2008.12.29  

第3話「身体の軸 こころの軸」

<バランストレーニング>

 

白髪でダンディな60歳前半の経営者にバランス力をつけるトレーニングをしていたときのことです。バランスを崩して、ふらついてしまいました。

「ん〜、情けないなあ!」

その方の横顔をチラっと観ると、はっとするほど真剣な表情に

大きな汗が、額にびっしょりになっていました。

余裕など全くなく、ただひたむきに今この瞬間の動きに集中しておられます。

社員200人を超える大きな会社の社長で、とても穏やかで暖かく、イキイキされています。

 

こんなに人生を重ねた人でも、なりふりかまわず真剣に集中されている・・・。

 

トレーニングの前後の素のご様子と、トレーニング中の集中力とのギャップにこれほど差がある方は、なかなかおられません。自分を甘やかすことなく挑戦する力に、バランストレーニングの本質とその方の若さの秘訣を見つけた気がしました。

 

バランストレーニングはボールを使ったり、片足になって身体の色んな部位を疲労させたりと、不安定な環境を作って、安定力を高める神経系トレーニングです。今話題のピラティスやヨガといったエクササイズもバランスの要素がふんだんに入っています。

環境を不利にして身体を鍛えると言う意味ではマラソンの高地トレーニングなどと同じ考えです。バランスを不安定にすると人間は、身体を安定させよう、安定させようとして、神経系の働きが良くなり、「身体の軸を、身体が覚えるようになる」のです。

 

志ある人が落ち込んだりあきらめかけたりしても、自分の志に戻ってまた自らを奮い立たせられるように、身体にも志というか、「軸」があるのです。その軸からすべての動作が行えるようになると、手足をダイナミックに動かしても動作をコントロールできるので、競技スポーツ全般パフォーマンスが上がると言われています。また、バランスがとれるということは、姿勢の改善にもつながり、背骨や肩甲骨、骨盤などの骨の配列が整い、歪みが緩和され、肩こり、腰痛が和らぐという効果も期待できるのです。骨格の配列がしかるべき場所におさまると、内臓の働きにも良い効果が生まれるといわれています。こころと身体には共通して、核となるもの、「こころの軸、身体の軸」が存在するように思います。

 

<軸に戻る> 

 

バランストレーニングをしていた白髪の経営者の体は、自分の身体の軸に戻ろう、戻ろう、としていました。ダンディなそのお客様の会社は安泰で、お子様二人は立派に独立なさっています。真剣にバランストレーニングをするその方の横顔は、まるで安定した人生にわざと不安定さを与えて自らを鼓舞させようとしているかに見えました。

 

私はフィットネス業界で約10年働いています。「一人前」というにはまだまだですが、一番初めにインストラクターとして、人前でプレゼンをしたときに比べれば、技術面では成長したでしょう。昔の自分のレッスンビデオを観ていても、今ならこんな運びはしない、もっとこうする、という発想があります。

でも、この経営者のようになりふり構わず、がむしゃらに純粋に突き進んでいないという想いが存在していることに気がつきました。

 

皆さんは、10年前の自分と比べて、忘れていたことを思い出す時がありますか?

 

私はバランストレーニングで必死に身体の軸を探しているお客様の表情を観ることで、不安定だった頃の自分、不安を努力に変えることで実は成長していた頃の自分を思い出しました。そしてこれからは、ぬるま湯につかることなく、自ら厳しい環境に身を置いて昔の自分レベルのパワーを引き出す方法を見出して行くというメッセージを受け取ります。

 

世のリーダー達は自分の志を全うするため、事業として責任を負っている方ばかりです。人生では、志に生きれば生きるほど、それを揺るがせる事象がたくさんあるでしょう。想いが強ければ強いほど、今の自分と理想の自分との差に落ち込む時があれば、事業が好調で油断がでる時もあるかもしれません。そんな時に「自分の軸」をしっかり把握できたら、人生というフィールドで、パフォーマンスも上がるような気がします!

心技体、身体のバランストレーニングをすることで、自分の立ち姿勢に「中心」を感じてみてください。ヨガが大ブームですが、揺るぎない古い歴史と精神的、文化的バックグラウンドを併せ持つ身体のバランストレーニングだからでしょうか。本来人間が持つバランス感覚を呼び覚ますことで、こころも研ぎ澄まされてくるのかも知れません。

 

今回はバランスの基本中の基本、腹部の丹田意識エクササイズをご紹介いたします。精神的に志を見失いそうなときは、肉体からアプローチしてみてはいかがでしょうか?

A1
A2
A3
A4

基本

A1.まず、仰向けに寝て膝を曲げます。

A2.息を吐いて肋骨が閉じてゆくのを感じながら上半身を起こします(肩甲骨が離れる程度)

A3.左の膝を15度〜20度程度開きます(くるぶしはつける)

POINT!

腹部が引っ張られた足の方にぶれるので、それをへそ下あたりで真ん中に戻そう、戻そうと意識しながら行うと、丹田(へその少し下にあり人間の身体の中心といわれる場所)に力がはいります。

A4.同じように右の膝を15〜20度開いて丹田に意識を集中させる。肩がすくみやすいので注意。

B1
B2
B3

応用

1.対角の手と足を同時にゆっくり、床の着地面から離してゆく。

2.反対も同様に。四肢となる両手、両足のうち片手片足が着地面から離れることで 不安定さがさらに増してくるので、より腹部の丹田意識が必要になります。

3.中心からてこが長くなるほど強度が高くなるバリエーションです。反対も同様に。片足を伸ばして両手は頭の後ろでサポートします(これはキツイです!)すべてのポーズに10秒キープさせてみてください。おなかのプルプル感とともに、立った時、身体の中心軸を感じられたら慣れてきた証拠です!

不安定―・・・一般的にこの言葉からイメージするものはどこかマイナスのイメージがあるように思います。ところがスポーツの世界ではこれほどパワーのある言葉はないように思うのです。次回はもう少しスポーツにつっこんで「不安定の使いこなし」について触れてみたいと思います。

 

今日の格言

〜こころの軸がぶれたら、バランストレーニングで神経を研ぎ澄ませ〜

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