2009.08.24   

第31話 : 言霊から見えてくる道標  

前回まで二回に渡り、弊社で行われてきたブレイクダウン・ブレイクスルー(BD・BT)セミナーについてお話させていただいた。

 今回は、そのBD・BTセミナーの中で、私が社員たちに伝えた数々のメッセージ(言霊)をご紹介したい。

 このメッセージから社員たちが、自分たちが進むべきパーソナルミッションに続く道を明確に歩き出してくれることを私は願っているわけだが、そもそも言霊といわれる通り、言葉には不思議な力がある。

 一般的に知られている「座右の銘」もそれに当たるのだろうが、常に格言を持ち、毎日を過ごすことは、目標を持って進むには必要不可欠といえるだろう。

 そこで、私自身も「言霊集」をつくり、社員にメッセージを送ると同時に、私自身の格言として日々精進したいと考えているのである。今回はその言霊集、以下をご紹介したい。

 壱:「過去を観ること、それは未来に責任を取ること」

未来へ進む時、その未来を形成する過去は必ずある。過去を観て、そこから学び、発見することで未来を同じ過去にしない。

 これは、自分史を語る「自分史セミナー」に大きく通じている。

 まず自分の過去を受け入れ、形だけでなく魂レベルでその過去を完了させ、自分自身を承認し、過去の苦い経験を繰り返さないよう前進しよう。

 壱:「数字や、目先のことを追うことで、大切なものを失うのであれば、追わなくていい」「数字の奴隷になるな」「数字は目標であって目的ではない。何のために、という目的が最も大切である」

 
 企業に属する人間である以上、数字や結果は追い求めなければならない。しかし、それを追うばかりに大切なものを見失うのであれば、追わなくてもいい。目的を明確にして仕事に取り組めば数字や結果は自ずとついてくる。

 壱:「あきらめの種からは、あきらめの実しか実らない」

 
 あきらめてしまうと結果はまず失敗する。どんなに困難であろうともあきらめず、挑み続けることだ。

 もともと「あきらめ」とは、失敗を意味する言葉ではないだろうか。

 自分の納得するまでチャレンジを続けてこそ、「自信」や「自己肯定感」が生まれるのである。


 壱:「崖から飛び降りるとき、自然と羽は生えてくる」

これは以前もお話した言葉である。「危険」の場所を「崖」と例え、「羽」は周りのサポートを例えている。しっかりとした志を持ち、危険な場所へ飛び込むと、その志を応援してくれる誰かが必ずサポートをしてくれる。

 そう考えれば、チャレンジすることにチャレンジできるのではないだろうか

 壱:「撤退やダウンは時に必要」「高くジャンプしたければ低くかがめ」

様々な事情で、やむお得ず足踏み状態や後退することが人生にはある。

 しかし、次のステージで大きく伸びるためには、そのダウンを認め、そこから来る学びや気づき、発見を力に、ハングリー精神を養い大きな成功を生むことができる。

 
 壱:「自分自身がやれそうもないことは己に、やれることは他者に与えよう。それが己と相手の成長に繋がる」

仕事、そして人生の中には多くの課題がある。その中で自分自身にとって達成の困難なものは自分に与え、自分自身で達成が容易なものは部下に振る。そうすることで、自分と部下、両者の成長が生まれるのである。

以上を挙げてみた。

 これらの言霊を、BD・BTセミナー等に取り入れることによって、より社員たちの意識のレベルアップを図ることができたと思う。

 例えばこんな経験はないだろうか。

 体や意識の中では、多くのメッセージを外に伝えたいと思っているのに、その思いに適する言葉が見つからない−。

 自分の気持ちを表現するのに的確な言葉が思い浮かばないというのはなんとももどかしいものである。

 しかし、自分の生き方や気持ちを的確に表現できる言葉やフレーズがあれば、目の前の霧が晴れたかのように、すっきりする。

 言葉には本当に不思議な魔力がある。

 コミュニケーションの代表とも言われるツールなのだから当然とも言えるだろうが、言葉を上手に使える人間は、人生でも成功を収めることができるのだろう。

 また、「言霊」とは、まず、他者に対するコミュニケーションではなく、自分自身とどう対話し、どう前に進むかの道標であることを付け加えておきたい。

 道標が見えていない者が言葉に魂を吹き込むことなどできない。

 そんな「言葉」は「言霊」ではなく「方便」に過ぎない。

 魂を吹き込んでやっと、その言葉は他人にパワーやエネルギーを与える「言霊」となって、飛び出していくのだ。

 BD・BTセミナーを終えて、社員たちはこう語っている。

 「できるか、どうかではなく、やるかやらないか」

 「ブレイクダウンは、ブレイクスルーの出発」

 「やれる仕事は部下にまわし、新たなことにチャレンジする」
 
 さらにこんな面白い感想まであった。

 「ブレイクスルーのためには“装置”が必要なのだということに目を開かされた」

 この社員が言う「装置」とは、まさに「言霊」のことだ。

 例えば、先にあげた「ブレイクダウンはブレイクスルーの出発」という言葉にその社員の魂が吹き込まれれば、それは立派なブレイクスルーの装置となるのである。

 すなわち「ブレイクダウン=装置」、これを自身の言霊として、前進すれば、ブレイクダウンは大きな肥料となって、その社員のブレイクスルーの実りを助けることだろう。
 
 本来、言葉とはただのコミュニケーションツール。

 そして、そのツールを駆使するのは人間。

 同じ言葉を日々用い、コミュニケーションに役立てるのであれば、ただのツールとしてではなく、自分の言葉に魂を吹き込んでみたいものだ。

 魂が吹き込まれた言葉は、聞いたものの魂に届くはず。そしてそれは説得力と魅力あるパワーとなって大きな訴求効果を生むだろう。

 いいにしろ、悪いにしろ、コミュニケーションがなければ我々の日常は成り立たない。

  自分が発した言葉で誰かが傷ついた時、自分もまた傷つく。

  そして、自分が発した言葉で、誰かを勇気づけることができれば、また自分も結果的に勇気をもらえるのである。

 人は仕事を通して大きく成長する。

 企業という組織の中にいる以上、人との繋がりなくしての仕事などあり得ない。

 そして、人との繋がりをつくるコミュニケーションを大切にしてこそ、成長があり、発展、前進がある。

 まずは、言葉に魂を、そして、その魂を伝えたい相手に届けよう。

 そうすれば、多くを語らずとも、相手にその思いは伝わるのである。

 要するに「魂を吹き込み、言葉の質を磨く」−。

 これが、成功への道標、言霊なのである。
 

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