2007/06/4
2008.10.06

第15話 続「凶器から身を守る」

これからお話しするのは、前回ご説明しました学校の先生たちの防犯対策としての護身術講習会で使ったマニュアルです。誠に下賎な方法ですが、参考になるかどうか、あくまでもこんな方法があるという紹介です。

 私は若い日に「殺すつもりで守れ」と格闘の指導者から教えられました。そして「一流のボディーガードは一流のテロリストでもある」とも教えられました。

 

こうしたら攻められる、こうしたら殺せる・・・など、常に守る側は攻める側に立って考え行動しなければならないからです。そうでないと予防線が張れません。

 

では、話しのやり直しです。

 

相手が刃物をもってきて、そして逃げ切れないなら、まず、周囲のものを武器にすることです。例えば以下のようなことが考えられます。


「椅子」〜ライオンなど猛獣の調教を行うみたいに使う

「灰皿」〜投げつける

「本・カバン」〜両手にもって楯にする

「ペン」〜凶器をもった相手の腕などを突く(意外と武器になります)

「服」〜腕に絡ませ、剣道の籠手やグローブのようにして防御に使う

「消化器」〜相手に向けて噴射する。

まだまだ日常の武器として他にも考えられますが、逃げることが出来れば「トイレ」がベストです。トイレは、内側から鍵がかけられて、家の中でもっとも堅固に出来ている場所ですからです。そして、窓から出れるように柵はないほうが良いです。そこで携帯電話で警察へ通報します。(鍵がかからず、窓のないトイレは避けてください)

 しかし、中々こういったことは常からの注意を必要としますので咄嗟の時は難しいでしょう。とにかく戦うことではなく「逃げる」ことを大前提に考えてください。何かをして・・・そしてひるませて逃げるのです。突破口を見出すための護身です。

イ.逃げる
ロ.物を投げる

ハ.長い物をもって応戦する

 

以下に箇条書きしたものは、イ.がだめならロ.、ロ.がだめならハ.と言うことですが、とうとうハ.まで来て防げなかったら、しかたありません「素手」で立ち向かうということになります。


 ロ.は、手近にある物を投げつけて、相手をひるませる、もしくは戦闘不可能な状態にしてしまうことが目的です。ここで注意するのが、何もかも投げつけてしまい、武器となるものが無くなってしまうようなことがないようにしなければなりません。たとえ灰皿やペンのひとつでも残しておくことです。これは接近戦の武器として備えます。

 

ハ.は、手近に鉄棒や傘、野球バットなどがあればそれを振ってまず武器を払い、そして相手を打ち、戦闘不能にします。戦闘不能になった時点で速やかに凶器を確保してすぐ警察へ電話です。

 

基本的には、なるべくとっくみあいとなるほど相手に近づかないことです。離れて戦うことです。これは女性ならなおさらです。

 

しかし、長い物をもってもそれを突破され、いよいよ接近戦となったならしかたありません。腹をくくるまでです。その技術を説明します。

 

凶器といいましても多々ありますので今回は刃物、それも短刀といたします。

 

慣れぬものが短刀をさばくのには、基本的にチャンスが2回あります。

1、力が起こるところ(相手が動こうと意識したところ)

     短刀を抜こうとするところ
     短刀を取り出そうとするところ
     短刀を振りかぶったところ
     短刀を引いたところ

2、力が終わったところ(相手が動き終わったとところ)

     短刀で突いて腕が伸びきったとところ
     短刀で突き終わって体勢が崩れたところ
  
 1の場合、その動こうと意識した瞬間に入り身で入り、相手の短刀を取る、もしくは払います。ただし、事前にしっかりと間をしめて、距離を縮めておかなくてはならなりません。

 いわゆる「出を押える」ということで、相手になんにもさせないことです。

 2の場合、相手が攻撃を仕掛けて来るのを間を取って(距離をとって)かわし、避け、相手が短刀を出す腕が伸びきったところ、つまり攻めの終了したところ(力の終わったところ)で短刀を払う、もしくは奪うものです。

