2014.05.14 

第16章ー2 規制大国と自由の国 その2

ガン治療の”自由の国”、メキシコのティワナでどの医師もほぼ共通して使うのは、タンパク質消化酵素だ。ガン細胞はタンパク質の防御膜で自分を被っているため、体の免疫が見つけにくい。このガン細胞の隠れ蓑を酵素で溶かしてしまえば、免疫システムや“自然の薬”が、ガンを攻撃しやすくなる、というわけだ(<補足16-15>)。また、ティワナの病院やクリニックで出される食事は、オーガニックの野菜とくだものが中心だ。ガン細胞が、そして微生物説によればガン微生物が、一番苦手な食べ物は野菜とくだものだ、という見解もほぼ一致している。

そして、どの医師も、解毒に大きな重心を置いている。ゲルソン療法もケリー療法も治療の中心の一つは解毒だ。ケリー博士に治療を受けた人たちに実際に会いに行くなど追跡調査までしてケリー療法を徹底的に研究したニコラス•ゴンザレス医学博士は、「通常療法では抗ガン剤をあれだけ投与するんだから、ガン細胞は相当死滅しているだろう。ガンにかかった人は、それでなくとも人一倍毒素を体に貯めていたはずだ。そこに死滅したガン細胞から毒素が排出される。ここにさらに抗ガン剤の毒素が加わったら、肝臓や腎臓はとても耐えきれないだろう。ガンで亡くなったというより、この毒によって亡くなる人も多いんじゃないか」と指摘する(<補足16-16>)。

しかし、ティワナの医師たちは、この抗ガン剤と放射線でさえ決して否定しない。アーネスト•コントレラス医学博士の元で医師の経歴をスタートし、ヘラルド•マナー博士(<補足16-17>)と共同でガンの治療をしたヘルベルト•アルバレズ医学博士(Gilberto Alvarez)は、「ガンの人の7割から8割には、化学物質を使わない、自然な方法で治療している。しかし、ガンの進行が急激で、自然な方法だけで間に合わない場合は、抗ガン剤や放射線を利用する。自然な方法は効果が出るまでに時間が必要だが、抗ガン剤と放射線は即効性がある」と言う。

「抗ガン剤を使う場合は、もちろん、副作用をなるべく抑えるようにする。特にオゾン療法は、様々なガンの治療、そして抗ガン剤に体が耐えるために、いい準備となる」とフランシスコ•コントレラス博士は強調する。また、全身温熱療法を併用すると、「抗ガン剤や放射線の投与量をかなり減らしても、同じ効果が出る」(アルバレズ博士)そうだ。抗ガン剤の場合は半分に、場合によっては10%の量で、放射線は20%と極端に量を減らせる、という。オゾン療法や温熱療法によってガン細胞を弱らせ、抗ガン剤に対する抵抗(耐性)をなくしてしまおう、というわけだ。量を減らした分、副作用も相当軽くなる。

これらとは別に、抗ガン剤の投与量を極端に減らしても効果が出る方法に、IPTと呼ばれる療法もある。かなりの低血糖状態をしばらく続け、糖分に飢えるガン細胞に、糖と一緒に抗ガン剤を与えると、それにガン細胞が猛然と食らいつく、という手法だ(<補足16-18>)。さらに、ティワナの医師たちは抗ガン剤を使用する場合、何種類もある抗ガン剤の中でどれが一番ガン細胞に効き目があるかを試験してから投与する(<補足16-19>)。

では、ティワナでは実際に、ガン治療にどれだけの実績を上げているのだろうか。コントレラス博士のオアシス•オブ•ホープ病院では、治療が困難だとされる末期ガンに対して、生存率の統計をまとめている(<補足16-20>)。オアシス病院と比較しているのは、 アメリカ国立衛生研究所のアメリカ国内での調査(SEER、<補足16-21>)だ。SEERの対象は、抗ガン剤、放射線、手術が中心の通常療法だ。

