2014.10.06   

第17章―9 ガンの特徴と対策 その5

古来から伝わる伝統的な解毒法は、断食(Fasting)です。英語の朝食はBreakfastで、これは断食(Fast)を打ち切る(Break)という意味だ、と聞いたことがあります。夕食の後、寝てる間は断食しているのですから、英語では朝食は断食明けの食事というわけです。断食明けの食事である朝食は、胃腸に負担が少ないもの、例えばくだものが理想のようです。

いろいろなところで断食道場をやっているようですが、一日何杯かのくだものジュースと水だけで10日間から2週間くらい、というのが一般的です。最初は非常にお腹が空いて、空腹との戦いですが、だんだん慣れて来て、宿便が出るようになると、体が軽くなり、気分が爽快になって、とても元気になります。体に蓄積された毒素がいかに体に負担となって、私たちの活力を奪っていたかを実感するのが、断食道場です。

私たちは、何を食べたらいいか、ということに関心がありますが、食べることだけではなくて、食べないことにも注意を払うべきかもしれません。さて、前回の続き、解毒の話題です。

(6) 死因はガンか、それとも毒か(後編)

ゲルソン療法によって自分のすい臓ガンが治ったウィリアム•ケリー(William Donald Kelly)博士はガンの研究に没頭し、独自のガン治療法を開発しました。ケリー療法と呼ばれるこの方式で、実に3万3千人ものガン患者を治療した、と言われています。

ケリー療法も解毒が大きな柱のひとつです。毎日のコーヒー浣腸を軸に、解毒に関係する臓器を順番に浄化します。使うのはりんごや柑橘系の絞り立てジュース、パセリのお茶、エプソムソルト、オリーブオイル、オクラ•ペプシンE3(Standard Process社が製造する、オクラに含まれるタンパク質消化酵素のサプリメント)、さまし水などで、まずは肝臓と胆嚢(たんのう)、次に小腸、結腸、腎臓を浄化します。腎臓の浄化は、利尿を促すやり方です。

これらと平行して、生のたまねぎ、生姜(しょうが)とにんにく、カイエンペッパー、黒こしょうといった辛いものを食べて鼻の通りをよくし、呼吸を促すことで肺を浄化します。そして、決め手は肌の浄化です。肌の表面の古い細胞を削ぎ落とす、つまり垢(あか)すりによって、肌からの毒物の排出を促します。

ケリー療法はこうした各臓器の解毒が細かい手順で決められ、実行するのはなかなか大変そうです。しかしケリー博士は、「ガンが直接の原因で亡くなる人はまずいない。ガン治療によって発生する毒が死因の人がほとんどだ」と主張し、解毒さえきちんとしていれば、ガン、あるいはガン治療によって死ぬことは食い止められる、と考えていたようです。

ゲルソン療法やケリー療法などの解毒器官の浄化とは別に、体内の重金属や放射線物質などの有害物質をつかみ取って体外に運び出す方式があり、この解毒方式はキレーション(Chelation)と呼ばれます。もともとはヒ素中毒、鉛中毒の解毒剤として開発されました。今でも使用されているのは、EDTA(エチレンジアミン4酢酸)、DMSA(ジメルカプトコハク酸)といった合成物質です。これらはキレート剤と呼ばれ、ヒ素、鉛、水銀、カドミウムなどの重金属のほか、セシウム、プロトニウムといった放射性物質(これらも重金属)を捕まえます。

キレーションというのは、単にくっつくというだけでなく、重金属を挟み込むような形でがっちり捕まえる、という意味です。体に有害なのは主に、重金属の陽イオンですが、キレートされた重金属は無害化されます(放射性の重金属は、重金属としては無害化されても、放射線を出すことは止められません)。そして、キレート剤は水に溶けますから、体から流れ出しやすくなるわけです。

こうした化合物ではなく、天然に存在するキレート剤もあります。天然の物質でキレート効果があるのは、フラボノイドの一種で、カテキン、OPC(Oligomeric Proanthocyanidin)、タンニンなどです。これらは強力な抗酸化作用があることでも知られていています。松の樹脂や針状の葉、ブドウの種、ブドウの皮、ピーナッツの赤い皮などに多く含まれ、サプリメントとして販売されています。

キレートとは少し違うのですが、金属イオンを捕まえて、体外に運び出す解毒効果があるのは、ゼオライト(Zeolite、沸石)です。ゼオライトは、火成岩、堆積岩、変成岩などに含まれる、格子状の結晶です。結晶の中に隙間(すきま)が多く、全体が負の電荷を帯びていますので、正電荷を持つ金属イオンをこの隙間に吸着する性質があります。吸着しやすい順に並べると、セシウム、ルビジウム、カリウム、アンモニア(の陽イオン)、バリウム、ストロンチウムとなります。セシウム、ルビジウム、ストロンチウムは、原子力発電所から漏れる放射性物質で、バリウムも水溶性の化合物は体に害を及ぼします。これら有害な金属類を優先的に吸着するゼオライトは、解毒用のサプリメントとして販売されています。

ゼオライトと同じように、負の電荷を帯びていて、陽イオンの金属を吸着するのは、粘土類です。これら粘土類も、セイクリド•クレイ、ベントナイト•クレイ、フレンチ•グリーン•クレイなどの名前で、飲むサプリメントとして、あるいはお風呂に溶かすデトックス湯の粉末として販売されています。

さて、ゲルソン療法やケリー療法が、ガンの治療に画期的な効果を発揮した理由は、解毒を受け持っている臓器の浄化だけではなかった、と私は考えています。いくら臓器を浄化しても、体の各組織から毒を抜かないと、つまり各細胞の解毒をしないと、本当の解毒はできません。特にゲルソン療法でその役割を果たしたのは、1日で合計コップ13杯(1杯当たり約230グラム)のにんじんジュースと野菜ジュースです。これらのジュースは、ミネラルなどの栄養素のバランスを整える効果も大きいですが、細胞レベルの解毒効果も見逃せない、と私は思います。

ゲルソン療法のにんじん、野菜ジュースと同じように、細胞レベルの解毒効果があるのは、青汁です。青汁というのは本当は、麦類、あるいは米類の青葉を絞ったジュース(汁)です。アメリカでは健康食品店などで注文すると、その場で青葉を絞ってくれます。注意が必要なのは、日本でよく”青汁”という名で売られているサプリメントのほとんどは、本当の青汁ではない、ということです。この市販の”青汁”は、青葉を絞ったものではなくて、青葉を粉々に砕いたものです。この製造過程で、長時間の高熱処理をしていますから、酵素のすべて、ビタミンと抗酸化物(フリーラジカルを中和する)の大部分は破壊されています。ですから、日本で市販されている”青汁”という名の商品のほとんどには、少なくとも細胞レベルの解毒効果は期待できません。

青葉の絞り汁を粉末化した、本物の青汁に近いサプリメントがあります。高熱処理をしていませんので、酵素や抗酸化物、ビタミンなどが損なわれないで残っています。これを大っぴらにして、日本の”青汁”メーカーに恨みを買いたくありませんので、本物の青汁に近いサプリメントを入手されたい方は、鈴木富司大番頭を通して問い合わせていただければ、こっそりと入手方法をお知らせします。

なお、青葉を砕いた市販の“青汁”が決して悪いわけではありません。食物繊維をとるためには、いいかもしれません。食物繊維は腸内細菌のえさとなりますし、腸の洗浄には欠かせません。ただ、細胞レベルの解毒効果はあまり期待できない、ということです。(続く)

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