2016.02.08    

第18章―10 隠蔽(いんぺい)されたガン治療法の数々 その9

昨年末から正月にかけて日本にいて、ガンなど原因がよく分からないとされている慢性病(かつては成人病などと呼ばれていた)の治療に新しい取り組みをされている人たちが日本にもたくさんいることを実感させられました。

私が日本で最もお世話になり、最も大きな影響を受けた人のひとり、小南奈美子さんが昨年5月に他界され、長い年月を過ごされたアメリカ北カリフォルニアで昨年11月に行われた告別セレモニーに参列させていただきました。そのナミさんがよくおっしゃっていたことは、「同じことをずっと続けていて、それまでとは別な結果を作ろうとする人のことをキチガイと呼びます」。

つまり、今までとは別なことをしないと、今までにはなかった結果はなかなか出ない、ということです。ところが、別の結果を出そうとしているのに、相変わらず今までと同じやり方で似たようなことを続けている”キチガイ”は相当多いようです。

もう100年近く、主流のガン治療法は、ガン腫瘍を切り取るか、薬品で殺すか、あるいは放射線で焼き殺す、という方式でした。基本的には、ガン腫瘍のサイズが小さくなる、できれば消えるのが治療の成功の目安で、そのためには腫瘍の構成要素であるガン細胞を一つでも多く殺すか、取り除くのが治療の第一目的であるようです。そして、どう見ても、ガン腫瘍以外のことにはほとんど関心が払われていません。

この考え方、方法で何が達成されたか。最近では、ガンの治療が進歩して、治療効果が上がっている、というのをよく聞くのですが、私は思わず耳を疑ってしまいます。検査や手術の精度が上がったのは確かでしょう。でも、検査・診断技術が進歩して、かなり初期の段階でガン腫瘍が発見されるようなったため、治療効果が上がったように見えているだけのことだと思えてなりません。初期でガン腫瘍が定着していないと、進行している時に比べ、治療ははるかに簡単です。

実際、ガンが進行した場合、いわゆる第3期、第4期での治療効果が上がったとは、とても思えません。米国ガン協会(National Cancer Institute)が実施しているSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results Program)というアメリカ全土の統計(全米総人口のの28%をカバーしていると言われている)によると、末期ガンと呼ばれる第4期の5年間の生存率は3%弱です。このほぼ100%が抗ガン剤治療を受けた人たちです。この統計を見る限り、アメリカ合衆国で、第4期(末期)にまでガンが進行した場合、抗ガン剤治療では、97%以上の人が5年以内に亡くなっている、ということです。

日本のガンの進行段階ごとの統計がうまく見つからないのでよく分かりませんが、アメリカと大差はない気がします。2.5人に1人が生きている間にガンと診断され、そのうちの2人に1人がそのガンで死亡する、とおおざっぱなことがアメリカでも日本でも言われています。

アメリカでは、ガンの専門医(Oncologist)は最も人気の高い職種のひとつで、庶民から見たら相当高い収入が期待できる花形です。ガンの研究と、抗ガン剤の開発に日本でもアメリカでも、毎年何兆円(何百億ドル)というばく大なお金が投入されています。それなのに、抗がん剤、放射線、手術のセットでは、少なくとも進行したガンには、これといった効果を発揮できていません。

さらに、2.5人に1人がガンにかかるということは、日本でもアメリカでも、ガンの予防に医学・薬学業界が本格的に取り組んでいるとはとても思えません。ガンなどの慢性病は生活習慣病と呼ばれるほど、食事や日頃の運動などのライフスタイルが大きく関係している、というのはもはや常識だと思いますが、例えば食事、栄養に関して真剣に勉強している医師、薬剤師、看護師がどれだけいるのか。

私は興味本位で本を読みまくり、セミナーに出席したりして(自分のお金と時間を使って)食事や栄養の勉強をしましたが、学校などで体系的に勉強したことはないですし、知識は偏っていて中途半端な素人です。でも、その私を言い負かせるくらい栄養に関して勉強している医師、薬剤師、看護師が何人いるか。丸元淑生(まるもとよしお)著「豊かさの栄養学」(全3巻)は栄養に関して相当な範囲を網羅し、日本語、英語の文献を通して私が読んだ中では最も優れている文献だと私は思いますが、それ以上の知識を持っている医師、薬剤師、看護師がいったい何人いるのか。丸元淑生さんだって、医師とか栄養士とかいう肩書きは持っていません。

私はたまたま、伊豆でガンを患っている女性を訪問したことがあり、確か第3期の乳ガンで、具合悪そうにソファで寝ていらっしゃいました。抗ガン剤治療を受けているそうで、ソファの横のテーブルには、10種類以上の薬品が置いてありました。ご主人に、どんな食事をしているか尋ねたら、あまり食欲がないそうで、医師から勧められた栄養ドリンクを飲んでいる、とおっしゃって冷蔵庫からそのドリンクを取り出し、見せてくださいました。

何が入っているかと、ラベルを見ると、含まれている物の最初の方に砂糖、シロップという表示がありました。含まれている物のリストは、量の多いものから順番に載せるのが原則ですから、このドリンクにはかなりの量の砂糖(ブドウ糖)が入っていると思われます。おそらく、甘くして飲みやすくしているのでしょうが、食事、栄養の摂り方が健康を大きく左右すると考え、栄養のことを真剣に勉強している人たちには、これがどう見えるか(この手のいわゆる栄養剤に入っているミネラルもかなりの問題があります。機会が来たら、詳しく述べさせていただきたいと思います)。

