2013.11.11    

第5章 ガンは自殺行為か

第5章 ガンは自殺行為か

我々の通常の五感は、ある限られた周波数の波動しか捉えることができない。もし、霊と呼ばれるものが、通常の五感の範囲を超える、もっと微細で、高い周波数の波動を持つ存在だったらどうだろう。我々はその霊を見ることも聞くことも、さらににおいを嗅ぐことも味わうこともできない。そして皮膚が接触しても、たとえぶつかったとしても、それを感じることさえもできないだろう。

我々の五感が捉えることができる肉体レベルの波動を“この世”と呼ぶならば、五感を超えた”あの世”は必ずしも別な場所にあるとは限らない。ルドルフ•シュタイナーの言うアストラル体や”私”のレベルの波動である“あの世”の生命体は、実は目の前にいるかもしれない。死んだらあの世に行く、と言うけれど、別な場所に行ってしまうわけではなく、いわゆる死後の世界は我々のすぐまわりに広がっているかもしれないわけだ。

死後の世界があるかないかの議論はともかくとして、死の兆候が我々の肉体に出るとすれば、肉体の解体役である菌がそのサインに応じてやって来ても、決して不思議ではない。もしそうだとしたら、結核菌がもとで死亡した、と言われているのは実は、死ぬことになったから菌がやって来た、と言ってもいいだろう。原因と結果は逆かもしれないのだ。

今から100年ほど前、ルドルフ•シュタイナーの時代は結核は死の病と言われていた。ところが今は結核で亡くなるというのはあまり聞かなくなった。薬で菌を次々と退治するようになってしまったら、菌は解体役を果たせない。肉体が死の兆候を出しても、その助け役がいないわけだ。この結核のかわりに、現代の死亡原因トップとされているのは、ガンと心臓病だ。

ガンは、腫瘍がどんどんと肥大して周りの組織を圧迫し、肉体の機能を阻害して、ついには肉体全体を死に至らしめる、と言われている病だ。医師にガンだと宣告されたら、だいたいの人は、死を思い描くだろう。腫瘍の成長が第4段階まで進むと(全部で4段階)、あとどれだけ生きられるか、という推定余命まで通告される。まるで、死ぬことを前提としているかのようだ。この“死の病”ガンも、肉体が死に向かい始めたから生じる現象なのか。それとも、ガンに蝕ばまれたために、肉体が滅ぶのだろうか。

ガンの腫瘍は、ガン細胞の集合体だ。ガン細胞は、我々の通常の細胞が変身したものだ。これを細胞のガン化と呼んでいる。通常細胞がガン化する理由は、まだよく分かっていない。ガン化した細胞は、通常細胞とは性質も行動も全く違う。

通常細胞は周りの細胞と連携し、協力し合いながら、体の中の配置された場所で、そこに必要な機能を果たす。心臓に集まった細胞はみんなで心臓の機能を果たし、脳に集まった細胞は脳の機能を果たす。細胞分裂にも秩序があり、一定の数の細胞分裂しかしない。必要な数だけ細胞を増やすだけで、むやみやたらに細胞分裂を繰り返すことはしない。

そして、例えば傷ついて本来の機能を果たせなくなり、体に危害を与える可能性が出ると、自殺するようになっている。これを細胞のアポトーシス(細胞のプログラム死、英語ではApoptosis)と呼んでいる。通常細胞は体の必要な機能の一役を担うだけでなく、もし貢献できなくなると、あるいは体に害を与える可能性が出ると、自滅さえする。

これに対しガン細胞は、細胞としての本来の機能を果たさないだけでなく、周りとの協力関係は全く無視して、むやみやたらに細胞分裂を繰り返す。さらに、この細胞の暴走に歯止めをかけるアポトーシスの機能も働かなくなっている。それによって腫瘍はどんどん膨れ、周りの臓器などを圧迫するようになる。さらに増殖が進むと、臓器に浸食するなど危害を加え、機能不全をもたらす。もう一つ困ったことに、一部のガン細胞が体の別な場所に移動し、そこで無秩序な細胞分裂を始めることがある。これがガンの転移と呼ばれるものだ。へたをすると、体のあちこちで腫瘍が無制限に増殖する。

いくつかあるガン発生説で最有力だとされているのは、細胞分裂にからむ、そして分裂を統制するいくつかの重要な遺伝子に変異などの狂いが生じ、細胞分裂のコントロールが効かなくなる、という遺伝子説だ。この遺伝子の狂いをもたらす元凶と目されているのが、フリーラジカル(いわゆる活性酸素)や環境中の化学物質、放射性物質、あるいは細菌による感染などだ。

もうひとつ、微生物学者などが唱え続けているのに、医学会では全く無視されているのが微生物によるガン化説だ。細胞内に侵入したある微生物が、細胞の発電所と呼ばれるミトコンドリアのエネルギー生産を妨害し、エネルギー不足の細胞がガン化する、という説だ。ミトコンドリアで生産される熱エネルギーでは生存には不十分なので、細胞は非常用のエネルギー生産を発動する。

非常用のエネルギー生産は糖分を発酵して熱にする方式だ。まさにガン細胞は、この発酵方式でエネルギーを得ているのが、通常の細胞とは違う特徴のひとつだ。そしてこの発酵方式はミトコンドリアのエネルギー生産に比べて恐ろしく効率が悪い。一人の体に、十兆個以上ある細胞のうち、毎日千個単位がガン化している、と言われている。これを通常は免疫システムなどが次々と退治し、腫瘍の塊とならないように抑えている、と考えられている。ということは、フリーラジカル説が正しければ、フリーラジカルは我々の体のあちこちにいるわけだ。微生物説によれば、我々の体にはガンを引き起こす微生物が無数に生息していることになる。

