2015.02.26    

第18章―2 隠蔽(いんぺい)されたガン治療法の数々 その2

今から50年以上前の話ですが、カリフォルニア州サンディエゴの学校で英語(アメリカの国語)の教師をしていたセシル・ホフマンさん(Cecile Hoffman)は1959年、乳ガンを患って、乳房の摘出手術を受け、ガン腫瘍は全て取り去られた、と手術を担当した医師から伝えられました。ところがその3年後、ガンは再発したばかりか、体のいろんなところに転移していて、広がりすぎていてもう手の施しようがない、余命は数ヶ月だ、と医師から宣告を受けました。

年が明けた1963年3月、彼女のご主人は、「レートリル: ガンのコントロール(Laetrile: Control for Cancer、Glen Kittler著)」という本にたまたま遭遇し、早速読んでみました。化学者だった彼は、その本の内容にとても興味を持ち、当時レートリル研究の第一人者だった、アーンスト・クレブス(Ernst Theodore Krebs, Jr.)生化学博士に連絡をとってみました。

クレブス博士と話してレートリルの効果に確信を持ったホフマンさんは、レートリルを使ったガンの治療をしていたカナダのクリニック(McNaughton Foundation)に奥さんのセシルさんを連れて行きました。そこでの治療ですっかり体調を取り戻したセシルさんは、アメリカに帰ってからもレートリルの治療を続けようとしましたが、レートリルはアメリカでは認可されていないために、処方できないと医師から告げられました。

レートリルの治療をできるところがないか探したところ、サンディエゴから非常に近い(車で30分くらい)メキシコの町、ティワナでアーネスト・コントレラス(Ernesto Contreras)医学博士がレートリルを使った治療をしていることを突き止めました。コントレラス博士のところで数ヶ月の余命を乗り越えたばかりか、ガンがすっかり良くなってしまったセシル・ホフマンさんはアメリカに帰ってから、こうした新しい療法があることをほかの患者にも伝えようと1963年の7月、ガン患者の連絡会(The International Association of Cancer Victims and Friends)を結成しました。

アメリカ各地にその支部ができ、その中のロサンゼルス支部が拡張し、年に一回、ガンの新しい治療を研究、実施している医師や研究者を招いて講演会を開催するようになりました。これが現在のガンコントロール協会(The Cancer Control Society、本部ロサンゼルス、Frank Cousineau会長)の前身です。

この講演会は4日間のコンベンションになり、今年(2015年)が43回目。日本にも支部ができて、主に日本人の医師や研究者を集め、2日間のコンベンションを東京で開催しています。

ロサンゼルスでは1回で40人ほどの医師、研究者が講演し、毎回講演する5人のレギュラースピーカー以外は、同じ講演者が2年続けて話すことはないですから、2年間で少なくとも、75人ほどの講演者がいることになります。この75人が実施、あるいは研究しているガンの治療法は、一部同じ療法を採用していたとしても、それぞれ独自性があります。つまり、このロサンゼルスでのコンベンションだけを見ても、「ガンの治療法は50や100はある」わけです。

さて、天然の抗ガン剤の第二弾は、日本でも最近、一部の医師がガン治療に採用し始めたビタミンCの大量投与です。

1. ガンを死滅させる療法

(2) ビタミンCの大量投与

ビタミンCが直接からんでいる体の機能は、知られている主なものだけでも、

1) コラーゲン(靭帯、腱、各臓器の上皮など様々な結合組織を強化するタンパク質)の生成。コラーゲンがないと、大部分の結合組織が非常に弱体化して、体はボロボロになる。

2) カルニチン(ミトコンドリアでの脂肪のエネルギー代謝に関与する物質)の生成。カルニチンがないと、脂肪をエネルギーに変換するのに大きな支障が出る。

3) ノルアドレナリン(アドレナリンと並んで重要なホルモン。神経伝達物質としても働く)の生成。

4) ビタミンCは免疫細胞にかなり集中的に貯蔵されていて、菌に感染すると一気に消費されるため、免疫の機能に重要な働きをしている、と考えられている。

5) ビタミンCは主要な抗酸化物のひとつ。フリーラジカル(活性酸素)を直接中和するほか、フリーラジカルを中和して活性を失ったビタミンE(細胞膜や、脂肪とコレステロールを各細胞に配るリポタンパクなどを酸化から守る重要な抗酸化物)を再び活性化する、つまり復活させる。

