2014.07.01   

第17章―3 ガンの特徴と対策 その3

前回までにお伝えしたことは、

(1)
ガンは糖分なしでは生きられないので、糖分を摂れば摂るほどガンを活気づかせる。

(2)
ガンはタンパク質の隠れ蓑(みの)を被っていて、免疫の攻撃から身をかわしているから、タンパク質を分解する消化酵素を無駄遣いしないで(つまりタンパク質を食べ過ぎない)、あるいは消化酵素をサプリメントで補って、隠れ蓑を引き剥がすことができれば、ガンは丸裸になって、免疫の標的となる。

(3)
ガン細胞は熱の代謝が悪いため、温熱療法(またはコーリーの毒素療法)で体温を摂氏43度近くまで上げられれば、ガン細胞は死滅するか、あるいは衰弱して抵抗力が弱まるので、他の療法が効きやすくなる。

(4)
ガン細胞は酸素呼吸によるエネルギー生産を全くか、ほとんどしていないので、酸素がほとんど必要ないどころか、酸素に混じっている強力なフリーラジカル(活性酸素)の酸化から身を守りきれない。そのため、酸素をガン細胞にたくさん送り込めれば、ガン細胞はかなり弱体化し、一部は死滅することが見込める。

ガン細胞は普通の細胞が何らかの原因で変異した細胞ですが、普通の細胞にはないハンディキャップをいろいろと背負っているようです。そして、そのハンディキャップを利用した様々なガンの撃退法が開発されています。ガンの弱みをつくことで、なるべくガン細胞だけに危害が及び、普通の細胞にはあまり害のないやり方ですから、抗ガン剤、放射線のような大きい苦痛を伴う激しい副作用があまりありません。こうした手法をうまく組み合わせれば、抗ガン剤、放射線、手術といった乱暴な方法を使わずにすむかもしれません。しかも、抗ガン剤などよりも、ガンを治す確率も高そうです。実際にメキシコのティワナを中心に、こうした試みがされています。

(5) ミネラルバランスの崩れ

ガンにかかっている人と、そうでない人の違いに着目して、その違いを本格的に治療に応用し、ガン治療で大きな成功を収めた最初の人は、マックス•ゲルソン(Max Gerson)医学博士です。ゲルソン療法と名付けられたガン治療を博士が始めるのは、今から90年近く前の1928年ころのことです。博士が目をつけた違いのひとつは、ミネラルのナトリウムとカリウムのバランスです。ガンの人の体内を調べると、ナトリウムが非常に多いのに対して、カリウムが少ない、ということです。

このナトリウムとカリウムのアンバランスが、ガンとどう関係しているのかは、はっきりとは分かっていませんが、ひとつだけ確実に言えることがあります。それは、体の組織の中で、細胞の内側には主にカリウムが、外側には主にナトリウムが配置されていなければならない、ということです。細胞内にとどまるナトリウムはわずかな量でないといけません。細胞内の水分量を調節したり、細胞内でタンパク質を合成する場合に、この配置がとても重要だ、と言われています。

細胞膜のところには、ナトリウムを外に出し、カリウムを中に入れるポンプ(いわゆるナトリウム•カリウムポンプ)が1つの細胞に200から300と、相当な数が配置されています。細胞は、全ネルギーのうち4分の1ほどを、このカリウム•ナトリウムポンプを動かすのに使っているようです。4分の1もの大量のエネルギーをこれにつぎ込むということは、ナトリウムを出して、外に置いておくことがどれだけ重要かを物語っています。

ゲルソン療法の大きな柱のひとつは、大量のにんじんジュースと野菜ジュースを毎日飲むことです。同時に、食事はかなり徹底した減塩食です。カリウムを多く含む食品は、大ざっぱに言うとにんじんなどの野菜とくだものです。減塩食でナトリウムの摂取を減らし、にんじんなどのジュースでカリウムを大量に摂取して、カリウムとナトリウムのアンバランスを是正しようというわけです。

ゲルソン療法で使うにんじん用のジューサーは、撹拌(かくはん)式の普通のジューサーと違って、にんじんをすりつぶしてジュースを絞り出す圧縮式です。にんじんの中にはカリウムが陽イオンになっています。ゲルソン博士は、陽イオンとなって電解質の状態のカリウムを摂取することが重要だと主張しました。撹拌式のジューサーは、イオンをかく乱して、カリウムの陽イオンを解いてしまうんですね。

ジュースにしないで食べればいいのでしょうが、そんなにたくさんは食べられません。サプリメントは特に錠剤の場合、イオン化されていることはあまり期待できません。そのため、カリウムの陽イオンを大量に摂取するためには、圧縮式で作ったにんじんジュースを飲むのが一番いいようです。

