過去、われわれ人類は生存をかけて、さまざまな戦闘の技術を考案してきました。
以下にざっとその変遷をたどってみました。
これは武道が武術となり、武術が格闘技になり、格闘技が殺人術になっていく過程でもあります。
大きな戦争も特定の人々の小さな執着心から起こったものに違いありません。
心に火花が散ったその時点で、人々の我執の炎を消す皆で術を考えてみましょう。
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戦争の発端・・・それは些細なことでした。
まず、仲の良かったAさんとBさんの間にほんのちょっとした意見の食い違いが起こり、口論となりました。
口論は激化し、お互いを譲ることなく、冷静さを失わせ、それはやがて憎悪に変わり、互いをひたすらののしり合う醜い泥仕合となりました。
・・・すべてはここから始まりました。
- 口論は極まり、口での論争は壁に突き当たりました。言葉は消え掴み合いが始まりました。
- 掴み合いがさらにエスカレートして殴り合いとなりました。
- Aさんは素手での殴り合いでは気がおさまらず、Bさんに対する殺意が生じて刃物を持ち出してきました。
- Aさんが刃物を持ち出してきたので、負けじとBさんは鉄砲を持ち出してきました。
- Aさんは、これはかなわないと思い、味方を集め、軍を結成し大砲を用意しました。
- Bさんは、そう来るならと大砲より威力のあるミサイルを準備しました。
- Aさんは、「それならBの国もろとも地上から消してやる」と核を用意しました。
- Bさんは、「Aが核を使うならこちらも核で対抗する」と一歩も後へ引かず双方のにらみ合いが続きます。
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武術における技の変遷もこれと似たようなものです。
- 「柔術」
人が喧嘩になると、まず相手の胸ぐらなどに掴みかかっていきます。このとき相手を組み伏せる、投げるという技術が要求されます。
- 「空手」
次に掴み合いではおさまらなくなり、相手と少し離れて拳での殴り合いに発展します。人は打撃が加わると火打ち石のごとく心に火花が散り、憎悪の炎がますます大きくなります。
- 「剣術」
人は殴り合いによってさらに頭に血は上り冷静さを欠き殺意へと発展していきます。その時点で生易しい素手での喧嘩は一旦中断され、相手を殺す武器を取り出します。このとき相手との距離はもう手足の届く素手の間合いではなく、互いに武器が介在する距離となっています。
- 「槍」
一歩踏み込めば殺傷力のある剣ですから、出来るだけ相手との間があるほうが自分にとって安全です。相手に傷つけられず相手を殺傷できるものが求められます。そこで相手から数歩の距離を挟んで相手を倒す武器が重宝します。
- 「弓」
そうなると相手もより距離をとって戦える武器を用意します。出来るなら遠く離れて相手を倒す武器は、手に持って直接相手に斬りかかるものではなく、間接的に相手を倒す飛び道具が有利となります。
- 「鉄砲」
素手や刀剣類などではなく、戦いに飛び道具が台頭すると、自分が安全なためにはさらに相手との距離をとる必要があります。弓の届かないほど遠くにいる相手に対しても、高い殺傷力のある武器が考案されます。
- 「大砲」
鉄砲は一度に一人しかしとめることが出来ません。目で確認できないほど遠くから、しかも一発で大勢を倒せる武器が考案されます。
- 「ミサイル」
いくら大砲でも、相手の陣地に接近しなければ撃てません。完全に自分の陣営から移動することなく、敵のいる場所、または相手国に向けて正確に攻撃できる破壊兵器の登場です。
- 「核」
ミサイルによる大規模な攻撃は都市を破壊しその機能を奪います。ここまでされたらもう個人的な恨みなどでは済まされなくなります。今度は特定の人々ではなく、その敵とみなした人々の住む国そのものを消滅させる「核」の登場となります。
発射に際しては、相手の顔を見ることはありませんし、人々の生活の匂いもしません。公園で遊ぶ子供たちの笑顔も見ません。出産で喜ぶ一家の歓声も聞こえません。
ただ密室において計器の調整とボタンを押すだけの淡々とした機械的作業だけです。
そして、攻撃した者たちは命中した相手の国が炎の渦に飲まれ、焼けただれた人々の阿鼻叫喚の叫び声、そして永年残る放射能の後遺症など地獄のような惨状を直接見ることはありません。さしたる罪悪感も感ずることなく破壊できるのです。それはまるでゲームをするように。
柔術→空手→剣→槍→弓→鉄砲→大砲→ミサイル→核・・・人類はその次にいったいどのような殺傷法を開発するのでしょうか。
個人的口論が殴り合いになり、個人的な喧嘩が組織的な喧嘩になり、エスカレートして武器をとっての殺し合いになり、最後は国を相手の破壊行為へとつながっていきます。
人類が救われる道。
それは物への異常な執着心から解放され、人々が空(くう)に至る道を踏み行い宇宙意識とつながらねば他に手段はないのかも知れません。