2007/05/07  

18話 「どのように目標を達成するのか」

 

さあ、これであなたの聴き方の体制はできましたね。これまでの聴き方の探求を踏まえ、それをどのように応用すれば大きな成果を掴めるのか、重要な課題を取り上げてお話しましょう。

 

 仕事の目標を達成するのは、経営者や部署の責任者にとっては、極めて重要なことです。会社の売上や利益目標を達成できなければ、それは会社の存続に関わる問題であることは自明のことです。

 

実際の例を使って話しましょう。あなたの会社で、営業を促進するためのセミナーを企画して、100名を集めようとしています。ところがあなたが単純に、このプロジェクト・メンバーに目標必達を叫んだとしても、多くの人たちはその悲壮な覚悟や行動について来てくれないのです。では、どのように目標に関する話をしたらよいのでしょうか?

 

●勇の目標

 目標数字は、「勇」のためにあると言っても過言ではありません。「100名を我々は必達しなければならない。それができなかったら、明日は無い。目標は達成しなければならない。先頭に立ってやるのは君しかいない。礎になってやってほしい」と、ストレートで熱のある言葉が必要なのです。

 

 「勇」の人生は、「達成」という器の中で起きています。したがって頼もしい存在ではありますが、愛、親、智の人たちがそれぞれの役割を果たす環境が無ければ、決して目標は達成されません。「愛」の人が作り出す感動、智の人たちのアイデアや情報、ものごとを着々と進める「親」の段取りがあってこそ、一つの仕事が成っていくのです。つまり、全ての聴き方を持った人たちが必要なのです。

 

●親の目標

「親」の人は、皆のために役に立ちたい、貢献したいと思っています。そのために自分の役割が見えないとやる気が起きないのです。

 

「私たちが集めるべき目標は100人だ。100人を集めるための我々の人数は10人しかいない。目標を達成するために、ひとりが10人ずつ集めれば100人になる。チームワークに気を配ってお互いに進捗を報告しあい、あなたの役割を果たしてほしい」という意味が伝われば、「親」にとって目標は達成するべきものになります。

 

全体像を示し、その中で自分の役割が明確になれば、「親」はその目標を達成しようと思うのです。さらにやり方まで段取りできれば、もっと着実に前進できます。

 

●愛の目標

 「愛」の聴き方は、100名という数字自体には魅力を感じません。たとえ参加者が少数であっても、来てくれた人たちが感動し喜んでくれたら、やってよかったと思うのです。100名という目標が大切なのではなく、中身が大切なのです。

 

「このセミナーを行うことで、参加者に感動や喜び、気づきがあったり、人生の転機になってもらいたい。そんな素晴らしいセミナーを100名でやりたいのだ。ぜひそれにふさわしい人に声をかけてほしい」ということを伝えると、愛の聴き方に響くのです。

 

でもこれはだけでは準備態勢を創るにすぎません。最後の「一厘の言葉」が必要です。もしあなたが智の聴き方で読んでいるなら、もうその答えは浮かんでいると思います。

 

「そのために、あなたの力を貸してほしい。あなたに助けてほしい」 

 

 もしあなたが「愛」で聴いているなら、私の書いていることに不快な思いをされているかもしれません。人の心を弄ぶ(もてあそぶ)ように聴こえるからです。

 

 繰り返しますが、私はこれをテクニックとして書いているのではありません。また、あなたがこれをノウハウとして捉えているとしたら、日常で使っても役に立ちません。人は、言葉を超えて伝わってくるあなたの意図を捉えているからです。人生は、そのようなことが見抜けない人たちが住む「甘い」世界ではありません。

 

●智の目標

「智」の人も数字自体に興味はありません。達成を通して何を得ることができるのか、今後どうなるのかが大切なのです。目標を達成することで、自分の未来が見えればやりたくなります。

 

このセミナーに人を集めることを通して、「あなたのコミュニケーション能力が高まる」、「人の埋もれた才能や可能性を見出すことができる」「営業ツールを作ることができる」「新しい価値観が生まれそうだ」といったことが明確になるのなら、やりたくなるのです。

 

「智」は、マイペースで自分の興味を探求しています。「智」は変化を好みます。新しいもの、変わったもの、有用なもの、を見つけては伝えたいのです。さらにいえば、人生で「真理」を求めています。そして常に発見や洞察のある人生を送りたいのです。

 

ここで、皆さんは、部下の「勇」「親」「愛」「智」を見分けて、個別に4グループをつくって、別々に個室に呼んで話をすると思いましたか。ひとりの人でも、「勇」と「智」が混在をしているひともおりますし、その時の状況によって、「愛」が突出して聴いている場合など、人間は複雑ですから、時と場合によって変化します。何しろ、全く違う父と母の遺伝子を引き継ぎ、生活環境も時々刻々変化するところで育ったわけですから、単純に「勇」だけの反応をするとは限らないのです。しかし、ある種の傾向はありますし、この4分類を意識して、マネージをすると、とても効果があると言うことです。

 

 例えば、4種類のひとが居ることを意識して、同じことを4種類の表現で話をすれば、それぞれの人が、自分の心に響いたときに反応をしてくれるのです。それで、反応を注意深く見ながら、うなずいた瞬間に、そのひとに具体的な呼びかけをするというのも、ひとつの方法でしょう。

 

 いずれにしても、4種類の聴き方があるということを理解して、いろいろな角度から、呼びかけて見てください。次回は、人を勇気づける方法について説明を致しましょう。     続く。

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