2007/05/28  

21話 夫婦の関係を見る

人生を豊かに生きるための基礎は家庭にあります。家庭がうまくいかなければ、実際に仕事にも大きな影響がでることは言うまでもありません。

 

仕事が忙しいときには家庭で過ごす時間は減り、コミュニケーションが不足します。 いや時間があったとして夫婦のお互いの聴き方が違えば、関係はうまくいきません。

 

私たちはもう聴き方を知ってしまった今、時間は言い訳になりませんよね。たとえ短時間であっても意思疎通は可能なのです。短時間で聴き方の垣根をどのように超えられるのか、夫婦の実例を使いながら、見ていきましょう。

 

 「夫は、私の辛い気持ちをわかってくれません。思いやりがないのです。人が困っているときにも、平気な顔をしているのです。仕事ばっかりやって、家庭を顧みることはなく、何が起きているかにも関心がないのです。子どもが小さいとき、泣いているのに平気で本を読んでいました。家族のことなど何も考えていないのです。これは一生許せません」

 

 「妻は、家に帰ってもグチしかいいません。子どものことにも必要以上に干渉して、子どもの成長と自立を妨げていると思います。子どもは自分のやりたいことが見つかれば自然にやる気を出して自分の人生を切り開いていくでしょう。しかし、このようなことを言うと、『あなたは子どもの気持ちが分かっていない。第一家庭に責任を全くとっていない』と言われてしまうのが落ちです。私は、家内に家庭を守ってもらって、一生懸命、仕事をしてきたと思っています。家族と仕事とどっちが大切なのということは、全く愚問だと思っています」

 

 「思いやり」「気持ち」「平気な顔」「許せない」という妻の言葉から、いかに感情や気持ちを大切にしているのかがよくわかります。つまり、「愛」の人なのです。「成長」「自立」「やりたいこと」「やる気」「切り開く」という夫の言葉には、いかに前に進むことが大切だと思っていることがわかります。つまり、「勇」なのです。

 

 「勇」は、仕事一筋にやることが、引いては家族のためにもなるし、家族のために一生懸命やっていると思っています。「愛」は、お互いの気持ちが分かり合えることを望んでいるのです。したがって、きつい言葉を投げかけ感情の交流を起こそうとするのです。

 

「愛」は、人が困っているときにはものすごいエネルギーを出し、救おうとします。相手の感情を感じ取りそれを増幅させて聴く傾向があり、自分の感情量も膨大なのです。だから自分の辛い気持ちを相手にも感じ、それで相手のために一生懸命尽くすのです。

 

 ところが「勇」は、気持ちはそれほど重要ではなく、それを乗り越えて目標を達成することのほうが、大切なのです。したがって、「愛」の人から見ると、「勇」は相手の気持ちを無視しているように思われるのです。これは、「親」や「智」に対しても同じです。「親」や「智」が思いやっているつもりでも、その基準は、「愛」と比べてはるかに低いので冷たい人だと思ってしまうのです。

 

 しかし、最初は、「勇」と「愛」の両者とも情熱的であり行動的なので、意気投合することも多く、男女だと情熱的な恋愛をし、結婚することも多々あります。ただ、一緒にいると、目標重視と感情重視の違いによって、心のすれ違いが起こり、衝突が起こるのです。

 

  また、次のような夫婦はどうでしょうか。

  「どの携帯電話会社のサービスが最も良いのかを徹底的に調べて、目的にあった携帯電話を買いたいと思っていますが、家内は全く興味を示さず、私がメールの返事を出さないとか、私のメールのマナーがどうだとか、くだらないことばかり言って、一向に話が進みません。どうしてもっとものごとの本質を考えないのか、驚きです」

 

 「夫は、携帯電話会社のサービスや機種選びに熱中し、社会人として最低守るべきマナーも守らず皆に迷惑をかけています。メールが来ても返事をしないし、読んでいるかさえわかりません。また夜中に平気でメールを出したりします。どんなサービスや機種を選んでも、皆に配慮しルールを守らなければ意味がありません。夫は社会生活がどういうものかわかっていないのです」

 

 説明するまでもなく、夫は「智」で妻は「親」であることはお分かりだと思います。「智」は自分のペースで「興味」を追いかけ、「親」の妻は、皆への配慮を優先するのです。お互いに冷静なので、「勇対愛」のような大きな争いにはなりにくいのですが、不満であることには変わりありません。

 

 この夫婦は、最初は「親」が「智」に合わせてくれるので、「智」は自分の興味をマイペースで行うことができます。「親」もものごとを決めるのに、「智」の鋭さはすばらしいので、男女だと結びつきやすい相手になります。ただ、一緒にいると上記のような不満が出てくるのです。

 

 もしお互いがこの聴き方の違いを、理解しあうことができたらどうでしょうか?お互いの欠点というよりも、お互いの特性であると見ることができれば、異なるコミュニケーションができます。

 

実際には、人は四つのどの聴き方も持っていますが、どの聴き方が強いのかを見抜き、また、あなたが話しているときに、どのような聴き方をしているのかを捉えながら、話すことが大切です。もしそれができれば、コミュニケーションにパワーが出てきて、人間関係に大きな違いが現われてきます。

 

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