2016.11.07     

第18章―19 隠蔽(いんぺい)されたガン治療法の数々 その18

ガンを退治する酸素療法(続き)

ふとした雑談など、気楽に話をしていると、けっこう重要な情報が入ることがありますが、次のビタミンCの治療法はその代表です。

この8月に、メキシコ・ティワナのオアシス病院(Oasis of Hope)院長のフランシスコ・コントレラス(Francisco Contreras)医学博士が講演で日本を訪れたとき、主催者から博士の講演のコーディネートと世話役を頼まれ、博士と車で、ホテルから講演会場に向かう最中に、たまたまビタミンCの話題になり、お聞きしたことが、今回は中心になっています(<補足1>)。

(3) ビタミンC

50グラムとか100グラムの大量のビタミンCを点滴で投与するガンの治療法は以前にもご紹介しましたが(第18章−2、2015年2月26日投稿)、これもビタミンCの影響で発生する過酸化水素を活用して、ガンを退治する方法、つまり酸素療法の一種です。

では、コントレラス博士が話されたことを、なるべくそのまま掲載します(<補足2>)。

「ビタミンC療法は誰もがやるようになってきています。Cを大量に投与するだけでしたら、非常に簡単です。しかし、ビタミンCの大量投与を、抗ガン治療として効果を発揮させるのは、簡単ではありません。100gの大量投与でも、ガン腫瘍はビクともしないこともあります。それでも、Cは大きな恩恵をもたらします。Cには強い抗酸化力がありますし、解毒や免疫強化の効果もあります。でもそれだけです。もし、適切にやれば、ガン細胞を殺傷することができます。」

「Cの大量投与も単独では(ガン治療に)効果が高いとは言えません。ライナス・ポーリング(Linus Carl Pauling)化学・生化学博士がビタミンCを使っていい結果を出したのは疑いの余地はなく、2つのレポートに載っていますが、末期のガン患者で、Cを投与してない人に比べて、生存期間が1年も長かったのです。でも博士は、ビタミンCが実際どう働いているかは分かっていませんでした。」

「ビタミンCにガン殺傷の効果を出させるためには、ガン細胞の内部で酸素濃度を高める必要があります。これを実現するのは簡単ではありません。二番目は、電子を供給することによって、ガン細胞内のミクロ環境で、電子の移動を起こして、活性酸素族、特に過酸化物を生み出すことです。実際にガン細胞を殺すのは過酸化物です。」

「ビタミンCはプロドラッグのように、ガン細胞の中で、酸素が存在することで、酸化を作り出します。そして、抗ガン剤や放射線による治療と大きく違うのは、Cは副作用をほとんど起こさないことです。」

コントレラス博士は最近、ビタミンCが過酸化水素を発生する仕組みを突き止めた米国衛生研究所(NCI、National Health Institute)の研究者と協力して、この方式を開発したそうです(<補足3>)。

肝心なのは、ビタミンCだけでは、そう簡単に過酸化水素が発生するわけではなく、発生しやすくするには、まず酸素が必要で、さらに電子を供給することで、電子の移動が促され、過酸化水素の発生が促される、ということのようです(<補足4>)。

ビタミンCが副作用がない、というのは、通常の細胞は、過酸化水素を分解する酵素(こうそ)のカタラーゼをふんだんに作り出しているため、多少の過酸化水素が内部で発生してもビクともしないのに対し、一部を除いた多くのガン細胞は、カタラーゼを十分に持っていないため、過酸化水素が大ごとになる、という理由です。

また、ビタミンCが、なるべく多くガン細胞に届く確率を高めるには、血液中のビタミンC濃度が高い時間をなるべく長くすることだそうです。オアシス病院では、50グラムのビタミンCを点滴で投与する場合、まず25グラムを投与して血中濃度を高め、その後、血中濃度が落ち始めるときに、残りの25グラムを投与するそうです。こうやって2回に分けると、いっぺんに与えるより、Cの血中濃度が高い時間をかなり長くできるようです。

「過酸化水素をガン細胞の中で発生させないと、ガン退治はできません。ガン細胞の外、例えば血液中には、カタラーゼがたくさんあるため、過酸化水素が発生しても、そのうち水と酸素に化学分解されてしまいます。多くのガン細胞は、このカタラーゼを十分に持っていません。また、ビタミンCの点滴によって、喉が乾きますが、水を飲んでしまうと、それによって水溶性のCは血液中から流れ出てしまいますので、ビタミンCの治療中は、水は禁物です」、とコントレラス博士は忠告しています。

私は、このNCIの研究者たちのビタミンCの研究を調べようと思って、インターネットで検索してみましたが、どうも見つかりません。ビタミンCによって過酸化水素が発生するのをうまく促進するこの方式は、一般には今のところ、ほとんど知られていないようですし、日本でビタミンCの大量投与をしている医師も、おそらく誰もまだ知らないのでは、と私は思っています。

それより、「ビタミンC点滴と断食療法でガンガ消える」という本(ベストセラーズ出版)を書いた西脇俊二医学博士などごく一部を除いて、ビタミンCでガンを退治できる、と本気で考えている医師は、日本にはほとんどいないのでは、というのが私の率直な印象です。

コントレラス博士は、オアシス病院の日本版を東京に開設することを計画しています。実現すれば、この新しいビタミンCの治療法を始め、メキシコ・ティワナで盛んに行われているガン治療が日本でも受けられるようになりそうです。

(4) 高濃度酸素室(Hyperbaric Oxygen Chamber)

高気圧の酸素室の酸素濃度を100%近くに上げ、その中にしばらく入って、酸素をたっぷりと吸い込む治療法。血行が促進される上に、血液中に酸素が溶け込み、酸素濃度の高い環境では生きていけない微生物を撃退するほか、ガン細胞を弱らせる、あるいは退治するのにも効果がある、と言われています。

