2007/08/13
第12話 能とアニメ 感想文
前回 精華大学のアニメーション学科での授業と能のワークショップについて書かせていただきましたが、その後学生たちの感想文を送っていただきましたので少し紹介したいと思います。
まず授業の感想について
「質問について詳しく解説してもらったのがうれしかったです。空白だからこそ、シンプルだからこそ、そこに求められる何かがあるという言葉がとても胸にのこりました。そういえるような能が本当にすごいと思いました。」
「あくまで外側からの思考でしか考えられなかったので初めて内側からの意見とか考えとか聞けてとても新鮮で良かった。」
「河村さんの話を聞いてエネルギーをもらいました。能は五感で感じられ、演劇なんだけど自分をみつめることにも繋がると思いました。」
「自分で調べるよりも早くかつちゃんと理解できた。やはり直に触れている人から話を聞いた方がわかりやすいと思った。」
「先生の話は面白かったのですが、ビデオを見たときに何も感じませんでした。来週寝てしまわないか不安です。」
「能についてとてもよくわかりました。映像や扇子が見れてとても楽しかったです。(思った以上に!)来週、生で能が見れるのですごく楽しみです。自分の中で能という古典芸能の在り方が変わりました。」
「世阿弥ってキムタクとwebで書いていたからマツジュンって言ったとき、うらぎられたーと思いました(笑)サイト見てから講義聞いて良かったです。」
「能と同じで能についての講義なので眠たくなるかなと思ったけど他の講義より面白かったです。」
「生な話を聞けてとても面白かったです。能は面白くないというレポートを書きましたが実際に能を見てもう一度考え直したいと思います。」
「いくら本で能を調べてもピンときませんでした。実際に携わっている方の話を聞くことは大変身になりました。雲の上のようなイメージがありましたが、身近に感じられるようになりました。本当に美の世界だと思います。楽しく話を聞かせていただきました。聞きやすかったです。」
「今日河村さんの話を聞いたとき、今まで能というものはすごく難しいイメージを持っていたし、調べても能のうわべだけしかわからなかったけど、本にも載っていないようなリアルで面白い話を聞かせていただいて能のイメージが、ただむずかしいというイメージとは違いとっつきやすくでも深いかんじだなと思いました。」
次に実際に能舞台に行きワークショップをし、能を見た後の感想文を
「まず、実際に舞台に上がって摺り足を教わってみて、本当にしんどいとしか、いいようがなかったです。あの体勢で演目をひとつ演じたら、汗だくになってしまうだろうと思いました。しかも面をつけて司会をさえぎり、重い装束を身にまとい、厳しい制限のある舞の動作をしなければいけないのかと考えるとゾッとしました。
でもあの摺り足の動作をやってみて、前に進むのにも必要最低限の動きしかしない所が、リミテッドアニメーションに通じるものがあるように思いました。
能の動き(とか、面や音楽や衣装)の持つ独特の文法も、マンガで使われるような漫符のような役割を果たしているのでは?と思います。
能の動作は、テラス、クモラスのように一見繊細なもののように感じられるけど、実は分かりやすいように、観る側のために簡略化されている側面もあるのではないか、と思いました。」
「お能の世界って、非常に魅力的な世界ではって考えられてうれしいです。一歩一歩が慎重で、誠意を尽くす感覚で、知らずに夢中になって、息をするのも忘れるほどでした。やさしく流れて、何かがぴんと張っているように感じたら、ぷっつり切れるよう、、、。静的なじっとする動きだろうと思ったら、動的に激しく動き出して驚かせる意外性は、全体的にとても面白いテンポでした。
もっと個人的、主観的な感想を言うと、私が考えている日本人の人生、民族性、文化(静か 進み、そして驚かせる)をそろって象徴的に表現するパーフォーマンスでした。(ほんの少しではなんともいえませんが、、、。)
いつも考えていることですけど、今の日本があるのは、素晴らしく個性がある文化と伝統があるからといえますが、もっと大事なのは「古くても、分からなくても」とりあえず守っていくからではないでしょうか。
「温故知新」の意味は理解している。ただ新しいものだけを求めている韓国の若者のひとりとして、是非学んでほしいところです。」
「調べただけのものと実際に見たのでは、全くイメージがちがいました。動作の意味や間に意味を考えるほど理解は出来なかったが、リズムの間と間のあいだに、ぞ―っとするような、何か訴えかけてくるような、寒さみたいなものを感じて感動しました。」
「変な動きが多かった。説明された今でも、分からないことが多いくらいだ。でも、わけが分からないのにすごかったと思えるのは何故だろう?それとも、訳がわからなかったからすごかったのだろうか?」
「何にもかもが想像していたモノとは違うモノでした。「百聞は一見に如かず」という言葉が改めて身にしみました。今回のような激しい舞台だけではなく、静かな舞台での内面性の変化というモノがどういうものかも、観てみたかったです。」
感想文 まだまだあるのですが、最初のレポートの段階から比べると彼らの中身が随分変化しているのにまず気がつきます。
よく調べているし真面目にやっているという感じだったし、教室の彼らは静かでおとなしいという印象でした。アニメをやっているということで、どっちかというとオタク系かなという感じでした。
しかし、授業の感想に比べ、ワークショップ後の感想文ははるかに雄弁です。
びっくりしたのは、3人の留学生の書いたものです。もちろん日本語ですし、読んでいただいたら分かると思いますが、語彙や表現力が豊富なのです。
自分の思いを言葉で伝え、自国にも想いを馳せる。すごいなぁと思いました。
今の若者は、とても、すごい、を使うことが多いし、メールの絵文字の多様さを見れば彼らの日本語の表現力の低下は想像がつきます。
精華大学では数年前から「日本語リテラシー」という取り組みを始めたのですが、学生の感想文を読み 学ぶということは、知らないものを知ること、その喜びを感じることということが私にひしひしと伝わってきて、うれしかったです。
アニメを学ぶ学生が、能という全く関連性のなさそうに思えるものを通して自分自身の中にある可能性に目覚め、アニメについても深く考察していることに感動しました。
彼らはきっと将来アニメの中に自分自身のアイデンティティーを発見すると確信しました。アニメが文化になる。文化として語れるアニメを創造してほしいと願っています。