まず、女性ではかかる人が多い乳ガンは、比較的生存率が高いと言われている。末期の乳ガンを患った人がどれだけ生き延びたかという統計を比較すると、1年間ではSEERが65%、オアシスが93%、2年間でSEER44%、オアシス73%、3年間でSEER32%、オアシス60%、4年間でSEER25%、オアシス51%、5年間ではSEER20%、オアシスが45%だ。

オアシス病院を訪ねて来る末期がんの人は、通常療法を受けたのに末期になり、医師に匙を投げられたか、自分が通常療法をあきらめた、という人が多いという。

では、通常療法の病院には行かず、オアシスが初めてで、オアシスでしか治療を受けていない人に限って、末期乳ガンの生存率を、国立衛生所の出した全米平均と比較してみよう。生存率は1年間でSEER65%、オアシス100%、2年間でSEER44%、オアシス90%、3年間でSEER32%、オアシス83%、4年間でSEER25%、オアシス78%、5年間ではSEER20%で、オアシスが75%だ。

この統計を見るかぎり、差は決定的だ。しかも、通常療法を一切受けずにオアシス病院に行った方が、生存率はさらに高いことになる。

次に、生存率が非常に低いと言われている肺ガンの末期を比べてみよう。1年間の生存率はSEERが20%、オアシスが82%、2年間はSEER6%、オアシス50%、3年間はSEER3%、オアシス31%、4年間はSEER2%、オアシス23%、5年間でSEER1.6%、オアシス9%だ(<補足16-22>)。

ティワナの病院やクリニックは施設の拡充やスタッフの増員をしているのに、ガンなどの治療に訪れる人たちで、ほとんどどこも満員御礼の大盛況だ。アメリカから来る人が中心だから、通常療法の実績を下回ったら、それこそ誰も来てくれないだろう。しかも、アメリカのテレビなどで宣伝しているわけではなく、ほとんどが口コミだ。もっとも、宣伝しようとしたとしても、アメリカの主要メディアが受け付けないだろう。これはまるで、知る人だけが知る、秘密クラブのようだ。

(第16章終わり)


<補足16-15>
通常細胞の周りはマイナスの電荷を帯びているのに対し、ガン細胞の周りはプラスの電荷を帯びている。免疫システムがガン細胞を体にとっての異物と見なす決め手は、この電荷の違いだ。体に侵入してくるばい菌などもほとんどはプラスの電荷を帯びている。私たちの免疫は、このプラスの電荷に反応して、ガン細胞や外から入ってくるばい菌などを攻撃する。ガン細胞が自分の周りを被うタンパク質の膜は、マイナスの電荷を帯びている。このために、免疫がなかなか異物と見なすことができない。

<補足16-16>
ゲルソン療法の解毒の主力はコーヒー浣腸だ。ケリー療法は、体の解毒機能が肝臓や腎臓など内蔵ごとにステップや順番があるのに応じて、そのステップごとに順番に解毒を後押しするていねいな方法だ。また、水銀など重金属の解毒には、マイナス電荷を帯びたジオライト(Zeolite)などのサプリメントを利用し、重くて体が排出しにくい、プラス電荷の重金属を引き着けて対外に運び出す、キーレーション(Chealation、カニなどが長い手足を利用して獲物を捕まえる、という意味)と呼ばれる方法もある。

<補足16-17>
Harold W Manner生物学博士。タンパク質消化酵素やレートリル(ビタミンB17)を用いた栄養素療法のパイオニアの一人。もちろん、医師(医学博士)の肩書きを持っていないので、直接の治療には医師を雇っていた。しかし、マナー博士自身もガンの状態を見たり、医師に指示を出すなど、治療に全くからまない、というわけにはいかない。そうなるとアメリカでは、無免許医療、ということになるようだ。アメリカ人のマナー博士もケリー博士のように、ティワナにクリニック(Manner Clinic)を設立した。

