2007/04/09
第10話「生きる姿勢」
前回、ヒトの姿勢を決定しているのは重力に逆らっている「抗重力筋」が使われているかどうかで決まる、という内容のことを書きました。今回はそこをもう少し掘り下げて、具体的に姿勢のタイプとエクササイズをみてゆきましょう。
まず、一般的に正しいといわれる姿勢とは、どんな姿勢なのでしょうか?
下の図をみてください。ヒトを横からみたとき、点がある位置が一直線上にあると「正しい位置」といわれてきました。これはざっくりとヒトの姿勢をみるのに役立ちます。
A B C
一番左Aのように耳たぶ、肩の横、足の付け根、膝、かかとが一本の線上で結ばれているのが理想、という風に基準を決めた場合、あなたの姿勢はどのタイプになりますか?
Bのヒトは肩の位置より頭が前方にでており、背中が丸く、腰がおちています。
一般的に「猫背」といわれるタイプの姿勢です。
Cのヒトは腰のそりが強く、一見姿勢がよく見えがちですが、腹部の深部の力がぬけ、腰が詰まってしまっています。「反り腰」タイプの姿勢です。
大きく分けるとBかCに分けることができます。ただ、あくまでも人間の姿勢は一人ひとりにクセがあるもので、ホリスティックにバランスをとってうまく成り立っています。
まず、Bの猫背タイプは、加齢で起こる傾向にもありますが、胸と背中の筋バランスの崩れによって起きることが多いです。
細かい作業中、集中するとき、どうしても前かがみになってしまいます。前かがみは胸の筋力を収縮させ、背中をゆるめ、弱化し、丸くさせます。胸部が狭くなると、頭をはじめ上半身全体が前のめりになり、そのバランスをとるために腰は落ちてきます。呼吸は浅く、全身の代謝が下がりやすくなります。このような人は仕事の合間に1分でも2分でも深呼吸する習慣をつけるとよいと思います。
そしてCの反り腰タイプの人は、骨盤の前と後ろのバランスが崩れているケースが多いです。腰がそれてしまうのは、つま先に重心がのっていることが多く、女性がハイヒールを履いている場合、どうしても前のめりになりそうになるのを腰を反って胸を張ってバランスをとろうとしているのです。すると腰が必要以上に力をだすので、腹筋は力をゆるめてバランスをとろうとします。膝はやや内側に入り、おしりの筋力はゆるんでしまいます。
このような人は立っているとき、自分の足の裏の着地をつま先からかかとに重心移動させる意識をもつとよいです。そして、土踏まずにも体重をのせる意識をもってください。
どちらにも共通していることは、身体の前後で強く張っているところがあり、そこを補うように反対の筋力がゆるんでしまうのです。なぜどこかの筋力が局所的に疲労するかといえば、それは長時間の同じ姿勢の保持であったり、ファッションや心理的要因など、原因は様々です。
人間の身体は踏ん張ったり、緩んだりしながら全体でバランスをとっているのです。
完璧な人間などいないように、姿勢はその人の生きる姿勢そのものを写し出しているのです。まずは自分の姿勢のタイプを知って、それを補うコツを知っておくのが、上手く自分の身体のバランスを活かすコツになると思います。
あるトレーニングのお客様はこんなことをおっしゃいました。
「花や水に想いをかければ、キレイに咲いたりおいしくなるように、人間にも想いをかければかわるものだよ。人間の60%は水なんだし」
そして、片岡鶴太郎さんもこういいます。
「受け入れるということは、一体化するということ」
志を入れる肉体が、志を全うするのにふさわしい容器であるよう、一体化する、と置き換えてみるとどうでしょう。志を扱うのと同じように肉体も扱える気がしませんか?
これから行うエクササイズはそれぞれの身体のくせからくる弊害を予防するためのものです。あなたの行動が一歩前進するための大切な動きです。
やってみてください。
I II
III
I 四つんばいの姿勢になります。
II あごをひいて肩を天井にあげ、順番に肩、背中、へそ、腰を天井に高くもちあげます。
III 腰まで身体の遠くをとおりながら最後は正座の姿勢になり、上半身は床に低い姿勢になります。
脇の下は床に近づけ、かかととおしりも近づけます。
腰が伸びるのを感じて、息を吐きましょう。
A B
C D
E
A仰向けになり膝を抱えます。おしりが床から軽く離れるまで膝を胸に近づけます。
B前足は立て、後ろ足は膝をつきます。両膝90~120度くらいに開き、両手を床につけます。(後ろ足のももの付け根がのびるのを感じます)
C余裕があったらさらに上半身を起こし、ももの付け根の伸びを大きくします。
D左足はナナメ前に伸ばし、右足の膝を90度にし、足の付け根から、外側、内側交互に旋回させます。(股関節まわりがほぐれ、らくになります)
人間は自分で実感したり、感動したり、やってみないと本当に自分のものにならないもののような気がするのです。次回はそんな話も交えながら、すすめたいと思います。