2007/06/25   

23話 異なる聴き方の人を受け入れて瞬時に掴む

 

あなたが話をしたときに、まるで見当違いな答えが返ってくると、「自分のことがわかってもらえない」という不安や、「なぜそんなに曲解するのか」「そんなこと考えていたの」と驚くことがあるはずです。これは、聴き方がまったく異なることを理解すれば、納得できるはずです。

 

しかしこれは、相手にとっても同じことなのです。あなたの反応が、相手に思いがけない驚きで、受け取られたことがあるのではないでしょうか。まず、自分の聴き方の特徴を理解した上で、相手の聴き方がわかれば、その食い違いを超えることができます。

 

「勇」の強い私は、「智」の強い人からすると、「良く考えないで実行し、無駄ばかりしているバカ」というふうに映っています。しかし「すぐ行動し、失敗にもめげず粘り強く前進する」というのは私の特徴であり、それを抜いたら私は私でなくなるのです。

 

一方、私から「智」ベースの人を見ると、「理屈ばかりで行動しない臆病者」というふうに現れてきます。しかし「どのようなやり方をすれば無駄なく成功させることができるのか」と考えることは、「智」の最も顕著な特徴なのです。

 

私は、それぞれの人が持つ特徴やその人らしさを「個の花」と呼んでいます。あなたが欠点だと思っていた相手の特徴も相手が欠点と思っていたあなたのことも、それぞれ固有の「個の花」であり、尊重すべきものだったことがわかってきます。

 

この聴き方をつかむまでは、多くの人たちと良いコミュニケーンを取ることは難しく、仕事もうまく運びません。「勇」は、一生懸命やったことに対して、意見やアイデアを言われると腹が立つのです。やろうとしていることを邪魔されたように思うからです。「愛」も自分は理解されていないと聴いてしまい、怒りが出てきます。

 

「親」や「智」は、やっていることに対して何か言われると、表面上は冷静であまり反発しませんが、実際には仕事は動かなくなるのです。

 

かつて私は何か意見されると邪魔されたように聴いてしまい、長年、腹を立てていました。しかし相手は、私のために役に立とうとして意見をいってくれていたのです。こんなバカな私が聴き方の話をしているのだから、あなたも必ずできるようになります。

 

実際に、「出口さん、柔らかくなったね、怒らなくなったよ」と言われるようになりました。

日常の生活で自分の聴き方をキャッチできるようになると、本当に、腹が立たなくなってきたのです。聴き方を訓練することは、自分を磨くことに他ならないと思います。

 

あなたが、仕事の関係者や家族、友人と会ったときに、「そこが相手の欠点だ」と思うまさにその瞬間を捉えてほしいのです。また、友人のアドバイスや意見は、その人たちの聴き方から来ていることを、その瞬間に捉えてほしいのです。それは、あなたがこれまでの人間関係を劇的に変える機会になるからです。

 

頭で理解しても意味はありません。人と話しながら、「あ、自分は勇で聴いている。相手は、親だ」と瞬時につかめたらどうでしょうか。会話の最中に、聴き方に名前をつけることから始めるのです。そうすれば実際の人生で、あなたは聴き方をしだいに掴めるようになり、あなたの人間関係は革命的に進化します。

 

これが別項で詳述する「スーパーリスニング」なのです。

 

自分や人の傾聴を掴み、弱い傾聴を鍛えていくと、しだいに人との心の垣根が融けていくことを、あなたは日常生活で、人生で実感していくと思います。

 

私たちの周りには、自分の「好きなタイプ」としかつき合わない人がいます。しかし、これでは発展も平和もありません。異なる聴き方の人を自分の周辺においておくことは大事なことです。それによって、自分の足りないものを補うことができ、いい刺激にもなります。また自分の偏りを正すことにも役立ちます。これによって自分を磨いていくことができるのです。

 

また、仕事でもプロジェクトでも、バランスよく勇親愛智それぞれの聴き方ができる人たちが揃っていなければ、いい仕事はできません。経営がうまく行っていない会社や職場では、聴き方の種類が偏っていることがとても多いのです。自分の気にいる者を「できる奴」「能力のある人」と思ってしまうからです。

 

あなたは、自分の周辺に価値観の合う人たちばかりをそろえていないでしょうか。面接で自分に合うタイプばかりを選んでいないでしょうか。友人には好みのタイプばかりを集め仲良くしてはいないでしょうか。

 

本当に豊かな人生を日常で送るためには、また、自分が本当にやりたいことをするためには、四つの聴き方からくる「心の垣根」を取り払うことが必要です。自分のいちばん嫌いなタイプこそ自分のやるべきことのために役立つのです。

 

それぞれの四つの聴き方の人たちがうまく組み合わさっていることが、いい仕事を生み出し豊かな人生を築くのです。あなたの周囲の人たちを、四つの傾聴のどれが強いかを分析してほしいのです。

 

この実践によって、あなたのスーパーリスニングが鍛えられ、自分の「人の見方の偏り」を知ることができるだけでなく、自分の人生や事業にどのような人が大切なのかも見えてくるでしょう。つまり人生や仕事を成功させるためには、四つの傾聴能力の強い人たちが偏りなく、あなたの周りに存在している必要があることを、身を持って知ることになるでしょう。

 

 

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