また、野菜やくだものは土からミネラルを吸い上げるとき、根の酸でミネラルを非常に細かく砕きます。ミネラルは細かい方が、私たちの体が消化しやすい、つまり吸収しやすいわけです。ですから、ミネラルはサプリメントの錠剤より、野菜やくだものなどの食べ物から、あるいは食べ物を絞ったジュースから摂取した方がいい、ということです。

ナトリウムとカリウムの関係と同じようによく知られているのは、カルシウムとマグネシウムの関係です。こちらも、カルシウムは細胞の外、マグネシウムは中と決まっていて、細胞が順調に機能するためには、中に常駐できるカルシウムの量は限られています。マグネシウムは穀類を脱穀することによって、ほとんどが失われますから、白米や小麦粉のパスタ、うどんばかりを食べる現代の一般の食習慣では、不足している人が相当多くいそうです。

さらに、私たちがすっかり見落としているのは、カルシウムとリンの関係です。カルシウムもリンも両方とも骨を作るのに必要なミネラルであり、極めて重要な栄養素ですが、問題は比率です。食事で摂取するカルシウムとリンの比率は1対1(育ち盛りの子供は2対1)がいいと言われています。では、私たちがよく食べる食品で、このミネラルバランスがどうなっているか、見てみましょう。

肉はだいたい、カルシウム1に対して、リンが8です。肉加工品は例えば、ポークハムが1対50、ウインナーが1対15です。カップラーメンは平均でだいたい1対10です。ソーダ類やほとんどの市販のジュースには、味を調節するためにリン酸塩が加えられていますから、比率は分かりませんが、リンがかなり多いことは間違いありません。これらとは反対で、カルシウムが多くてリンの少ない食品は野菜類です。

体は、余分なミネラルをできるだけ排出します。リンとカルシウムはとても結合しやすく、リン酸カルシウムとなりますので、余分なリンはだいたいがリン酸カルシウムの形で排出されます。つまり、余分に摂取したリンは、体から出て行くときにカルシウムを一緒に持っていってしまうわけです。

私たち人間の血液はpHが7.35から7.45の弱アルカリ性に保たれていなければなりません。極めて狭い幅ですが、この範囲をちょっとでもはみ出すと、おそらく起こることは肉体の死です。そして、血液をアルカリに保つ大主役はカルシウムです。pHは7.0が中性で、それより低くなると酸性ですが、血液のpHを7.35に近づける、つまり中性、酸性の方向に持っていく主役は糖分です。もうひとつ、血液を酸性の方向に傾ける知られざる主役がリンです。余ったリンが、血液中のアルカリ維持の主役であるカルシウムを抜き取ってしまうわけですから、リンの過剰摂取も、糖分の過剰摂取と同じように、血液が酸性方向に傾く元凶です。

血液のpHが7.35を切ってしまったら死活問題ですから、7.35に近づくと、カルシウムを血液に補給する指示が出ます。幸いなことに、私たちはカルシウムの大貯蔵庫を持っています。それは骨と歯です。指示が出ると破骨細胞が活性化され、骨または歯からカルシウムを削り取って、血液に補給します。ですから、血液を酸性の方向に傾けてばかりいる人は、どうしても骨や歯が弱くなります。これが骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の原因のひとつと見られています。

血液を酸性の方向に傾けるのが、ガンを含めた様々な病気の原因になる、と多くの栄養学者が考えています。また、ミネラルバランスの崩れが免疫を弱体化し、やはりガンを含めた様々な病気にかかりやすくなる、と言う栄養学者も多くいます。

このミネラルなど栄養素のバランスを別な角度から見ると、とても面白いことが分かります。陰陽学によると、野菜とくだものは陰で、塩は陽です。陰陽のバランスから言うと、野菜と塩、あるいはくだものと塩は相性がいいということになります。野菜とくだものにはカリウムが多く含まれ、塩の主成分はナトリウムですから、ミネラルバランスから言っても、野菜とくだものの調味料には塩がいい、ということになります。実際、カリウムをとても多く含むすいかやジャガイモは、塩を軽くふると甘みが出て、おいしくなりますよね。

ちなみに、肉は陽、砂糖は陰ですから、肉に相性がいい調味料は砂糖だということになります。砂糖はともかく、野菜も陰ですから、陽の肉をたくさん食べたら、陰の野菜もたくさん食べた方がいい、ということです。肉と肉加工品にはリンの比率が非常に高く、野菜にはカルシウムの比率が高いですから、このミネラルバランスと陰陽のバランスも一致しています。

私は、味もバランスで成り立っていると思っています。本当においしい味は、甘み、しょっぱみ、辛み、苦みなどの微妙なバランスで成り立っていると思います。本当においしい味を出しているものは、ミネラルなどの栄養素のバランス、陰陽のバランスもいいように思えます。ですから、例えば甘いものばかりをほしがり、甘いものを過剰に食べるのは、本当のおいしさを味わっているのではなく、アルコールやヘロインの中毒と同じで、甘いものに対する中毒症状であるように、私には見えます。
(続く)

 

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