2014.03.17

第13章 ガンは治る

リネット•ブレイクの決心は、手術、抗ガン剤、放射線の3点セットしか持ち合わせがない、ガンの通常療法との決別だ。この決心に医師は慌てた。彼女の家にまで訪ねてきて、ここで治療を止めるのは自殺行為だ、と説得にかかった。しかし、彼女の決心はゆるがない。あれだけ過酷な試練に耐えたのに、ガンには全く効き目がなかった。これと同じことを、さらにパワーアップしてやろうと言うのだから、これを受け入れる人は果たしているのだろうか、というのが率直な疑問だろう。

ところが実際は、これと似たようなケースでも医師任せにする人が非常に多い。さらに強力な抗ガン剤と放射線を受け入れるわけだ。これで状態が改善すればいいのだが、その可能性は統計的には非常に低い。本人が断らないかぎり、これを止めるのは、多くの場合、医師がこれ以上は治療しても意味がないとあきらめるか、本人が死んでしまうかのどちらかだ。

リネット•ブレイクはこのとき看護師だった。一緒にガン(直腸ガン)と闘っていた友人のブラッド•ファーガソンのアドバイスをもとに、自力で通常療法に代わる治療法を調べた。もともと薬品や医療のことを勉強しているから、この手の調査はお手の物だ。すると、ビタミンB17、ビタミンC、すい臓酵素など、抗ガン剤に代わる“薬”、しかも副作用がほとんどない自然の”薬”が数多くあることが分かった。しかも、これらの“薬”によって、ガン治療に大きな実績を上げている医師が少なからずいることも分かってきた。
しかし、たとえばビタミンB17は、米国のほとんどの地域では医師が治療に使うことを禁止されている。患者が自分で仕入れて、州によっては医師に相談しながら使うことは許されるという、変なことになっている。また、B17とビタミンCは注射か点滴で、直接血管に注入する。リネット•ブレイクは看護師だから、注射はそれこそお手の物だ。そこで彼女は調査し、勉強した結果を、医師に頼らず、必要なものは買って、自分で試すことにした。

まず最初の1ヶ月は、ゲルソン療法による解毒に集中した。にんじん、野菜、小麦若葉の青汁などのジュースを、1日にコップで13杯(1杯あたり約230グラム)も飲む。これに、1日あたり約4リットルもの水が加わる。さすがに最初は1日に3杯のジュースを飲むのがやっとだったようだが、何とか1週間ほどで1日13杯を達成した。食事は自分で焼いたライ麦のパン、野菜がたっぷり入ったヒポクラテススープなど、動物系を一切排除したビーガン食(<補足13-1>)だ。

そして1日3回のコーヒー浣腸。結核とガンの患者を次々と治したマックス•ゲルソン医学博士(<補足13-2>)が考案した食事療法で、食品添加物、農薬、重金属、さらに抗ガン剤などの毒素を体から排除すると同時に、ミネラルバランスを回復させるうえに、細胞に酸素を十分に供給し、細胞の機能、特に免疫の機能を復活させようというのがこの療法のねらいだ。

1ヶ月がたち、体から毒素が抜け切ったと思われたころ、いよいよ自然な”薬”の投入だ。まず、タンパク質消化酵素をサプリメントで摂る。ガン細胞は自己防衛のために自分の周りをタンパク質の膜で覆っている。この膜に邪魔されて、免疫が、ガン細胞がいることをなかなか認識できない。この膜をタンパク質消化酵素で溶かしてしまおう、というわけだ。

タンパク質消化酵素は主にすい臓で生産される。糖尿病、あるいは糖尿気味など、すい臓が疲弊しているために酵素が十分に生産されないか、それとも動物性タンパク質の食べ過ぎで、その消化に酵素が使われてしまっているか。ともかくガンの防御膜を溶かす酵素が十分にないために、ガンが免疫の攻撃を逃れて、ぬくぬくと成長を続ける、という考えが、このサプリメント投入の背景だ。ガンの治療に通常療法を全く使わないか、必要最小限に使用をとどめている医師には、非常に人気の高いサプリメントだ。

そして、ビタミンB17を血管の中に直接注射する。ビタミンB17は今のところ公式にはビタミンには分類されていない。ビタミンとは体の生命活動に必要な栄養素、という意味で、このビタミンに公式に分類されていないのは、分類してほしくない人たちがいるからだ。B17の公式名称はアミグダリンで、これがベータ•グルコシターゼという酵素によって、ブドウ糖とシアン化水素、ベンズアルデヒドに分解される。シアン化水素はかなり強い毒だ(<補足13-3>)。ベンズアルデヒドはガン細胞にとって、シアン化水素よりさらに毒性が高いと言われている。