<補足16-18>I
nsulin Potentiation Therapy。前の日の夜から食事を一切しないで、インシュリンを血管に注射すると、血液中に残っている糖分が一気に細胞に配られるため、血糖値が落ちて、かなりの低血糖になる。この低血糖状態をしばらく続けると、ブドウ糖しか燃料にできず、しかも大量に必要なガン細胞はふらふらとなる。一部のガン細胞はこれだけで死滅してしまうそうだ。これは通常細胞にとっても試練だが、ガン細胞にとってはそれこそ死活問題だ。ガン細胞をしばらくふらふらにした後、点滴でインシュリン、ブドウ糖と一緒に抗ガン剤を与える。ブドウ糖に飢えているガン細胞はたちまち、ブドウ糖と抗ガン剤の溶液に食らいつく。ブドウ糖が大量に必要なガン細胞の食らいつく勢いは、通常細胞の比ではない。こうして、抗ガン剤が効率よくガン細胞に吸い込まれ、通常細胞にはあまり届かない。それによって少ない抗ガン剤で効果が出るうえに、通常細胞へ与えるダメージは小さい、という療法だ。抗ガン剤の量は通常の10分の1ほどで十分なようだ。

<補足16-19>
抗ガン剤がガン治療に目立った働きをしない場合の理由の一つは、ガン細胞が抗ガン剤に対する耐性を身につけることだ。「ガンはなかなかダイ•ハード(Die Hard、しぶとくて簡単には死なない、という意味)だ」とフランシスコ•コントレラス博士は述べているが、抗ガン剤がガン細胞に効かなくなることがしばしば起こる。どの抗ガン剤が効かなくなるか、つまりどの抗ガン剤に対して耐性ができるかは、人によって大きな差が出るようだ。さすがに大金をつぎ込み続けただけあって、これまで何種類もの抗ガン剤が開発されている。ドイツ、ギリシャ、韓国には、ガンを患っている人の血液を送ると、どの抗ガン剤がどれだけの威力を発揮するかを調べてくれる試験所がある(この検査はよく、Greek Testと呼ばれる)。ティワナの医師たちはその検査結果を参考にして、なるべく効果のある抗ガン剤を使おうとしている。抗ガン剤の使用量を極力少なくするばかりでなく、無駄な抗ガン剤は一切使わない、という姿勢は、抗ガン剤の毒素がガンを患っている人に大きなダメージをもたらすことがよく分かっているからだ。これに対し、抗ガン剤を大量投与する通常療法の主流の病院がどれだけこの試験所を利用しているだろうか。これら試験所の検査がどれだけ正確かは分からないが、もしこの検査さえもしていなかったら、値段の高い薬品をめくらめっぽう使い、それこそお金の垂れ流しだ、と言われても仕方がないだろう。

<補足16-20>
この統計はフランシスコ•コントレラス博士が様々な講演で紹介している。オアシス病院は設立以来50年、すでに10万人以上のガンを患っている人を治療した実績があるため、こうした統計が取れる、と言う。 乳ガンと肺ガン以外にも、大腸ガン、男性に多い前立腺ガンの統計もある。 詳しくはオアシス•オブ•ホープ病院のウェブサイト、www.oasisofhope.com参照。

<補足16-21>
Surveillance Epidemiology and End Results。アメリカ国立衛生研究所(National Institute of Health)が行っているガンの発生と生存率の調査。全米の総人口の約28%をカバーしている、という。

<補足16-22>
フランシスコ•コントレラス博士は、「肺ガン末期の5年間の生存率が1.6%と9%の違いにどれだけの意味があるのか、と言う人がいるが、そう言うのは、肺ガンの治療がどれだけ大変か分かっていないからだ。1.6%を9%までに上げるのは、並大抵ではない。これは相当な価値があるはずだ」と主張する。ともかく、ガンの生存率の統計を公表している病院はほとんどない。もっとも、高い数字が出せればその病院のいい宣伝となるが、数字が低ければ逆効果だ。通常療法の病院はあまり統計を出したくないかもしれない。

 

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