ブドウ糖は極めて重要な栄養素だと私は思っていますが、アメリカや日本の現代の食事は、必要十分な量をはるかに超える超過剰摂取だと思われます。いくら必要な栄養素でも、その過剰分を体が処理(廃棄など)しきれないで体に残ったらどうなるか。

細胞はこのブドウ糖を迎え入れる特別な入り口(受容体とかレセプターと呼ばれる)を細胞膜のところに持っていて、インシュリンというホルモンによってこの入り口が開けられるので、インシュリン・レセプターとよく呼ばれます。ガン細胞は、ガンでない通常の細胞に比べて、9倍から10倍の数のインシュリン・レセプターを持っている、と言われています。つまりそれだけ、ブドウ糖を欲しがっているということです。

ある意味、あり余ったブドウ糖をガン細胞が処理してくれているわけです。ガン細胞はこのブドウ糖を、発酵する方式でエネルギーに変換しています。ガンでない通常の細胞もこの発酵方式を使うこともありますが、普通は、ミトコンドリアでブドウ糖をエネルギーに変換しています。ガン細胞では、ミトコンドリアがあまりよく機能していないか、あるいは機能が停止しているようです。

発酵方式のエネルギー変換は、ミトコンドリアでの変換に比べてはるかに効率が悪いので、大量のブドウ糖が必要です。つまり、発酵方式に大きく依存するガン細胞は、通常細胞に比べてはるかに多くのブドウ糖を消費します。ですから、ブドウ糖を過剰に摂取するほど、ガン細胞に有利に働く、ガンを積極的に援助しているようなものです。

さらに、ミトコンドリアでのエネルギー変換には様々な栄養素、特にビタミンB群、マグネシウムなどが不可欠です。玄米、全粒粉の小麦など、脱穀していない穀類はこれらミトコンドリアでのエネルギー変換に必要な栄養素を豊富に含んでいます。これを脱穀して白米、小麦粉にすると、これらの栄養素の大部分を削り取ることになります。穀類はブドウ糖も多く含んでいますから、白米や小麦粉など脱穀した穀類を”空のカロリー”と呼ぶ人たちもいます。

発酵方式のエネルギー変換は、ビタミンB群、マグネシウムなどの栄養素をあまり必要としません。つまり、”空のカロリー”ばかりを摂取していると、ミトコンドリアに頼る通常細胞を窮地に追い込むと同時に、発酵方式に大きく依存するガン細胞がとても有利になります。

それ以外にも糖分は、血液を酸性方向に傾ける、一気に多く摂取したら、血糖値を乱高下させる、という健康上の問題を抱えています。

こうした知識があったら、ガンを患っている人に、砂糖(ブドウ糖)がたくさん入った甘いドリンクがたとえ栄養剤だとしても、それを薦めるのは、少なくとも罪の意識と戦わなくてはなりません(しぼりたてのフルーツジュースにも糖分が多く含まれますが、砂糖がたっぷり入った栄養ドリンクとは全く訳が違います。最近、流行し始めているジュースクレンジングがなぜいいかも、機会が来たら触れさせていただきたいと思います)。

そもそも、ガンなどが生活習慣病と呼ばれるのは、食事が乱れ、運動不足が重なって、健康度が落ちたから病気になった、という考えがあるからです。だったら、健康度を上げようともしないで生活習慣病の治療をいくらしても、うまくいくはずがない、とは思いませんか。難しい理屈や、専門的な分かりにくい理論を並べ立てなくとも、そんなこと直感的に分かりますよね。

ガン細胞を切り取ったり殺したりするより、健康度を上げることの方が、よっぽど大切だと私は考えています。それなのに、抗ガン剤、放射線はほとんどの場合、ガン以外の通常細胞にも危害を加えますから、ガンを患っている人の健康度を逆に落としてしまいます。特に、肝心な免疫力を落としてしまう、という大きな欠陥を抱えています。

その点、食事療法や栄養素療法、植物などから取れる天然の化合物を使った治療法は、ガン以外の細胞に危害を加える恐れはほとんどありません。体の健康度を落としてしまう心配がほとんどないわけです。反対に栄養素が補給され、植物の持つ解毒作用、抗酸化作用などが効いて、健康度を上げることだって期待できます。特に、こうした治療法が目指しているのは、免疫力の向上です。ガンを制圧するのに一番の武器となるのは薬品でも、天然の物質でもなく、体の免疫だ、と考えているからです。

100年近くも、ガン細胞を退治することばかりに捉われて、健康度を上げることにはほとんど目もくれず、それでガンを治せなかったかもしれないのに、その同じことを相変わらず続けているばかりか、ガン(進行性の)などの慢性病は何をやってもあまり効かない不治の病であるかのように仕立て上げてしまった人たちに頼っている限り、同じ結果が繰り返される、ということです。それに対し、今までとは違う取り組みをしようとする人たちが日本にも出てきたな、というのが今回の日本での主な感想です。
(続く)

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