アメリカでは使用条件と酸素室の性能に規制があり、Undersea and Hyperbaric Medical Societyという団体が規制を取り仕切っています。このため、例えばドイツ製の最新鋭の高性能酸素室はアメリカ国内で使用が認められていないようです。

メキシコ・ティワナの主なクリニックには、高濃度酸素室が備えられています。

(酸素療法はここで終了して、次回は、個人が自分のすい臓ガンを完治させたことを元にして開発したケリー療法と呼ばれる食事療法を紹介させていただきたいと思います。)

<補足1>

コントレラス博士は非常に気さくな人で、聞かれたことは何でも答える、という感じでした。もっとも、オアシス病院でやっている治療はすべて、メキシコ政府の認可を正式に得ているので、隠すことは何もない、ともおっしゃっていました。それよりも印象的だったのは、博士は1時間に1回はかなり絶妙なジョークを飛ばし、周りを笑わせる、ということです。博士は夏休み期間だったこともあり、家族旅行を兼ねて、家族全員(博士も入れて6人)をお連れしてきていて、私は通訳も兼ねて、3日くらい食事や観光などお付き合いさせていただきましたが、全員がとても明るい、非常に円満なご家族でした。博士を始め、メキシコ・ティワナのクリニック、アメリカでも自然な治療法を中心にしている医師たちは、ほとんど誰も、患者の精神状態が治療の成功を決定的に左右することを盛んに強調しています。こうしたクリニックのいくつかは、心理専門のカウンセラーを雇っているほどです。オアシス病院では、みんなで歌う時間など、リクリエーションを非常に大切にしていて、かつては創設者のアーネスト・コントレラス(Ernesto Contreras)医学博士も自らギターを弾いて、みんなの歌に参加されたようです(ここの入院患者の部屋は、まるでリゾートホテルの一室です)。それを引き継いだフランシスコ・コントレラス博士は、私生活でも、円満に陽気に人生を楽しむことを実践しているわけです。メキシコの人たちは基本的に陽気ですから、ガンの自然な治療を中心にする病院、クリニックがアメリカではなく、陽気な人たちがスタッフとして集まりやすいメキシコのティワナに集中しているのは、必ずしも悪くない、と私は思っています。

<補足2>

最初に聞いたのは、車の中でした雑談のときですが、ここに掲載したのは、その後、私がコントレラス博士にしたインタビューで、博士が話されたことの一部です。インタビューの中身はビタミンCのほかに、オアシス病院で主にやっている治療法、それらがどれだけの実績があるか、なぜアメリカで自然な治療法が本格的に行われないか、などです。このインタビューは録画し、日本語字幕をつけましたので、ご興味のある方は知らせていただければ、郵送させていただけると思います(一部をYouTubeに流す予定)。ただ、録画と編集はプロの人を雇い、その経費を講演主催者(NPO法人)が支払っていますので、もしかしたら有料になるかもしれません。有料だとしても、500円とか1000円プラス輸送料程度だと思われます。ちなみに、私はコーディネート、通訳、翻訳など全くの無料奉仕で、私の利益にはなりそうもありませんから、ご安心ください(飛行機代、交通費、ホテル代など私が使った費用は支払ってくださいました)。ただ、録画したDVDを販売するとして(未定)、もし万単位で売れれば、私にも利益があるかもしれませんが、その可能性は極めて低いと思います。

<補足3>

このNCIの研究者たちは、自分たちの研究が、ガンの治療法として認められるための臨床試験を米国内でしてもらえないため、非常に大きな不満を持っているそうです。それもあって、コントレラス博士に全面協力していると思われます。博士によると、アメリカのFDA(食品医薬品局)は、ガンの治療法として認可するには、100億円単位の莫大な経費のかかる臨床試験を要求しているそうです。この認可を受けないで、ガンの治療として実施すると、違法行為となり、その医師は厳しい処罰を受けるようです(医師でない場合は、さらに厳しい)。ですから、ガンの治療法として認可を受けた薬品などは、特許を与えられ、かかった経費を回収するため、しばらくは独占でその薬品を売ることができるようになっています(この特許のために、弁護士にかかる費用も莫大なようです)。薬品は工業製品で、そのフォーミュラはそれまで存在しなかったわけですから、特許の対象となりますが、ビタミンCなどすでに天然に存在する物質は、この特許が取れません。臨床試験や弁護士の経費など、ガン治療法としての認可を受けて、さらに特許を取得するには、1000億円近くの費用がかかるようです(メキシコはこの経費が比べ物にならないくらい低価だそうです)。ガンの治療薬がアメリカで非常に高価なのは、これが主な理由だと考えられます。特許が取れなくて、独占販売する権利が得られないと、ほかのところもその治療法をすぐに始められますから、臨床試験などの莫大な経費を回収するのはまず不可能です。FDAが今の認可方式を続けている限り、特許の取れる薬品以外のガン治療法がアメリカ合衆国で普及するのは無理だし、現在の国の莫大な医療経費を削減するのも不可能だ、とコントレラス博士はアメリカ政府に対して指摘したそうですが、今のところ、この仕組みを変える動きは全く見られません。

<補足4>

ガン細胞に電子を供給するというのは、電子を供給する自然な物質を送り込む、ということのようです。この物質が何かは、お聞きしていないので分かりません(次にお会いする時に、聞いてみたいと思います)。電子の移動でいうと、酸化とは電子を奪い取ることで、還元は電子を供給することです。抗酸化物は、電子を供給しやすい物質で(自らは酸化される)、天然の強力な抗酸化物(つまり電子の供給能力が高い)の代表はビタミンE、グルタチオン、葉酸、最近発見されている植物栄養素(各種バイオフラボノイドなど)です。


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