2007/02/19  

第2話 「怒り」からの出発

幼い頃、銭湯の帰り道、夜空を見てはお月さんに「ないないま〜」と言いながら手を合わせる習慣がありました。何か特別な信仰があったわけではなかったのですが、何故だか意味もわからず「ないないま〜」と言っていました。そんな僕は、幼い頃から無意識に、無限に広がる宇宙の神秘に心惹かれていたように思います。

暇があると、星座図鑑を手にし、夜空を見渡し空想を描いていました。星座を名付けた太古の人間たちは夜空を見ては何を想ったのか。手には届かないけど確かに存在している星々が舞う夜空は、人智では計り知れないものがあることをそっと僕に囁いているかのようでした…。

1969年1月20日、僕は大阪の地に降りてきました。母まゆみの産道をくぐり抜け、産声をあげました。川島伸介の誕生です。
 僕は、愛知県の庄屋の流れを汲む父と鹿児島県の武士の流れを汲む母との間に、4人兄弟の3番目として生まれました。そんな家系ではありましたが、特にしきたりなどに厳しいわけでもなく、僕の生まれ育った家庭環境はごくごく平凡なものでした。

 

父・勝治はサラリーマンとして、高度経済成長期の真っ只中、とても忙しく働いていました。僕が朝目覚めると、もう家には居なくて、また、寝るときには父はまだ帰ってきていないような毎日で、日曜日くらいにしか顔を合わすことはありませんでした。

そんな忙しく働いている父の息抜きは、映画と映画音楽でした。日曜日になると、朝から家中に昔の映画音楽が鳴り響いていました。また、映画も一緒にたくさん見ました。「男の生き様はこうだ!」のような映画が好きで、ドラマチックな場面になると、涙もろい父はよく泣いていました。

 

一方、母は誰とでもすぐに仲良くなってしまう愛想の良いおばさんです。困っている人を見るとほっておくことができず、自分は貧乏しても人助けにお金を使ってしまうような人です。そんな母も僕が小学校の高学年になる頃には、仕事に行き始めました。慣れない仕事をひたむきにがんばる母の姿を見て、心苦しくなる時もあり、僕が大人になったら、両親には楽をしてもらおうと、いつも考えていました。

 

仕事をひたむきにがんばる涙もろい父とお節介焼きの母の影響か、遺伝か、僕自身もじっとしていられない性格となっていきました。

 

そんな両親の愛情をいっぱいに受けてぬくぬくと育った僕でしたが、小学校4年生のある時から、乗った乗り物が変わったかのように、今までとはうって変わって現在に至るまで駆け足のような人生となっていきました。

 それは転換期というのか、「志」に目覚めたような瞬間でした。

 小学校4年生のある日、テレビの1コマを見て衝撃を受けたのです。それは連日報道されていた「カンボジア難民」の映像でした。

 その映像を見るたびに心がひどく痛みました。同じ地球で暮らしていながら、飢餓や紛争に巻き込まれている人々が居ること。その姿にひどく心が痛んだのです。

 

毎晩、星空に祈りました。「カンボジアの人たちが死なないように。 ちゃんとご飯が食べられますように」と。

毎晩毎晩、祈りました。何度も何度も祈りました。幼げにも、祈りは必ずや通じると信じていました。

 

そして、ある時、祈っても祈っても変わることのないカンボジアの状況を見て、泣きながら母に言いました。「どうして誰も助けに行かないの?どうして食べ物も分けてあげられないの?僕のご飯は要らないから、カンボジアの人たちに分けて!」と。

 母は言いました。「世の中にはお医者さんに診てもらえない人、ごはんの食べられない人はいっぱいいるんだよ。伸ちゃんが大きくなったら、困った人たちを見たら助けてあげなさい。」と。

 

ちょうど同じ頃、友人の母親が死にました。まともな治療も受けずじまいで死んだと聞きました。

 

悲しみと同時に、「お金がないと命も救えない世の中なのか!」 と、嘆きました。

その頃から、世界観が大きく変わっていきました。

 

「志」に目覚めたのか?生まれて初めて、体の奥から熱いものがこみ上げてきました。怒りのようなもの、挑戦心のようなもの、今まで経験したことのない感情、何だかとても力強いものがこみ上がってきました。

そして、ある決意が僕の中からマグマのように吹き出てきて、母に言いました。

「お医者さんになって、世界中の困っている人たちを助ける!」 と。

僕にとっては、初めて「志」を握り締めた瞬間でした。


 この時から、内から湧き出る夢に向かって生きる人生がスタートするのですが、挫折の連続を経験することとなるのです。

そして、挫折しても挫折してもあきらめられない何かがあると気づきだすのです。

でも、それはまだまだ先のお話です。

お楽しみしておいてくださいね。

 

次回へ続く

 

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