2011.08.29
前回は成基コミュニティグループで行われている就職塾事業への取り組み全般についてお話させていただいた。
今回はその中のひとつ、エデュバイトプロジェクトについて詳しくお話させていただこうと思う。前回もご説明したが、エデュバイト生とは、単なるアルバイト生ではなく、教科指導に加え、教室経営にも参画し、実践力を養いたいと願う特別アルバイト生を意味します。
このプロジェクトは現在コーチ(弊社塾の講師)として働いている大学生たちが、主体的に自分が働いている教室での課題を見つけ、その課題を自らの知恵と力で問題解決に導くという取り組みである。
学生であるこの時期から、積極的に問題解決に向き合うことで、就職のみならず、人生の中で必要となってくる「コミュニケーション能力」「問題解決能力」を、実践を通して身につけることを狙っている。すなわち、第一希望就職先への内定獲得をはじめ、社会において有用な人財として活躍していこうというわけだ。
このプロジェクトでは実社会で行われている仕組みを大学生のコーチたちが実践を通して体験することとなる。つまり、この体験をして得る「苦労・努力・困難克服・結果創出」のプロセスを通して彼らは成長し「人の役に立つ」優秀な人財としての基本を身につけることができるのである。
またこのプロジェクトで期待できる成果はそれだけではない。
弊社社員とエデュバイト生が協力し合いながら、各教室がかかえる課題を解決することで、このプロジェクトは、弊社繁盛店の創出にも大きく繋がるのである。
さて、エデュバイトプロジェクト実施のルールについてであるが、まず、このプロジェクトは、1名のリーダーと3名以上のエデュバイトメンバー計4名以上10名以下をひとチームとし、チーム名をつける。
プロジェクトの期間は、4月から9月までを前期、10月から3月が後期で1プロジェクトにつき原則半年とする。プロジェクトチーム数に制限はない。
プロジェクト期間中のメンバーの増減は可能だが、リーダーの交代は認めらない。
プロジェクトの内容は運営部門(教室経営に関する業績向上や、顧客満足度アップの向上に貢献するもの)、教務部門(成績や合格実績向上に貢献するもの)、その他部門(前述どちらにも属さないもの)の3部門で、各チームは、そのどれかにエントリーする。
現在のエントリー数は全教室で約120チーム。平均メンバー数はひとチーム8名だ。
では、ここで、実際にエントリーしたひとつのチームで、チーム名「ドリームサポーターズ」の実施プロジェクトを詳しくご紹介しよう。
ドリームサポーターズのプロジェクトタイトルは、「夢実現プロジェクト―ひとりひとりの夢が見つかる教室へ―」。
メンバーはリーダーのM君を含む6名のチーム(うち5人が阪大生)でドリームサポーターズは教室経営の向上を目指した運営部門にエントリーした。
まずは自分たちがコーチとして働いているI教室の現状分析のため、M君たちは I 教室の塾生数、売上、合格実績、そして、顧客アンケートを整理し、教室の組織プロフィールを作成した。
自分たちでわかりやすくまとめることで、改めて自分たちのいる教室のことが明確になり、M君たちは I 教室に親近感を感じ、教室全体のことを真剣に考えてみたくなったという。
そして次に、顧客(保護者)アンケートを整理したところ「進路指導と学校情報の提供が充実」という項目の満足度が全教室平均と比べるとかなり低いということがわかった(全教室平均に比べマイナス13.5%)
「なんでや?ぼくらの教室は進路指導がへたくそいうことか?」
「なんでや?」の理由を見つけるために、次にM君たちはI教室に通う塾生の問題点、そして自分たちコーチの対応を客観的に分析することにした。
(以下分析結果)
(1) I 教室の塾生は、自信を持って自分の夢を追っている子が少ない
(2) I 教室のコーチ(自分たち)は自身のプレゼン能力に不安があり、入試情報を正確に保護者や塾生に伝える能力が十分に備わっていない
(3)I教室の塾生は「人生の成功(夢の実現)=ゴール」ではなく「受験に合格=ゴール」と定めている塾生が多い
(4) I 塾生とコーチ(自分たち)の関係は良好だが、コーチ(自分たち)は I 教室に対するロイヤリティが低い
全体をまとめると、保護者も塾生の目標も受験合格で終わっており、将来的な夢への実現につながっていないこと、また自分たちコーチもそれに甘んじていたため、顧客満足度が下がり、教室が募集目標としている塾生数に届いていないことが明確化した。