アミグダリンが分解されると、この2種類の毒が解き放たれる。この2種類の毒は、それぞれ1種類のときより、この2種類が同時に存在した方が、はるかに毒性は高くなる、ということだ。ところが、この2種類とも、アミグダリンが分解されないで、アミグダリンの構成要素としてくっついたままだと全く毒性を発揮しない(<補足13-4>)。

つまり、アミグダリンは分解されて初めて毒性を発揮する。これを分解するのはベータ•グルコシダーゼという酵素で、ガン細胞はこの酵素をたくさん持っているが、通常の細胞は全くないか、持っていてもわずかしかない。

これ以上分かりやすい論理はなかなかないだろう。ビタミンB17と呼ばれるアミグダリンは、通常の細胞にはほとんど危害を加えず、ガン細胞に的を絞って毒性を発揮する、天然の抗ガン剤だ、ということだ。これに対し、医学•薬学界が膨大な資金を使って開発している人工の抗ガン剤の最大の問題は、ガン細胞を殺すのと同時に、無差別に通常の細胞も大量に殺していることだ。これによって、ときには、”死んだ方がまし”なくらいの強烈な副作用を引き起こす。

この天然の抗ガン剤、アミグダリンは、様々な食品に天然に含まれる。一番多く含むのは、あんずの種で、この種を割ると非常に苦い粉が出てくるが、この主成分がアミグダリンだ。それ以外にも、りんごやさくらんぼうなど様々なくだものの種、アーモンドの実などナッツ類、ブラックベリーなど様々なベリー類、ムング豆やレンズ豆などの様々な豆類、アルファルファやホウレンソウなどの葉、脱穀していない穀類といった、何百種類の自然な食品に含まれている。こうしたものをふんだんに食べていれば、相当な量のビタミンB17が摂取できる、ということだ。特にくだものの種は割って中身を食べるべきで、捨てるのは非常にもったいない、と言えるかもしれない。

さて、リネット•ブレイクはこのビタミンB17と一緒に、ビタミンCも注射した。ビタミンCも様々な自然の食品に天然に含まれる必須栄養素で、ガンの増殖を抑える、インターフェロンの生産を誘発するなど、様々な研究結果が発表されている。さらにリネット•ブレイクは酵素、B17、Cのほかに、栄養素療法でガンを治療している医師がよく使うサプリメントも摂取した。コーヒー浣腸などによる解毒を続けながら、食事は相変わらず、ゲルソン式になるべく従った。もちろん、大好きだった甘いもの、コーラなどのソーダ類、添加物入りの食品は一切口にしなかった。そして、自力で治療を始めてから3ヶ月後、子宮頸ガン末期と診断されてからちょうど1年後の2008年10月、同じ検査医に調べてもらうと、一番驚いたのはその検査医だ。その診断書にはこう書かれている。

「2007年には、この32歳の女性(リネット•ブレイク)は子宮頸ガンで、膀胱と腎臓に転移していた。ガンのステージを調べる検査の結果、大腿(だいたい)動脈のリンパ腺にも転移していたことが判明した。」

「2008年、患者 (リネット•ブレイク) はさらにガンの再発が広がり、抗ガン剤と放射線の治療を続けないと、生きれるのはあと6ヶ月から1年だと通告された。CTスキャンによると、ガンは腎臓に再発が広がり、ステージ4に達していることが判明した。2008年の5月には、患者は抗ガン剤の治療を中止したが、それは危険であることを患者に忠告した。患者はいわゆる”自然な”、正統でないB17による治療を始めることを選択した。」

「ブレイク婦人のケースは、ガンが後退しているように見える。我々は彼女に、6ヶ月以内に血液検査とスキャンのフォローアップをすることを忠告した。自然退縮としか説明のしようがない。」

自前の療法を始めてから3ヶ月で、ガンは退縮し始めた。

 

<補足13-1>欧米のベジタリアンは魚、チキンはどんどん食べる、牛乳、チーズなどの乳製品は常食し、菜食主義とはほど遠い。このため、動物系を一切排除した完全菜食主義は、ベジタリアンと区別され、ビーガン(Vegan)と呼ばれる。

<補足13-2>ゲルソン療法について詳しくは、Max Gerson著「A Cancer Therapy」(Gerson Institute出版)参照。この日本語版は、今村光一訳「ガン食事療法全書」(徳間書店出版)。

<補足13-3>シアン化水素のシアン基は青酸とも呼ばれ、これがカリウムと結合した青酸カリはよく知られた猛毒だ。

<補足13-4> シアン化水素はビタミンB12の構成要素でもある。B12は体にとって非常に重要な働きをし、必須栄養素の一つにあげられるビタミンだ。単体だと毒性の強いシアン化水素も、構成要素の一部となっていれば、分解されて単体にならないかぎり、全く毒にはならない。

 

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