2007/05/28  
2008.10.06   

15話 親子 その2

今回は、父親と子どもの関係について見ていきましょう。

父親は子供にとって母親とは別の意味で大きな存在です。多くの場合近寄りがたい存在ではないでしょうか。

 

父親は仕事で家を空けることが多いため、家族と共に過ごす時間が短くなりやすく、子供は父親の些細な言動や母親を通じての父親像に影響を受けることが多いようです。

 

あなたはご自身の父親をどのように見ているでしょうか。そして、あなたはお子さんからどのように見られているでしょうか。

 

 

父と子

 

父親と子供が仲良しと言う話は、息子であろうと娘であろうと、あまり耳にしません。父親とは距離を置いている人が多く、そういう場合、たいてい3つのパターンに分かれます。父親を憎んでいるか、恐れているか、馬鹿にしているかです。そしてこの三つの感情を併せて抱いている人もいます。

 

今回は、父親に対して、この三つの感情を全て抱いていた30代の独身男性のお話をしたいと思います。

 

SE(システムエンジニア)としてこれまで仕事一筋で、昼夜の別なく働き通していたという彼は、精神的なプレッシャーから体を壊してしまい、もう少し穏やかに働ける職場に転職したばかりとのことでした。

 

セラピーを開始すると、彼の体の疲れが私にどっと押し寄せてきました。あまりに重くて、思わずその場に座り込んでしまいました。「そんな大げさな!」と思うかもしれませんが、本当なんです。苦しんでいる人の想念が伝わってくると、こちらの体もずっしりと重くなって座り込んでしまうことは良くあることなのです。

 

彼から伝わってきた「疲れている想い」にせっせと愛をかけて溶かし続けると、今度は心の苦しみも出てきました。仕事のプレッシャーでどんどん苦しくなっていく想いが心から伝わってきます。

 

そして、心の苦しみを溶かしていくうちに、今度は子供の頃の想いが出てきました。父親に怒鳴られたり殴られたりして、グッとこらえています。怒鳴られるたびに恐ろしくて、ビクッと彼の体が一瞬止まってしまっています。ビクッ、ビクッと何度も息まで止まっている様子が伝わってきました。父親には、何かあるとすぐに怒鳴られていたようで、グッと息を止めている想いが、その後もしばらく続きました。

 

そのことを彼に伝えると、「自分は3人兄弟の長男でしたが、父は自分に厳しかったんです。弟や妹にはそれほどではなかったのですが、何かあるといつも自分が怒鳴られていました。母は何も言わずに黙っているだけなんです」と言いにくそうに語りました。

 

彼から伝わってくる子供の頃の想いはまだまだ続きます。しばらくすると、父親を憎む想いが出てきました。すぐに暴力に訴える父親を強く憎むようになってしまったようです。憎しみを溶かし続けていくと、今度は憎しみの想いと一緒に、父親を馬鹿にする想いも出てきはじめました。父親が彼を頻繁に怒鳴るために、彼は自分の存在が否定されているように感じて辛くなり、その想いを誤魔化すために、父親の行動を浅はかだと馬鹿にすることで自分自身を保つようにしていたのです。

 

それらの想いをどんどん溶かしていくと、今度は過去世の想いが出てきました。その過去世では、彼は町役場に勤める紳士で、町の人たちから一目置かれている有識者といった感じです。彼には奥さんと一人の子供がいました。その過去世では、彼は子供の躾に相当熱心で、かつ神経質だったようです。自分が家にいるときは奥さんにも子供にも静かにすることを要求していました。耳障りな音を立てることも許さないのです。でも、子供にその要求が実行できるはずがありません。物音を立てるたびに、彼は過敏に反応して家族に冷ややかな視線を飛ばし、奥さんも子供も凍りつくような気持ちを抱いていました。

 

その物音を立てていた子供が今生での彼の父親で、奥さんが彼の母親だったのです。過去世では、今回のように親子が今生とは反対の立場だったり、母と娘だったり、夫婦だったということもよくあることです。

 

私は、彼に過去世の様子を伝えました。

「あなたが冷酷な父親だったことで、当時の奥さんとお子さんの凍りつくような想いが残っています。この想いを溶かすために、お父さんとお母さんに謝ってもらえますか?」

 

「僕が何かする度に、父が僕にだけ怒鳴ったり厳しかったのは、この過去世で僕が子供に冷たく当たっていたからなのでしょうか」

 

「理由は他にもあるでしょうが、当時の想いが影響を及ぼしていたのも一因です。あなたが謝ることで、過去世の家族の想いが溶けて、お父さんやお母さんとの関係に変化が出てくると思いますよ」

 

彼は目を閉じて無言になり、謝ってくれているようでした。そして、しばらくしてから、目を明けてすっきりした表情になっていました。

 

「謝ってくれてありがとうございます。あなたの魂に残っていた過去世の想いは溶けましたよ。心も魂もとても明るくなりました。それはわかりますか?」

「はい、心が随分楽になりましたから。体もなんか軽くなりました」

 

「そして、もう一つ。過去世のあなたは『子供の躾』という刀を振りかざして、実は、ただ単に、自分の静寂を人から乱されるのを嫌がっていたのです。今生のお父さんは、そういう冷たいところを持つあなたに対して、いつも熱い想いをぶつけて、家族と関わることというのはどういうことかを教えてくれていたのです。あなたの魂は、あなたのお父さんを選んで生まれてきたのです。あなたに、家族というのは飼い犬や飼い猫とは違って、綺麗事ではなく、一緒に成長していく存在なんだということを伝えようとしていたのです。ただ、お父さんも少し自制心が効かなくて行き過ぎたときもあったようですけれどね。お父さんにいずれ感謝できるようになるといいですね」「お父さんに感謝できることがあったら言ってみてもらえますか」

 

彼は、幼い頃からの、父親にしてもらった嬉しいことや有難かったことを次から次に思い出し、自分が実は可愛がられて育ったということに初めて気づきました。

 

その夜、彼は久々に実家に電話を入れ、何年ぶりかで父親と話したとのことでした。まだ直接感謝を伝えるまでには至らなかったとのことですが。

 

 

あなたが父親ならば、あなたの大切な家族に、あなたの志や愛情をしっかり見せるようにしてください。子供はあなたと距離を置いていても、しっかりあなたを見ています。あなたが世のため人のために志を持って仕事をしていれば、そして、家族に愛を伝えることを忘れなければ、お子さんはあなたをいずれ理解してくれます。お子さんがあなたを理解してくれることは、あなたにとって大きな力付けとなり、あなたの志を更に一歩前に進める原動力となることでしょう。

 

また、あなたのお父さんがご存命で、そして、あなたがお父さんに対して心にわだかまりを抱いているなら、一度お父さんに心を開いて話す時間を持ってみませんか?お父さんは、あなたが心を開くのを待っているはずですよ。万一、お父さんがそうでないとしても、お父さんの魂は必ず待っていますから。

 

そして、お父さんがご存命でなくても、お父さんを思い浮かべて、語りかけてみてください。お父さんの魂には、あなたの思いが必ず伝わりますよ。

 

次回は、いよいよ、夫婦の関係について、見ていきましょう。

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