第146話「内に秘めた強さ」2016.3.30
表は柔らかく優雅にして、中は強く地味にあれ。
優しさ、温かさは大切な要素なり。
しかし、それだけでは役に立たぬ。
内に秘める絶対的な強さがなければ闇は切り開けぬ。
仏ではいかぬ。
神とならねばこの世は明けぬ。
すべてを許し受け入れる仏の心は尊い。
されど、魔道の介入を断ち、正義を守る破邪顕正の力、すなわち神ならねば世は改まらぬ。
○
なぜ愚弄されても笑顔でいられるか。
内に驚くべき強さあるゆえなり。
なぜ自分を犠牲にし人に先を譲ることができるのか。
内に驚くべき強さあるゆえなり。
なぜ荒野に一人放り出されても平気でいられるのか。
内に驚くべき強さあるゆえなり。
○
内に鉄柱のごとき固き強さあれ。
外に真綿のごとき柔らかき優しさあれ。
常は慈悲深き女神のごとき容貌なれど、曲津きたれば閻魔のごとき面相に一変し瞬時に敵を叩き潰す。
時には涙してあつく霊を慰め、時には墓石を蹴り倒して死びとを叩き起こす。
右の手には剱を振るい、左の手には聖典を携える。
時にはすべての人を分け隔てなく引き寄せ、時には人を厳しく選り分ける。
懐かしくて愛しくていつまでも側にいたくもあり、時に、怖くて冷たくて近寄りがたい。
○
その者の前では、とてつもなく親しみを覚えるが、放つ光の強さに討たれ、畏れ多くてつい間をとってしまう。
その者の威厳は悪人に言いたいことを言わせず、やりたいことをさせない。
その者は恐るべき力をもって、容赦なく悪人の自由を奪う。その冷淡なること悪人にとりこの上なき恐怖なり。
正義のある時、その者は常に笑顔を絶やさぬ。しかし、正義が消えたとき、その者の笑顔も消え鬼と化す。
その時は鬼を超える。
○
剱は光を現す。
それは闇を断つという意なり。
剱は螺旋なり。
それは鋭角を巻き込む意なり。
剱は神なり。
それは悪魔を退くる意なり。
剱は守りなり。
それは攻めることに長ける意なり。
剱は平和なり。
それは戦を終らせる意なり。
活人剱は殺人刀を超えたところにあるものなり。
これ天国は地獄を超えたところにあるということのゆえなり。
○
われらの内には、永遠に消えざる強き火あり。
われらの外には、流れて止まぬ清き水あり。
スの言霊が示す印をみれば明らかなり。
戦って負けぬ強さ。
戦って負けてやる強さ。
戦わず逃げる強さ。
強さあれ。
強さあれ。
切りあい、叩きあいなどの無謀な力に屈せぬ圧倒的強さあれ。
ひとたび立てば、風雲起こりイカズチ鳴り轟き、大地を揺らすほどの迫力に満てよ。
そうして、同じ相手と二度と立ち合うことなきよう、たった一撃で終らせる、例えようのなき強さをもて。
和良久の剱は戦わぬ剱。戦わぬ剱とは戦いをも制する剱の意なり。