6) 鉄やカルシウムなどミネラルの体への消化吸収の促進。

などがあり、ビタミンCがないとおそらく生命維持が困難になるという、極めて重要な栄養素です。

ビタミンCが重要なのは、他の主なビタミンと同様、人間の体では合成できない(一部の動物の体では合成できる)ので、私たち人間にとっては食物などから摂取しなくてはならない必須栄養素だとされています。

日本の厚生労働省が定めている1日の推奨摂取量は100ミリグラム(アメリカ合衆国では90ミリグラム)です。しかし、これはビタミンC欠乏が原因とされる壊血病を防ぐための最低量であり、栄養素を使って病気の治療をしている医師や研究者からは、健康維持にはこの量はあまりに少なくて問題外だ、と非難の的です(これらの人たちによる推奨最低量は通常でも500ミリグラム、病気をしているときには1000ミリグラム以上)。

ビタミンCは水溶性で、多少摂りすぎても余った分は尿や汗などと一緒に体から流れ出てしまうから、あまり問題ない。摂りすぎの主な問題点は、Cは酸性なので、口から摂取した場合にお腹を壊すことくらい、というのが彼らの見解です。

この1日の推奨量100ミリグラムの500倍以上という50,000ミリグラムから100,000ミリグラム(グラムに直すと50グラムから100グラム)を、点滴で1時間から2時間くらいかけて体に注入するのが、ビタミンCの大量投与です。大量投与すると、ガン細胞を殺す効果がある、と見られています。しかも、通常の細胞にはあまり危害を加えず、ガン細胞には有害であるという、とても好ましい天然の抗ガン剤です。

ビタミンCがガン細胞を殺す仕組みは、いくつかの説があるのですが、有力なのは、ビタミンCがガン細胞の中で過酸化水素を発生させる、という説です。

過酸化水素はフリーラジカルで、DNAなど細胞内の各組織を酸化して傷つけます。もちろん大量にあれば、細胞は破壊されてしまうでしょう。ビタミンCは本来、この過酸化水素を中和して無害化する抗酸化物のはずです。ところが、細胞に大量に入ってくると、フリーラジカルを無害化するどころか、逆にフリーラジカルである過酸化水素を発生させる、という矛盾が起こるわけです。

なぜ、Cが大量に入ってくると過酸化水素を発生させるのか、そのメカニズムはどうも、まだ解明されていません。ともかく、ビタミンCの大量投与によってガン細胞で過酸化水素が大量に発生する理由のひとつは、ガン細胞が通常細胞よりはるかに多くのビタミンCを吸収してしまうからです。

ガン細胞が十分なエネルギー生産をするためには、通常細胞よりはるかに多くのブドウ糖を吸収する必要があるのですが、ビタミンCはブドウ糖と分子構造が非常に似ているため、ガン細胞はブドウ糖をがむしゃらに吸収するついでに、Cも多く吸収してしまうようです。

さらにダメ押しは、通常の細胞は過酸化水素を分解して無害化する酵素(カタラーゼ)をかなり多く持っているのに対し、ガン細胞はカタラーゼをあまり持っていないか、持っていたとしても、活性化されていないためにあまり役に立たないようです。つまりガン細胞は、大量のビタミンCが投入されると積極的にそのCを吸収してしまううえに、そのCによって発生するフリーラジカルに対する備えも不十分であるため、フリーラジカルの犠牲になりやすい、ということになりそうです。

量子力学を化学の分野に応用した先駆者で、ノーベル賞を2回受賞したライナス・ポーリング(Linus Carl Pauling)化学博士は、必要な栄養素を十分に摂取していれば健康を維持できることを提唱したことでも有名で、特にビタミンCの重要性を強調し、大量のビタミンCがガンを予防、そして退治できることも提案しました。

博士が提案したガン退治に必要なCの量は10グラム程度で、大量のCによって免疫などが強化され、ガンを退治すると考えられていたようです。医学会は、これを確認する実験をしたけれども、決定的な効果を上げることは実証されなかった、と大量のCのガン退治効果を否定しました。最近の研究によって、この量を50グラム以上にすれば、免疫を強化するというより、ガン細胞を直接殺す効果がある、ということが分かってきました。

ビタミンCの大量投与によるガン治療も認めていないFDA(米国食品薬品局)は、ここ数年、Cの大量投与の取り締まりに動いているようです。日本では、「寺子屋」塾師匠の塚田博医学博士を始め、何人かの医師が積極的にビタミンCの大量投与をガン治療に取り入れています。

 編集者注: 「寺子屋」塾において、塚田 博(医学博士)が 記述している「精神世界と医療の融合」第25話 理想的なガン治療「高濃度ビタミンC点滴」その3にも関連記事があります。


(続く)

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