M君たちはこれらの問題点を踏まえ、プロジェクトの目的を明らかにすることにした。
プレゼン能力に不安があったために中途半端になっていた、進路指導と学校情報を充実させること。そして、紹介者による募集を増やし、生徒数が伸びる教室にし、各種業績数値をアップさせると決めたのである。
「まずは、顧客アンケートで全教室平均より劣っている“進路指導・学校情報が充実している”のアップを目指そう!これは現状対比で17%増を目標と定める!」
「顧客の満足度が上がれば、ええ塾やってことで、当然、知り合いのお母さんに紹介してもらえるな。じゃあ、お友達紹介数もアップを目指す。現状が7件やから10件で3件増と設定」
「お友達紹介数のアップを見込むんやたら、退園する塾生を減らすこともできるやろ。保護者の満足度が高まれば、辞める理由もなくなるんやから・・・」
「そうやな!現状の退会者数は・・・?何名や」
教室の組織プロフィールを見ながら、メンバーが言った。
「現状10名」
「じゃあ、こっちも3名減を目指す!」
「ということは、お友達紹介でプラス3、退会がマイナス3やから、結果的には6名増えるってことになるな」
「そういうこと!ところで・・・、毎年広告とかで入園してくる塾生って何名?」
再び、メンバーのひとりが組織プロフィールに目を落として「うちの教室は昨年4名やったよ」と言った。
「ほな、これは例年通り4名増えると見込めるから、6足す4でプロジェクト期間中に教室の塾生をプラス10名にすると目標を設定しよう!広告で入園する4名の塾生は、広報課の領域やから僕らはノータッチの数字とする。つまり僕らがこのプロジェクトで目指すのは、お友達紹介増と退会減のプラス6名とする!」
このように教室の組織プロフィールで現状を見ながら、みんなで話し合い、具体的に数値化された目標が設定されたら、M君たちは次に、この目標達成を成功させるための道筋を論理的に打ち出した。
まずは現状で見えた顧客アンケート評価の低さをどうアップさせるかであるが、これに対しM君たちは進路指導に関する勉強会をコーチ全員で実施し、月一回、保護者を巻き込んだ進路指導を実行することにした。そうすることで次のような変化が見込まれると考えたのである。
進路指導の綿密な実施 → コーチと保護者の親近感の増加 → 保護者のバックアップが強まることで、塾生の進路や夢に対する意識が高まる → 夢に対する意識が高まれば、受験という目標にとどまらず夢実現を目標とした塾生が増える → 子どもの士気が上がれば保護者の信頼が上がり、顧客アンケート評価もアップする → 保護者のNEEDとWANTSが満たされれば、お友達紹介会員が増え、退会者が減る → 結果的に、会員数は増加し売り上げも増加と論理づけたのである。
教室では、自分たちがチャレンジした運営プロジェクトに関しての目標をこう語っている。
「進路に不安を持っている塾生が多くいる中でI教室は、塾生、保護者との距離を大切にしながらサポートしていき、その結果としての口コミ、紹介が中心で生徒数が増えていく教室を目指していきます。また教室の持つ元気さを大切にしながら、塾生の笑顔があふれる空間を常に提供したいと考えています」
ここまでがエデュバイト生が参加するプロジェクトの実践版(オン・ザ・ジョブ)一連の流れである。
このプロジェクトでエデュバイト生は問題解決能力とコミュニケーション能力を養い、実践に強い人間へと成長していくというわけだ。
また、半年ごとに目標に対しての成果を社内で評価し、優秀な成績を残したチーム(エデュバイトグランプリ)を表彰し、就活支援や資格取得支援補助金など自己の夢を実現させるための賞品を用意している。
評価の対象はまず目標を達成し、課題を解決に導くことができたかどうか。またチームメンバー全員がきちんと課題に関わることができたかどうか、さらに彼らの解決策が他の教室のモデルプランとして有効かどうかということが評価の決め手となる。
このような経験を積むことでエデュバイト生はスキルを身につけ、堂々と第一希望就職先への就活に挑むことができ、さらなる高い目標に向かって頑張ることができることをお理解頂けたと思います。「ドリームサポーターズ」をはじめ、各チームの結果は9月に発表がありますので、またお話させていただきます。
そして、このプロジェクトの各教室の成果はエリア地域の成果へと繋がり、エリア地域の成果は、地区本部やディビジョン本部の業績に繋がっていくのである。