2009.12.01   

第35話:自分史セミナー その1   

今回は前回に引き続き、自分史の作り方についてお話したい。

弊社における社員研修の一環として自分史を取り入れる目的は、社員ひとり、ひとりが顧客との相互理解を深め信頼関係を築くことで、我々の理念やメソッドに共感し、支援してくれる生涯顧客の創出を図ることにある。

そして相互理解を深め、信頼関係を築くのにもっとも効果があるのは自己開示であることは33話でお話したとおりである。

では、具体的に例を挙げてみよう−。

ここに教育書を売る、AさんとBさん、ふたりのセールスレディがいる。

みなさんはどちらのセールスレディにより親近感を抱き、信頼を寄せるだろうか?

Aさんのセールストーク:
 
 弊社の絵本は、○○出版をはじめとする定評ある出版社のものに弊社オリジナル作家陣が執筆したものに加え、シリーズ化したもので、幼児期の子どもの発達に合わせた素晴らしい作品群です。ぜひ、お勧めします。

Bさんのセールストーク:

私にも5歳になる娘がいるんですが、私(母親)が外に出ているために読み聞かせの機会がなくて、このままでは本嫌いになるのではないかと心配でした。

でもこの本を与えると、こちらが開くまでもなく、喜んで自ら読み始めるのです。
 そんなわけで、この本を少しでも多く仕事を持つお母さんにご紹介させていただいているのです。

Aさんの場合はあきらかに教示であり、理屈を並べながら説得を試みている。

逆にBさんの場合は、自分がよかったと思う価値ある商品を知ってもらうことで、価値観の共有を試みていると相手はとるのではないだろうか。

その言葉の中には、絵本を売ることよりも、同じ母親としての母性愛、優しさなどが込められている。

以上を見れば一目瞭然、Bさんの方が、顧客との理解を深め、信頼関係を得ることができるのは明らかだ。

このようにパーソナリティを拡大し、人間的魅力を増すために必要なのが、自分史(過去の原体験の発見⇒認識⇒昇華)なのである。

では、自分史をどう作成していけばいいのか、以下、絶対に避けるべき三つのポイントを挙げておきたい。

 

以上を念頭に置いた上で今度は以下の三つの手順で、自分史のラフ案を作成してみる。

 

そして、自分史を作る中で最もやっかいな作業がこの原体験へのアクセスだ。

なぜなら、原体験は心の根底に眠っているトラウマであることが多く、普段、記憶の表面上に姿を現さないからである。

これが前回も少しだけ触れたインナーチャイルド(傷ついた自分)へのアクセスである。

人は誰でも、絶対に受け入れられない、または絶対に他人に触れられたくない「特定」のコマンドがある。

例えば、徹底的に「家庭環境」に恵まれなかった生い立ちを持つ男がいたとする。

普段はとても温厚で、平和主義、会社内でも誰とでもそつなく接することができるのに、同僚が自分の家族の話や子どもの話をすると、とたんに嫌な顔をして会話から離れてしまったり、激怒して人が変ったような振る舞いをする。

これは「家族」という言葉がコマンドとなって彼のインナーチャイルド(子ども時代のトラウマ)に触れた証拠である。

彼にとって「家族」や「家庭」という言葉は悪のコマンドであり、そのコマンドに無意識のうちに反応し、ある「特定(この場合は家族・家庭)」のことに対し、徹底的に拒絶してしまうのである。

もちろん本人の中にはそれがトラウマになっているという自覚はまったくない。

逆に、自分こそが温かい家庭を欲し、それを最も願っている人間なのに、意思に反して拒絶してしまう自分がいることに戸惑うことだろう。

その戸惑いを拭い去るには、インナーチャイルドへのアクセスしかない。

そのトラウマが何であるのかを自覚することから始めないと、自分の真のパーソナリティは見えてこないのである。

インナーチャイルドは、環境の変化や対人関係などにおける重大な出来事が、情緒、思考を固定する6歳くらいまでに起こることで根付くと言われている。

また悲しいことに根付いてしまった記憶は完全に消すことはできない。

が、これらにアクセスし、自分のインナーチャイルドが何であるかを自覚することで、理性的な対応ができるようになるのだとしたらどうだろう。

まずは、自分を客観的に観察してみよう。

そして、自分の感情を自覚した上で、自分の道を選択しよう。

そのトラウマによる人生の失敗をさけるために、トラウマの出来事を明確化させ、他人のせいで、こんな自分になってしまったという被害者意識をまず捨てて、トラウマと向き合うことが不可欠なのである。
 
 結論として、インナーチャイルド(2歳から6歳までの自分)にアクセスすることは、潜在意識を認識し、自分の人生に責任を取り、自分次第の自分で将来を生きるための最初のパスポートだと言える。

これが、私が考える、「ゴール」としての自分史ではなく「スタートラインの明確化」を主旨とした「自分史」なのだ。

* 次回も自分史セミナーについてお話します。



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