2014.09.02
第129話 「祓い 〜サウサとウサウ」
- 和合とは力
祓いは、その名のごとくお祓いをすることです。
お祓いのイメージは、例えば溜まったホコリを風を起こして吹き去らせるごとくです。
しかし、ただ、その穢れをどこかへ流し去るというのでなく、汚れそのものの質を変化させることが、本来の祓いではないかと思います。
臭いものに蓋をするようなことではなく、臭いものに化学反応を加えてよい臭いになるものに変えてしまうこと、つまり、負のエネルギーを正のエネルギーに変えてしまうことではないかと思うのです。
悪魔を「消えろ」と、追いやらうのではなく「改めよ」と改心させるのです。
改心とは、元の心に改めることです。
元の心とは、真ん中の心である直霊のことで、これを神心と言います。
神心は、火(霊)と水(体)が一体となった心ということです。
和合という言葉があります。
和とは「○」で、○というのは、始めも終わりもない印です。
言い換えれば「あなたも私もない」ということで、「あなたはわたしであり、わたしはあなたです」ということです。
言霊の法則で言えば「火は水によって動き、水は火によって動く」ということです。
火と水の一体・・・これが和合なのです。
そして、和合とは力です。
力には丸い力と、鋭角な力とがあります。
丸い力は、温かく大きく、そしてやさしく。
鋭角な力は、冷たくて小さく、そして厳しいのです。
当然、神の力とは、この丸い力、すなわち和合を言います。
- 火と水をつなぐ
悪は、心(火)と体(水)のバランスのずれによって生じる現象です。
善とは、心と体のバランスが整っているゆえに生じる現象を言います。
「火と水をつないで丸く納め、そしてともに歩いていく」という祈りをともなった作法が、祓いの型です。
動作の基本は「サウサ(左右左)」「ウサウ(右左右)」の二種類です。
「サウサ」は「火水火」、「ウサウ」は「水火水」ということです。
サウサは内回りの旋回を、ウサウは外回りの旋回を表します。
まず火と水、または水と火を合わせて和合し、そして火または水の方向へ向かいます。
ただ、ばしっと相手の打ちを拒絶して受け飛ばすのはなく、相手の打ちを柔らかく迎え入れていくようにして受け止めるのです。
まるで相手の打ちを抱きしめるかのようです。
そして、抱きしめて後、ともに目的に向かうのです。
サウサであれば、自分と相手の火と水のエネルギーを一致させ、そして火(左)に向くということになります。
- 改心
改心をうながすとは、相手の本陣(心)に侵入して、その根の部分から清めていかなくては本当の改心には至りません。
これはスサノオノミコトやヤマトタケルがつかう手段です。
悪神の城に対し、外から攻め入るのではなく、ふところに静かに侵入して、時間をかけ根本から改心させる方法です。
これはとても勇気と忍耐と技術のいることです。
悪を一気に滅ぼすのは簡単です。
しかし、それはその場しのぎの、先見の明のないやり方と言えます。
力で抑えられた者は、力で報復してきます。それは永遠に耐えることのない泥沼化の始まりとなります。
互いが理解し合い、譲り合い、許し合い、愛し合う…この「合う」ことこそ大事です。
「合う」とは、やはり和を作り出すことです。
サウサ、またはウサウと丁寧に「○」を描いて動く訓練を積むことは、相手を受け入れる訓練でもあります。
まず「○」を描く、これが「75剱」の基本でもあります。
動きを丸く、心を丸く、言葉を丸く…これこそが言霊ツルギが目指すものなのです。
- 稽古方法
構えは、正面に向かって「ウ」の状態。
左方向に祓う場合、まず「左」に剱を振り、次に「右」に剱を振り、正面「ウ」の位置に復して一周します。これで「○」が描けます。
○が描けたら力が生まれたということです。
その「○」の形をキープしたまま「左」に体ごと向きます。
両足は揃えたままで、腰を落として態勢を整えます。
衝撃に耐える態勢です。
丸く動くことは、例えば車のエアバッグのようなものです。
相手の強い打ちに対して、ぶつかる瞬間に「バンッ!」と膨れ上がって体を守るのです。
しかし、○だけでは、本当の力は生まれません。
○の先に在るものへ向かっていく活力こそ神の力です。
「サウサ」「ウサウ」と動くことで螺旋となり、無限へとつながる可能性が生じます。
祓いの動きは「・」「○」、すなわち「スの印」を描くことです。
「○」は慈悲、寛容、友愛という仏の力です。そこに「・」が入ることで、神の力となって強さが加わります。
「○」でゆるめ、「・」でしめるのです。
永遠と瞬間が同時にあり、あなたとわたしが同時にあるということを表します。
さて、剱を祓って受けた時に重要なのが「刃」の向きです。
サウサと受けた時に、刃が相手を向いているか、自分の方を向いているかをコントロールしながら行なってください。
もちろん、祓いの時には、両手は「しのぎ」に入ったままでけっこうです。
この祓いの稽古は、75剱の技の基本となります。
祓って、刃が相手を向いていたなら、打ち返しが「軽の剱」となって打ち上げ、刃が自分の方を向いていたなら「重の剱」となって打ち下ろしとなります。
そして、打ち方は、八剱で行うのですが、一本ではなく、二本を続けて打つ稽古を行なってください。
「凝」を打てば続けて「解」を、「分」を打てば続けて「合」をという風にして。
これは「サウサ」と同様に、言霊の法則である「対照力」を養うためです。