第73話:2012.12.31
2012年10月6日、ホテルグランヴィア京都で行われた弊社創業50周年記念式典は終盤に差し掛かり、私は遂に、その時(成基100年構想の発表)を迎えた。
600名の「証人の目」が一斉に私を見た。
それは確かに、私たちにとって「未来への誓い」の時であった。
「教育は国家百年の計」であるとよく言われる。
現在の子どもたちへの教育の内容によって、数世代後の100年後が規定されるからだ。
つまり、今、いかなる教育理念を持つかということは、どのような100年後の未来を作ろうとしているのかということなのである。
しかし今、子どもたちの未来には地球規模の大きなふたつの問題が立ちふさがっている。
私はそのふたつの問題について言及した。
ひとつは、地球温暖化などの「環境問題」、もうひとつは格差、貧困、紛争の「南北問題」だ。これらに対して、今後私たち人間が、決定的な問題解決方法を持ち得るかどうか・・・。
子どもたちの未来も、地球の未来もそれにかかっているのではないだろうか。
「もう待ったなしである」と私は述べた。
「成基100年構想」は、私たちのそういう視点から出発している。
弊社では毎年、春と秋に、社員総会を開催しているが、2012年4月22日に開催した総会の大きなテーマは、成基100周年(今から50年後)にあたる2062年までに、どんな分野で日本一を成し遂げていたいのか、それを従業員一人ひとりが構想するというものであった。
社員たちは、みな真剣そのものであった。結果、出された構想は3427にも上った。
これらを、私たちのグランドミッションに、照らし合わせて精査し、ゆるぎない目標として結晶化させるために、立候補した36名でプロジェクトチームを作り、構想をより具体化することができた。
こうして私たちが今後10年で実現させることが9つ、30年で実現させることが2つ、そして50年で実現させるひとつの合計20項目が決定し、この式典の場を借りて発表することにしたのである。
まずは、今後10年以内に実現したい9項目
次いで、今後30年以内に実現したい2項目
最後に50年後、成基100周年を迎えるその時に実現したいことは、
「世界中の人々を、幸せにする人材輩出機関 日本一!」
今後地球規模の問題解決なくして、世界中の人々が幸せになることはありえない。
世界中の人々を幸せにしたいという志で、勉強し、働ける人財をどれだけ輩出することができるか。
それを達成するためには、教科教育だけの塾であってはならない。
子どもたちの個々の感性を育て、使命を導き、人間力を培うことができる塾でなければならない。
世界中の人々を幸せにすることは、自分自身を最も幸せにすること−。
私たちの伝えること、成すべきことは、それしかないのである。
教育こそが「真の力」であると信じて、必ずやり抜く覚悟だ。
「ありたい姿(10年後、30年後、50年後)」と、現状のギャップを解決するために、何をどう変え、どう創造していくのか日々考え前に進む。
そして、50周年記念式典という場所で、大勢の方々の前で、この決意を語ることは何を意味しているのか。
「絶対に成し遂げる」という私たちの固く、強い「決意」と「約束」を表しているのである。
600もの証人がいる前で「できませんでした」は通らない。
同時にこの場での100年構想の発表は、私たち自身の士気を最高レベルまで高めるためのものでもあった。
すべてを宣誓した後、私は、最後に弊社のグランドミッションを300名の社員たちと一緒に一斉に唱和した。
私たちの大いなるミッション(使命)は、地球・国家・地域レベルの様々な課題に対して「人づくり」という観点から問題解決を図ることである。そして、自立した人間として、仕事を通して人に喜びや感動を与えられる能力を高め、感性豊かな本物の人間になるため、自ら鍛え上げることである
300名の歯切れのいい声が、バンケットルームに大きく響き渡った。
その決意は、私が今後途中で倒れることがあっても、彼らが必ずやバトンをしっかりと繋いで実現してくれることを物語っていた。
成基コミュニティグループは、これからも子どもたちの人生において「真の成功」を可能にする「成功基地」であり続けよう。
この日、600名の前で全社員がグランドミッションを読み上げた瞬間こそ、次なる50年(より素晴らしい未来への準備)へのスタートを切った瞬間だったのである。
式典の最後、成基コミュニティの代表として謝辞を終えた私の心にご招待させていただいた一人ひとりの顔が思い浮かんだ。
心から感謝の気持ちが溢れて、言葉にならなかった。
今の私の感謝を伝えるには、どんな言葉も事足りなく思えた。
そして、やっと出てきた言葉がやはり、「ありがとう」であった。
その感謝を社員みんなで表すため、この祝賀会では、お客様一人ひとりのために全社員が担当を割り振り、「おもてなしの精神」に徹したサービスを提供せていただいたつもりだった。
この日を笑顔で迎えることが出来て、笑顔でみなに感謝を伝えることが出来て、創業者である父、雅一は、今日の日を天国からどんな思いで見ているのだろう。
「まだまだ努力がたらんぞ、喜一!」
子どもの頃から父にずっと言われ続けてきた「努力」という言葉。
やはり、出てくるのは、その言葉か・・・。
私はひとり想像し、ひとり苦笑いして、式典の最後に父のことを思った。
その父を最後まで支え、父亡き後、私をずっと支え続けてくれた母、梅乃が一番後ろの席で私をじっと見ている。
私は、母の座っている席に歩み寄り、深々と頭を下げて大きな花束をその小さな手に渡した。
「ありがとうございます」
「感謝」というものは、「感謝されること」より「感謝できること」のほうが何倍も人を育て、何倍も人を幸せにしてくれるものだということを、この日、私はあらためて知った気がした。