2007/08/27  

25話 三つの内なる声

ここまで説明をしてきた段階まで到達することで、あなたは自分や周りの人たちの聴き方をかなり掴めたと思います。しかしこれからが重要なのです。それは、あなたの本当の選択を妨げてきた、自分でも気づかないフタをとることになるからです。

 

ここからお話しすることは、あなたの「内なる声」を聴くという領域です。誤解を生むこともあるかもしれません。また、理解できないと思うかもしれません。しかし、私は、ここに敢えて書かなければなりません。自分の人生を豊かに拓くためには、避けて通ることができないからです。

 

これまで以上に、「頭」で理解するのではく、あなたの感性と魂の分野で受け止めてほしいのです。さらに、日常の生活で自分自身に起こる内なる声を聴き、この内容を実践してほしいのです。あなたはしだいに内なる声を的確に捉えるようになり、人生は豊かに拓けていくことを実感できると思っているからです。

 

心の中にはさまざまな声が聴こえています。自分には「三つの内なる声」があることをあなたは知っているでしょうか?また、自分のそれらの声を区別できるでしょうか?

 

たとえば、仕事を前に進めるために、「あの人と話さなければならない」という声と、「いやどうせわかってもらえないから止めよう」という二つの相反する声が、自分の中に聴こえてきます。

 

一つは、あなたの志を支援し良い方向に導く声で、これを「善なる声」と呼びましょう。二つめは、あなたの志を崩壊させ悪い方向に導く声で、「悪なる声」と呼びましょう。これら二つは、あなたの心の声です。

 

あなたは「善と悪」という言葉を聴くと何か道徳的、宗教的なことを連想するかもしれません。また、この世界には善も悪もないと思う人もいるかもしれません。でも私が敢えてこの言葉を使っているのは、あとで述べる理由によって、それくらい峻別しなければ掴むことが難しいからなのです。

 

「話すべきだ」、もしくは「いや今は止めたほうよい。どうせわかってもらえないから」 どちらを選択すれば正しいのでしょうか。このように相対立する二つの心の声が、何か行動しようとするときに、あなたに聴こえてくるのではないでしょうか。決断するためには、つまりどちらが「善」でどちらが「悪」の声なのか、聴き分け判断しなければなりません。

 

三つめは、それら二つの声を聴きわけ判断する声なのです。私はこれを「審判する声」と呼んでいて、魂の領域にある声として、上の二つの心の声と区別しています。この「審判」という言葉は、スポーツや裁判で、ものごとの是非や優劣を判別するという意味で、使われています。

 

もし正しく審判できれば、あなたの人生は拓けていきます。別な言葉でいえば運命が好転していくのです。しかし何が善で何が悪なる声なのかを判別することは、実はかなり難しいのです。私はほとんどの人は、この判別がつかないまま毎日の行動の選択をしていると思っています。

 

なぜなら人は、二つの心の声を自分だと思い込んでいるからです。私たちは、「悪なる声」を峻別する「審判」の力をつけることが大切です。「本当の自分」がやるべき最も重要なことは、善悪二つの声のどちらが正しいのかを、審判し決断することなのです。

 

まず、よく出てくる私の内なる声を取り上げてみます。あなたも自分の人生にどんな内なる声が現われているのかを考えてください。

 

「この計画は、まだ詰めが甘い。さらにこの部分を吟味し徹底的に詰めなければならない」という厳しい内なる声が聴こえます。これは私の志をサポートする「善なる声」だと言えます。

 

一方、「これ以上計画を詰めている余裕がない。これは十分なレベルに達している。一日も早くこの計画を実行に移すほうが大切だ。マーケットは先に登場したものが圧倒的に優位なのだから」というもう一つのもっともらしいささやきが聴こえてくるのです。実際には更に計画を徹底的に詰めたからといって、私の体は壊れたりしません。

 

これは、私の志を妨げる「悪なる声」だと言えます。

 

私はその二つの声を聴き分け審判し、決断をすることになります。それが第三の私の声であり、魂の声なのです。二つの心の声を捉え最終的に決断する声が、「本当の自分」であったらどうでしょうか。

 

「え、何のこと。ピンと来ないよ。出口さんの言っていることの意味がわからない。なぜ大切なのかその重大性がわからない。第一、善だの悪だのと大げさだよ。本当は善悪なんてないんだよ」と、あなたは言うかもしれません。でももう少し読み進んでください。事の重大性がしだいに見えてきます。

 

 あるいは、畏れを抱いた人もいるかもしれません。これは直感的なもので今まで「自分である」と思っていたことが、崩されるような予感です。勇気を持って進みましょう。

 

三つの声の区別は人類の叡智

この三つの声は、自分を注意深く観察すれば区別できるようになります。実はこの区別は、人類の叡智に基づいており、あなたの人生に多くの示唆を含んでいるのです。

 

精神分析学の創始者ジークムント・フロイトは、人間の心を、本能的欲望を司る(つかさどる)「エス」、理性的な働きをする「自我」、善悪を判別する良心の働きをする「超自我」に分けました。

 

私の曽祖父である出口王仁三郎は、人間の精神は三つの守護霊からなり、善なる機能を有する霊を「正守護神」、それを妨げる悪なる機能を持つ霊を「副守護神」、根源的な神の分霊を「本守護神」と呼びました。

 

 この図を見てください。

 私たちの内側は、心の領域と魂の領域から成り立っています。心の領域には、あなたの「志をサポートする声」と「志を妨害する声」があります。魂の領域には、それら二つの

声を聴き分け、審判し決断する声があります。

    

面白いことに、この二人は、19世紀後半から20世紀の前半の同時代に生き、人間の本質に関して、詳細は異なるが類似の三元論を唱えたのです。この二人の人間精神の構造を表す概念は、実際の現象面で、私の言う「内なる三つの声」に対応すると考えています。

 

 

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