1の体勢は「入り身」から「入り身」で、呼吸は「吐く息」から「吐く息」

2の体勢は「受身」から「入り身」で、呼吸は「吸う息」から「吐く息」


 以上の他には相手が刃物を切り払い、突きかかってくる最中にさばく方法がありますが、これは多少の武道的訓練を要します。

 例えば短刀で突いてくるのを、外から手で払い、反対の手で相手の手首を取り、関節を捻って倒す。倒したらすかさず、相手をうつ伏せに伏せてロックし、腕を電気コードやバンドで縛る。

 または上段から切り落としてくるのを、腕を上に揚げて 手刀で受け、反対の手で相手の肘を取り、下に向けて押さえ込む。あとは、先と同じです。

 

次に、ちょっとマニアックですが、私が身辺警護をしていたとき、次のような護身用の道具を携行させられていました。これは近頃市販されております。しかし、こういった物も逆に犯罪に用いられている場合も多く、まったく困った世の中となりました。

 噴射式催涙スプレー

 猛獣でも一瞬のうちにのた打ち回らせる強力なタイプもあり、離れていて使えるので最もお薦めです。ただ外にいたり、またクーラーや扇風機などの風でこちらが風下に成っている場合は逆効果です。必ず片手で口、鼻を押えて噴射します。

 特殊金属製伸縮式バトン

 警察も採用している伸縮式警棒。一振りで30〜40センチ伸びる金属製の棒。相手の手首をへし折る威力があります。ただ少し訓練が必要です。

 スタンガン

 高電圧のショックを与え、戦闘不能にさせる機器。最低15万ボルトの電圧を有するものはほしい。ただ接近戦で使うので相手の懐に入る技術と度胸が必要です。

以上にあげました内容は、あまりお勧めできません。戦いに入ってしまったらもう悲惨です。どちらかが傷つくしかないのですから。

 

最後に、極めて専門的ですが、武道の「攻防の理」についてお話します。 技を決めるには、一定の方式があります。この方式にのっとってすべての基本的技は形成されています。覚えておいて損はないでしょう。

 

「組技の方式」

 

相手の一打目の攻めを受け、次に二打目を打たせないようにしてから相手の体のバランスを奪い、こちらの予定していた技を出しやすい体勢に持ち込み、反撃を加えます。

1、距離(間)の種類

イ.近距離 〜掴みあいの間 
ロ.中距離 〜突き・蹴りの間
ハ.遠距離 〜剣(武器)の間

2、防御の種類

イ.押さえ 〜相手の打とうとする所を押えて打たせない。
ロ.払い  〜相手の攻めを受けの技で払い、崩す。
ハ.かわし 〜足捌き、体捌きで間を取る。

3、組技の順序(素手の場合)

イ.危険回避 相手の攻めを防御し、身を守る。 
ロ.追撃阻止 防御した後、二打目を打たせない。
ハ.崩し    相手のバランスを失わせる。
ニ.反撃    充分な体勢を整えて技を反す。

例・・・・イ. 相手が左の突きを突いてきた。それを右手で払って、攻撃を避ける 
    <危険回避>

    ロ. 次に、払ったらすぐ反射的に左手で攻撃を加え、相手の勢いを止める。
    つまり2打目を打たせない
    <追撃阻止>

    ハ. 相手の動きが一瞬止まったら、すぐ右手で相手の肩を下へ押さえ、次に繰り   

出す技(膝蹴り)にとって最もよい角度をつくる
    <崩し>

    ニ. 相手の崩れた体勢に対し、思い切り良く、技を打ち込む。
    <反撃>

 この後、ホ.に「決め」つまり「とどめ」が加わる。

 以上のケースの場合でしたら、背後へ回り込み相手の襟を取って引き倒して座らせ、顔面を左手で押えて、右の手刀を相手の首に打ち込む。


以上、いろいろと紹介してきましたが、なにはともあれ、人に恨まれず憎まれない心と技を常から磨くことだと思います。理解、和合こそ最強の武器です。


 和良久の稽古を積んだひとは、人に憎まれず、殺伐とした危険意識と無縁な存在になっているのです。

続く・・・

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