2006/09/11   

第2話 「生きてる!」と思う瞬間

 ある40代男性のお客様を対応していたときのことです。ハードなトレーニング中、1セットが終わったとき、こうおっしゃいました。
 「はぁ〜!きっついなぁ〜」
 「でも、「生きてる」って感じがしたよ」
 意外な言葉に私は少しびっくりしました。

 「おおげさですね」と私が笑うと「いや、毎日仕事をしているときは集中しているのか、やることに追われているのかわかんないけど、呼吸すらしていない感じなんだよ」
 「さっきセットが終わって力を抜いたとき、はじめて呼吸したような気がしたよ」

 私は、社会で活躍されているその方の日常のすさまじさを少し垣間見た気がしました。大学院で学生の研究を助け、ご自身はベンチャー企業をいくつも立ち上げ、その分野の国際会議で活躍する、世界レベルの若い教授です。忙しい合間を縫ってトレーニングに来てくださいます。
 ハードなスケジュールに息も詰まるほどの日常の中、トレーニングによって身体を追い込んで初めて、自分に還えるかのようです。彼にもやはり、大きな志があります。そして、だからこそ自分を奮い立たせるかのように「自分の位置」を確認しているように私には想えるのです。

 皆さんは、日常、「ああ、生きてる!」と思う瞬間がありますか?

 私が感じるのは、エアロビクスのレッスンを受けているときです。エアロビクスは有酸素運動で、50分も60分も長く運動を続ける持久力を必要とするトレーニングです。トレーニングによって心肺機能は強くなり、血流代謝が向上し、体脂肪が落ちてゆきます。生活習慣病の危険があるお客様には、私たちも積極的に有酸素運動をして頂くようにし、医師もそのように勧めます。

 有酸素運動をはじめて20分くらいたつと、「ランナーズ・ハイ」の状況になるのです。キツさを超えて、心地よさが出てきて、頭は「無」の状態になってくるのです。そこまでくると 人間は小さな心配やくよくよ悩んでいること、今日の晩御飯や今この瞬間、どうまわりに見られているかなんて、気にならなくなってくる。ただ、この身体の高揚感を受け取りながら、時を過ごします。
 その人にとって日常より少し高いレベルの負荷を与えると、身体は反応して、心は何かに気づくのでしょうか。もし、精神的に負荷がかけられるとしたら、それはストレスになるのか、モチベーションに変わるのか・・・ヒトそれぞれ、環境によっても違うでしょう。

 他の人にも聴いてみました、どんな時「生きてる!」と思うのか。おいしいものを食べているとき。やりがいのある仕事を実感しているとき。身体がゾクゾク、わくわくするとき。思いっきり泣いているとき。ビールのはじめの一杯!休暇に旅行しているとき。子供を出産したとき。死に直面したとき。何かに志しているとき。好きな人と過ごしているとき。深呼吸しているとき・・・。

 なるほど、身体や心になんらかの刺激があると、ヒトは生を実感するのか、と思います。生を実感しなければ、まるで生きながらに死んでいることになるのかもしれません。毎日、今この瞬間、「生きてる!」って実感できる人生に具体性をつけるために、超カンタン、日常の負荷、身体のアンチ・エイジング法をお伝えします。

 それは「深呼吸」すること。


 呼吸は単に、吸って吐くだけに思われがちですが、体内に入った酸素は血中から全身の組織に送られ、組織から二酸化炭素を回収するといった一連の機能全部のことです。
 人間は酸素がなければ生きてゆけません。発熱や興奮したときには呼吸は速くなるし、酸素の供給が数分止まったら、脳は機能的に傷害が残ります。赤ちゃんは誕生したとき、はじめて空気が吸い込まれて肺が一気にふくらみ、産声をあげます。深い複式呼吸は気分をリラックスさせてくれるでしょう。
 あの甲子園の優勝投手「ハンカチ王子」こと斉藤佑樹くんだって、特殊なマシンで高濃度の酸素を摂取して連日の過酷な試合を全回、見事に投げきっていました。
 
 身体に優しい刺激を与えることで、気分はスッキリするし、体内代謝もぐっとよくなります。何より、カンタンで、どこでもできます。

1吸う(基本)
2吐く(基本)
3吸う(応用)
4吐く応用


1、胸に手をあてて肋骨をおさえる。息を吸って肋骨が開くのを確認しながら。
2、息を吐く。肋骨が閉じてゆくのを感じながら。
3、手の平を上にして、肩と肘を後ろに引く。胸を上に開くように息を吸う。
4、肩と肘を前にして、その延長に手の甲を合わせる。背中を丸めて息を吐く。

 ヒトは、平均的にいえば、一回の呼吸で約500mlの空気の出し入れを行っています。ペットボットル約一本分を一回の呼吸で出し入れしているのです。一分間にそれを約12〜16回繰り返します。約7000mlの空気循環を行っていることになり、これが深呼吸になると、一回で2000mlもの換気を行えます。
 普段、運動できる環境になくても、一日10回程度、深い深呼吸をすれば、体内の換気能力を落とさずにすむでしょう。そして、ココロを穏やかにさせてくれるはず。

 最後に、心への刺激、精神のアンチ・エイジング、なんて表現していいかわかりませんが、あなたの「命」を実感できるステキな詩をお届けします。

「青春」  
サミュエル・ウルマン(作山宗久 訳)

青春とは人生のある期間ではなく、心の持ち方をいう。
薔薇の面差し、紅の唇、しなやかな手足ではなく、
たくましい意志、ゆたかな想像力、炎える情熱をさす。
青春とは人生の深い泉の清新さをいう。

青春とは臆病さを退ける勇気、
安きにつく気持ちを振り捨てる冒険心を意味する。
ときには、20歳の青年より60歳の人に青春がある。
年を重ねただけで人は老いない。
理想を失うとき初めて老いる。
歳月は皮膚にしわを増すが、情熱を失えば心はしぼむ。
苦痛・恐怖・失望により気力は地に這い清新は芥にある。

60歳であろうと16歳であろうと人の胸には、
驚異に魅かれる心、おさな児のような未知への探究心、
人生への興味の歓喜がある。 - 3
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君にも吾にも見えざる駅逓が心にある。
人から神から美・希望・よろこび・勇気・気力・力の霊感を受ける限り君は若い。

霊感が絶え、精神が皮肉の雪におおわれ、
悲歎の氷にとざされるとき、
20歳であろうと人は老いる。
頭を高くあげ希望の波をとらえる限り、
80歳であろうと人は青春にして已む。


 皆さんには何が伝わりましたか?

 若さは、魂から出てくる活力、その入れものである肉体を健康に保つことは、あなたの内なる源泉をより豊かなものにしてくれます。

 この私の好きな詩の余韻を残したまま、今回はこのまま終わりにしたいと思います。

 〜今日の格言〜
 「一日一回でも、ココロや身体を刺激させて、「生」を感じよう!」

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