが、そういった体の不具合、不定愁訴の原因から話を進めて、改善エクササイズのお話をしたいと思います。あるお客様との会話から、志と身体に対する共通点を織り交ぜながら。

 

<プロの目>

 

パーソナルトレーニングの中に「ペアストレッチ」というものがあります。

 

 ペアストレッチとは、マンツーマンでトレーナーがお客様の身体をストレッチするのですが、ひとり一人の体型や、筋肉の多さ、硬さなどで、ストレッチを微調整し、一番効果的に伸びるよう、押す力や関節の角度を加減する必要があります。

 

 経営コンサル業の会社の経営者のお客様から、こんな言葉をかけて頂いたときのことです。

 

「キミ、ストレッチがうまいね。ひねる角度といい、押すタイミングといい、丁度いいよ。さすが、プロだね」

 

 私は素直にうれしくて、「ありがとうございます」といいました。でも反面、驚きもありました。そんなに繊細な違いを感じていただけるものなんだという、「鋭さ」に意外性を覚えたのです。

 

 トレーナーといえば、男性が多いのですが、そんな中、女性の私が大きな身体の男性のお客様を担当することも少なくありません。押す力が弱い、頼りにならない、そう思われないよう全身を使って体重移動をしたり、ひねる角度を工夫したり、部位ごとに伸ばすタイミングを合わせたり、ずらしたりしながら自分なりのストレッチ方法を模索してきました。

 

 そして、そういう仕事は気づかれないよう、「さり気なくやる」という気持ちだったのです。そこをつつかれたので、「分かってくれるんだ」という嬉しさと「そんなに分かってしまうんだ」という身が引き締まる感覚が同時に起こりました。

 

その経営コンサルのお客様は続けてこう言いました。

 

「僕はプロが好きなんだ。40代を過ぎたら、皆何らかのプロになっていると思うんだ。他の業種でもプロと話すと、色んなヒントがもらえて勉強になるよ。色んなヒントを受けながら、時代の流れを読んで日々、攻めていかないといけないと思うよ。そうしないと我々のような中小企業は残れないからなぁ・・・」

 

日々、アンテナを高く張って、ものごとに注意を払い、繊細な感覚と潔い決断力が必要なリーダーは、無意識のうちにバランス感覚が優れてしまうのでしょうか。「中小企業が残る」ため、その水面下で、色んな「意識」が働いているから、他人のちょっとした工夫や努力に敏感に反応するのでしょう。そのお客様との会話で、私は「意識の世界」を身体に置き換えて考えてみました。

 

<無意識の影響からの脱却>

 

 人間の身体には「抗重力筋」と呼ばれる筋力があります。

 

 私たちは重力の世界で生きていますが、そこで二本足で立っているだけで、もう腰痛になるようにできている、といっても過言ではありません。

 

 人間の身体は自然に、前に倒れるようにできています。それを後ろから、つまり背中の筋力をはじめ、腹筋や太ももの筋肉、その他「抗重力筋」といわれるからだのあちこちの筋力が直立を維持するため、持続的に無意識に近い状態で力を出し続け、身体を支え続けているのです。

 

魚を釣り上げているところを想像してみてください。

 

魚を釣ろうと、身体が後ろに踏ん張るように、人の身体も、前に倒れないよう、うしろから引っ張っているのです。引っ張る力を出しているのは体重です。その体重を支えているのが骨格です。身体の土台は骨盤にありますから、骨盤の後ろには、上半身の体重が乗っかってくるのです。そこに負担がくるのは自然です。腰痛になるのは人間が二本足に進化した宿命なのかもしれません。

 

 そういった抗重力筋は、いつも働いているのに、しっかりケアしてあげないと疲れがたまって、充分身体を支えきれなくなり、結果、「ねこぜ」になったり「反り腰」になったりして身体に歪みが生じてきます。

 

 身体の中で弱い筋とコリになるほど硬く緊張する筋とに分かれてしまい、姿勢がくずれ、腰痛、肩こり、膝の痛みなどに広がってゆくのです。

 

 仕事で目にみえないレベルでの小さくて地道な努力が大きな成果をうみだすように、身体にも、目にみえないレベルでいつも力を出し続けて日常をスムーズに動かす抗重力筋の存在を忘れるわけにいきません。

 

肩こりや腰痛になるのは、「身体に対して意識を働かせていない」というシグナルでもあり、行動や思考が歪んできていないかというメッセージと受け取ることができるかも知れません。

 

 経営コンサルのお客様のように、ビジネスに対しての敏感さを、身体に対してもむけてゆくことが、肩こり、腰痛、膝の痛みからの予防となり、ひいてはココロも身体も健全なまま、パワフルに志に向かってゆけるコンディショニングになるはずです。

 

<身体のクセを知る>

 

もちろん、日ごろから充分ケアしているのに、腰痛がひどい、肩こりが治らないという方もたくさんいらっしゃいます。筋肉、骨格レベルの話では、まず自分の姿勢をよく知り、特徴をつかむ必要があります。自分の身体のくせがわかれば、それに対する対応ができます。根本的な原因をつかみ、日ごろから意識して気をつけるようにすれば、それだけで大きく改善に向かいます。

 

腰痛には色んな原因がありますが、多く共通しているのは「長い時間同じ姿勢をとり続けること」です。慢性的な疲労からくる腰痛のひとは、まずは骨盤やせぼねまわりをほぐす動作から行うことをお勧めします。ヘルニアやギックリ腰を経験された方などは、医師から「運動してもよい」といわれたら、様子をみながら行います。

 

次回は具体的に姿勢のタイプと特徴をお伝えしたいと思います。そして、タイプ別ほぐし動作を行いましょう。

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