2010.7.5   

第17話 修学旅行エピソード 1 

私にとっての能繁期であるシーズンが終わり、久しぶりで書かせていただいています。

昨年は、新型インフルエンザでキャンセルが相次ぎましたが、今年はその反動もあり、お蔭様でと言う状況が続き、この半年で13,700人にこのワークショップをすることが出来ました。

毎回生のものをやり、お客様も毎回違うので、様々のことがあるのですが、この春記憶に残る嬉しいエピソードをご紹介します。

6月の始め、松戸市のある学校。270人という人数の多い学校でしたので、入場の際、添乗員の方と打ち合わせをし、半分位が入ったので楽屋で待機していました。

モニターもあるし、この人数ですと通常わぁんわぁんと凄い声が聞こえてくるのですが、
割合静かで、そのまま舞台に出て行きました。

「こんにちは。河村純子です。」と挨拶すると、「こんにちは。」とほぼ全員と言う感覚で元気な挨拶が返ってきました。この頃の子供たちは挨拶が出来ないと、よく言われますし、通常この最初の挨拶のときは、半分位の子供たちが、挨拶するのが普通なので、まずうれしいびっくりでした。

挨拶は人間関係を間違いなく良くするということを実感。気持ちよくスタート。この後も、とてもいい感じで「能楽おもしろ講座」を終わり生徒としゃべっていたら校長先生が来られました。

「河村さん、お世話になって今年で3年目になります。初めは実験でした。能を中学生にはという反対の声も正直あったのですが、教職員、生徒にも評判がよく、それを聞いた保護者からも続けてほしいと言う声が上がり3年たちました。ありがとうございました。これからもお世話になりたいと思っています。」と、うれしいお話を続けてふっと周りを見回したら、お座布団が片付けてあるのです。

しかも先生の指示があったというより、先生や生徒の皆さんが自然に片付けてくださったようなのです。少ない生徒数の学校ならいざ知らず、270人という人数ですので、また、うれしいびっくり。

全員帰られた後「あー、今日はいい学校だったなぁ。」と掃除をしていたら修学旅行の栞が。すぐ添乗員の方に連絡しましたが、取りに来られないとのことでしたので、学校に送ることにし、ぱらぱらっとめくったら先ほどの校長先生の言葉が。そこには「日本一の修学旅行」の文字があったのです。全文を掲載すると長くなるので、ざっとご紹介すると以下のようなことが書いてありました。

修学旅行とは「学ぶ旅人」であるということ。日本一を目指す皆に「時を守り、場を清め、礼を正そう」そして次のことを実践して欲しいということで

 

1. 時を守って、規律ある行動をとること。ルールを守る。
   One for all , all for one

2. 来たときよりも綺麗にすること。ごみを見つけたら拾い

  ましょう。

  スリッパを並べましょう。困っている人がいたら助け

  ましょう。

  出来ることを自分で見つけて実行しましょう。

3. 笑顔で挨拶すること。笑顔と共に元気で挨拶

  しましょう。

4. 感謝の気持ちを持つこと。感謝の気持ちを声や

  態度で伝えましょう。

  「ありがとう」の一言を。
 
 「そして成長した姿を京都や奈良の人々、そして世界の人に見てもらいましょう。 さあ、みんなで、日本一の修学旅行にしましょう。」と結んであったのです。

その横には、「修学旅行の目標を達成しよう」ということで、学年の先生の「最強のチームワークとは」という文章がありました。
 
 この栞を読ませていただき、先ほどの生徒たちの態度が納得できました。

素晴らしい指導者のもとには素晴らしい先生がいて、素晴らしい生徒、人間が育つということを実感しました。

この学校の他の先生との会話でも「うちの生徒たちは素晴らしいんです。」という言葉が印象に残っています。
 
 たくさんの修学旅行を通して、生徒は先生の作品ということを思うようになりました。

中学の3年間の結果が、日常とは違う修学旅行という場で出るということ。

最近の生徒を見ていると、確実に幼稚化していることを感じます。楽屋で出演の方たちが「今日は小学生ですか?」ということもあります。学校以前の問題は大きいと思います。しかし人は出会いによって変われるのです。

「うちの生徒は、どうしようもない」と言われる先生方に、是非考えて欲しいと思います。
                              つづく