2011.07.12   

56話:就職塾事業(プロローグ)

今年3月11日、東日本は誰もが想像さえしなかった大災害に見舞われた。

未曾有の大津波に襲われ、多くの尊い命が奪われたのである。

この災害を受けて、弊社でも、民間教育機関としての使命と責務を深く自覚し、被災された子どもたちの「未来」を物心両面において長期的に支援させていただくことを決めている。具体的な支援としては、4月以降に転居され、当グループ商品の通常授業を受講する場合の入会金免除(割引制度)や被災されたお子様を支援するための募金活動の実施。
 
 また、飲料水2リットルボトル12本入りを150箱、子ども用マスク10万枚、携帯カイロ1,200個を緊急支援物資として発送させていただいた。

この大災害を受けて、被災した方々に何ができるかを考え、実行に移すことは非常に大切なことである。

しかしながら、こういった支援も含め、よりよい社会貢献をするためには、今回のような特殊な支援だけに目を向けるのではなく、普遍的な支援をどう行っていくかを考えるべきだろう。

例えば、いかに弊社で被災者の方々を支援したいと願っても、そこには限界がある。

では、限界なき理想的な支援や社会貢献をしていくために我々は何をしていけばいいのか―。私が目指すのは一過性のものではなく、普遍的な社会貢献なのである。

その答が「人の役に立ち、社会貢献できる人づくり」だ。

社会貢献をする人間が多く世の中に創出されれば、今回のような災害時にも当然支援の輪も広がる。

この「人づくり」は弊社が創立された時からずっと掲げてきた観点であるが、求められる人材はここ十数年で大きく変化している。その変化についていけず、日本の若者は就職難という大津波の中でもがき苦しんでいるのが現状だ。

ある日本を代表する大手メーカーで新卒者の日本人採用の割合は5分の1にも満たないという。

この事実に、某有名私立大学の教授は、このメーカーの人事責任者に「もっと日本の大学生を採用してください」と申し出た。

すると人事責任者からはこんな答が返ってきたと言う。

「採用したいと思える人材を育成してくださいませんか」

この話からもわかるように、今の大学生の質は、企業が求める質と大きなギャップがあることが見て取れる。

これからの日本の若者は世界の若者と戦わなければならない。このギャップを埋めるためには世界と戦える人間を創らなければならないのである。

一昔前、受験のハードルは高かった。しかし、そのハードルを飛び越えれば、大学卒業後はそれなりのいい企業に就職できた。

ところが今、そのハードルは「大学入試<就職活動」と大きく逆転してしまった。

 このような現実を受け、世界の若者と戦える人づくり、長い目で世の中の役に立ち、社会に貢献できる人づくりを弊社で具体的に行うべきと私は考えるようになった。

そこで数年前から始めたのがエデュバイトプロジェクトである。

これは弊社の就職事業部の一環として位置づけされたもので、現在、アルバイトのコーチ(講師)として雇われている大学生を対象にしたプログラムである。

今回はその流れをご紹介しよう。

まず、コーチとして弊社で働いている大学生に「エデュバイト生」としてアルバイトをするか、「アルバイト生」としてアルバイトをするかを選択してもらう。

このふたつの違いは以下である。

エデュバイト生とは ⇒ 
 将来、官民問わず就職を希望し、現在のコーチとしての教科指導に加え、教室経営にも参画し、就職活動に勝てる実践力を養いたいと願う大学生

アルバイト生とは⇒
 決められた単価により時間で働き、教科指導を中心に教室長の指導の元、指示に従って働く大学生

このように大学生自ら選択をしてもらい、エデュバイトを選んだ大学生には、アルバイ料の10%をポイントとして付加し、このポイントをエデュバイト生用に作られた就職塾(セミナー)等の料金に利用できる仕組みとした。

結果、このご時世の影響もあってか、90%以上の学生がアルバイトではなくエデュバイトを選んでいる。

では具体的にエデュバイト生はどのようなことを行うのか。

エデュバイトのプログラムは、「オン・ザ・ジョブ」と「オフ・ザ・ジョブ」のふたつに分けられる。

「オン」は現在自分がコーチとして仕事をしている教室で、今までの業務に加え、教室の課題を発見し解決するインターンシップのこと。「オフ」は、就職塾をはじめとするセミナープログラムだ。

「オン=実践力」と「オフ=自己分析」の両輪で優秀な学生を育成し、社会価値の提供を試みようという取り組みである。

これは学生にとっても弊社にとっても大いにメリットがある。

なぜなら彼らが主体となって教室の課題を発見し、解決してくれればそれは繁盛店の創出に繋がる。これは弊社にとっての大きなメリットとなる。そして、彼らが解決したことで会社が伸びれば、それは会社に貢献した「戦力となる人財」だと高い評価がされ、学生の就活プレゼンテーションの大きなインセンティブに繋がる。

こうして、エデュバイト生はますますやる気を出し、次々と意欲的に課題に取り組むことができるわけだ。

大切なのは、誰かに言われて動くのではなく、大学生であるコーチたち主体で取り組ませることだ。

例えば、ある教室の課題=塾生の数の増加であったとする。

この課題をエデュバイト生に解決させるわけだが、そのためにはまず教室の「現状」を彼ら自身が把握しなければならない。

現状把握ができたら、どのような結果に導けば「理想」に繋がるのか「目標」を掲げる。そして理想と現状の「ギャップ」を見つめることで、「課題を明確化」し「変革」に進むという一連の流れを学生に認識させ具体的に行動させるのである。

しかし、このエデュバイトプロジェクトを開始して、私自身もやるべき課題に向き合った。

1つの教室の課題を明確化すれば、それは17エリアの教室の課題へと繋がり、エリアの課題は5地区の本部の課題へと繋がっていく。

そして地区本部の課題は、成基コミュニティという会社全体の課題へと繋がっていくはずだ。

ならば、このプロジェクトを成功させるためには、大本となる弊社がしっかりと「現状把握」され、企業全体としての「課題」を見つけ「変革」していくことが必要だと私は感じた。

そこでこの春、私はそのすべてを今一度、明確化させるため、「組織プロフィール」を作成することにした。

ここには「グループの概要」「組織が目指す理想的な姿」「顧客認識」「競合認識」「経営資源認識」「変革認識」「組織情報」が簡潔に纏められている。

この組織プロフィールの作成により、地区の課題はより一層明確となり、地区の課題が明確になれば、エリアの課題が、そして、一教室の課題が非常に明確となって、一エデュバイト生の道標となってくれると考えたからだ。

当たり前のことであるが、組織というのはピラミッド式に構成されている。

ピラミッドを支える下の課題は、ピラミッドの頭の課題でもある。

自主的にと言ってもここは会社だ。ピラミッドの頭が道標を示さなければ、どう自主的に動けば、企業で求められる変革ができるのか答えが出ないのは当然だ。それが大学生であるエデュバイト生ならなおさらだろう。

私は、そのために組織プロフィールの作成に踏み切った。

そして、将来、私はこのエデュバイト生からの弊社における新卒採用を80%にまで延ばしたいと考えている。

学生でありながら戦力としてすでに働いている人財であれば、即戦力に繋がる。新たに人を育成するコストも削減できる。より実力のある大学生を間違いなく選ぶことができる。

これからの時代、企業が最も欲しがっているのは、学業等の成績優秀な人間ではない。求められているのはコミュニケーション能力に優れ、問題解決能力(人間力)のある学生さん達なのである。

*次回から具体的な就職塾事業のお話に入ります。


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