2008.11.26   

第2話「特異性の原則 アプローチその1猫背タイプ

皆さん、こんにちは。
パーソナルトレーナーの荒川です。

第1話では、私がなぜ「志あるリッチエイジング」を書くに至ったかの説明をさせて頂きました。第2話以降は、実際に身体の使い方について、世の中のリーダーたちにお伝えできそうなことを私なりの表現で書いていこうと思います。

皆さんは、「特異性」という言葉を頻繁に使いますか?
トレーニンング&コンディショニングの世界ではこの言葉がよく出てきます。

<特異性の原則>

まず、想像しやすいところで、サッカーや野球のプロスポーツの体型を思い浮かべてください。サッカー選手は足が太く、激しいディフェンスに耐えられるよう、全身に筋力が覆われています。野球選手は大きく、強靭な肩を持ちます。腰をしっかり据えて構えるため、安定した下半身をもちます。長いシーズンとハードなスケジュールのため、スタミナという意味である程度の脂肪も必要です。

人間の身体はその環境に適したように、特異的に適応するようになっています。
少し固い言い方ですが、特異的(SAID)

S=specific  特異的な
A=adaptation適応
I=imposed   課された
D=demand    要求

身体は「課された要求に対して特異的に適応する」という意味です。競技の特異性を考慮してトレーニングする必要があるのです。

野球のキャッチャーだったら、座った姿勢からボールをキャッチし、素早く立ち上がってセカンドで送球することがあります。だとしたらスクワットでは下までしっかりしゃがみこむフルスクワットでなければならないし、素早く送球するため、高重量のスクワットでなければならないのです。

その動作の特異性は競技スポーツの世界だけに留まらず、一般的な人の動作にも当てはまるのです。

一日座って運転をするタクシードライバーと、海外出張が多く時差の狭間で戦うビジネスマンと、子供の目線に合わせてしゃがむことの多い保育士さんとは、適した運動メニューがかなり変わってきます。もっと突っ込むと、仕事(環境)も考慮しますが、その人のバランスのとり方で生まれた体の歪みをチェックすることから、一人ひとりの特異性が始まっています。

人に性格や価値観があるように、身体にも何らかの「クセ」があり、「タイプ」があり、「こうなりたい」という目標があります。そういったものを考慮して、道筋を立てていくのがパーソナルトレーニングになります。

<アプローチ例その1>

あるクライアントの例です。外資系製薬会社の日本のトップの方で、ひどく猫背でした。肩に50肩の名残があり(関節が硬くなってしまった)、身体は全体的に硬い方でした。「身体を柔らかくして体力アップしたい」とのことでしたので全身の柔軟性をチェックし、右の肩甲骨からアプローチすることにしました。

肩でも右の方が関節の動きが充分に可動していなかったのでまずはストレッチをし、肩甲骨の動きを身体に覚えてもらいました。左右の差が少なくなってきたら、回旋系の動きやその近辺の連動する動きなども見て、今度は猫背である背中にアプローチします。

猫背の原因は色々ですが、状態としては背中の筋力が弱くなって、形は全体に丸みを帯びており、重力に従いやすくなっています。エクササイズについてはあとで触れますが、ここで皆さんにも関わってくる大切な言葉がありますので、その説明を先にします。

「抗重力筋」という言葉をご存知でしょうか?
重力下で生きている人間は二本足で活動するために、身体が前に倒れないよう、いくつかの筋肉が持続的に力を発揮し続けているのです。その筋肉のことを抗重力筋といいます。背中の筋肉は代表的な抗重力筋なのです。他に腹筋やおしりの外側の筋肉、ももの付け根の筋肉など色々あります。

そのクライアントは2〜3週に1回の割合でパーソナルを受け、自主トレも少し行っていただき、スタートしてから1ヶ月半〜2ヶ月で身体に変化がみられました。胸が晴れて背中の丸みが弱くなってきました。肩凝りが軽くなり、マッサージに通わなくなったとおっしゃいます。右肩は完全ではないですが、動く範囲は少しずつ増えてきました。もう少しですね。

お仕事柄、責任ある立場に就かれており、何百人の前でセミナーをしたり、講演をしたりする方です。胸が晴れていた方が堂々と見え、若々しく映ります。その方がきっと聞き手にも伝わりやすいでしょう。

昔、新入社員だった頃、職場の雰囲気を見て、「自分も数年後にはこんな先輩のようになるのかなぁ」と感じたことはありませんでしたか?みんな言葉に出すほどハッキリとしたものでないにしろ、野球体型、サッカー体型というのと同じように、いかにも○○会社らしい、とか○○社員オーラという特異性は既にありますよね。もしかしたら人の動作にとどまらず、特異性というのはそんな目に見えない空気にも潜んでいるのかもしれません。

<エクササイズその1猫背改善>

第2話の最後に、話の中で触れた猫背を改善するエクササイズをご紹介します。
特異性の原則の通り、例のクライアントとまったく同じエクササイズ法をお伝えすることは不可能ですが、それでも一般的に猫背の方に必要なエクササイズをご紹介します。

 

A. 首のストレッチをします。手と反対方向に頭を倒します。左右それぞれで行います。片方で30秒くらいキープします。

 

 

 

 

 

 

 

 

B. 肘を伸ばしたまま、肩を前後にうごかします。首を動かさないよう。 (肩甲骨の動きを意識します)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

C. 仰向けになり手を天井に上げたところから頭上に下ろします。 (胸の伸びを感じ、背中の筋力で下ろします)

 

 

 

 

 

 

 

D. Cと同じ動作を重力に逆らって行う。手は下から上へ。背筋を意識して、 背中が丸くならないよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

E. 背中を丸くできるよう、胸の下にクッションなど置いて肩甲骨から頭までをナナメ一直線になるよう起き上がる。背中が使われているのを意識します。 反動は使わないようにします。上で2秒くらいとめられたらより良いです。

 

 

 

 

 

Aから順番に行うと、身体が、丸すぎた背中の湾曲を自分の背筋力で自然なカーブにもどそうと働き出してくれます。
上記のAからEまでを各項目10回くらい行うのを1セットとして、2〜3セット行うとよいでしょう。1日1度、週に3度くらい行ってみてください。2ヶ月くらい行うと変化が出てくるかもしれません。是非、お試しください!

 

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