フリーラジカルにせよ、バクテリアにせよ、世界中の誰のところにも無数に存在するわけだ。この中で、ガンになる人、つまりガン細胞が抑え込みを突破して増殖し、腫瘍の固まりとなってしまう人と、そうならない人の差は、どこから生まれるのだろう。ほとんどの研究者は、免疫の強さの違いだ、と言うかもしれない。では、ここ何十年かのガン患者の急増は、我々の免疫が急速に衰えた、ということなのだろうか。

それを言うのだったら、戦時中の食料不足で生きるのがやっとだったときの方が、よっぽど免疫力が弱まっていないだろうか。ストレスによって体内のフリーラジカルは急増すると言われているから、やはり戦時中の極度のストレス状態のときは、ものすごい量のフリーラジカルに襲われていることになる。では、たとえば第2次世界大戦中の日本、特に後半、劣勢になってアメリカの爆撃機で急襲されたときにガン患者は急増したのだろうか。それにも増して、戦争の現場に駆り出されて、死の恐怖と直面している人たちのストレスは計り知れないだろう。戦場ではガン患者が急増するのだろうか。

私の親、叔父、叔母は戦時中に育っている。この世代は非常に長生きだ。世界トップの長寿国、日本は明らかにこの世代が引っ張っている。この世代の方が戦後生まれより、よほど元気で健康に見える。

逆に、この数十年のガンなど成人病の急増は、飽食化した食習慣が原因だという人も多い。特に先進国では、砂糖の消費量の急増、食事に占める脂肪、タンパク質の割合の急増、何よりも一人当たりの食べる量の急増によって、ものすごい勢いで人々が肥満化している。確かに、この食事の変化は、他の何よりも成人病の急増と相関が高いだろう。だから、飽食化が成人病と全く関係がないとは言い切れない。

しかし、ガン患者は飽食化した人にも多いが、飽食化してない人たちの中にも多くいる。飽食化だけでは説明がつかない。いろいろな要素が絡んでいる、と言ってしまえばそれまでだが、要するに、これといった決定的なガンの原因が見つかっていないわけだ。

ガンが特殊なのは、ガン細胞はガン化する前までは、通常の細胞だった、ということだ。体の一部である細胞がガン化すると、その体を滅ぼす側に回る。体全体のために生きていた細胞が、ある日突然、体の重要な臓器を圧迫して、ついには機能不全にまで追いやる“悪魔”に変身する。 細胞にとって、その細胞の集合体である体は自分自身でもあるわけだから、これはある意味、自殺行為だ。

これで私に思い当たるのは、私の知り合いでガンで亡くなった方の何人かは、実は自殺したかったのでは、と思えることだ。60代前半の女性は、すごくかわいがっていた末の息子さんが亡くなったすぐ後に、ガンが発症した。警察の調べでは、息子さんの死は事故だった、ということになったが、殺されたのでは、と彼女は疑っていた。息子さんのことはとてもあきらめきれない、とずっと悔やんでいた。

非常に才能のある女性で、仕事が大好きで活躍していたのに、ご主人のことで悩み、40歳の若さで大腸がんを患った。特に、彼女の母とご主人が犬猿の仲で、間に立って相当苦しんだようだ。

日本のバブル期に、自分の会社を大成功させて、仲が良かった2人の社長は、同時にスキャンダルに巻き込まれて2人ともすぐに失脚し、その後すぐに、2人揃ってガンを発症した。

他にも何人か似たような例がある。そして、半分以上はわりとすぐに亡くなった。この中の何人かに、私は生きるように必死で励ましたこともあったが、結局はこちらの願いはかなわず、息を引き取った。

ところが、こうしてガンにかかった人のうち、ある医師から、あなたには死にたい願望があると指摘され、その願望が心の奥底にあったことを発見し、そのすぐ後にガンの腫瘍が縮み始めた、という人がいた。この人はその後すっかり腫瘍が消え、それから10年たって今は60歳だけれども、ガンの兆候は全く見当たらず、非常に元気で、健康そのものだ。そのため、私は亡くなった方に対して、ガンに打ち勝つように励ますことよりも、死にたい気持ちをくんであげて、聞いてあげることができたら、何か違いがつくれたのでは、と思っている。

今の日本には、死にたいと思っている人がすごく多くいる、と私には見える(<注>先進国の中で日本は自殺者が多い)。しかし、この私の限られた経験、私見だけで、ガンは自殺行為だ、と言えるわけではもちろんない。ただ、死にたいと思ったとき、ガンが増殖し、あるいは怖い菌が体内で活躍してくれれば、それはある意味、助け舟だ。この場合、菌と同じ様に、ガン細胞は肉体の活動を止める強力な助っ人ということになる。結核菌が薬で退治されるようになった今、これといった特効薬の見つかっていないガン細胞は、一番頼りになる助っ人と言えるかもしれない。

誰にもいわゆる寿命があり、いつかは”この世”を去らなければならない。このときは当然、体は死に向かうだろう。こうしてやってくる寿命とは別に、自分が死にたい、と思ったときも、体はそれに応じて死に向かうのだろうか。ガンの特徴を見ていると、死にたいと願ったときは、それはかなえられる、と思えてくる。

 

 

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