2007/03/05 

2007/03/07修正 

第3話 規格化された教育システム

 

小学校4年生の時見たその映像は、僕の心の奥に鮮烈に刻み込まれました。

 

 痩せ細った身体。絶望の眼差し。

 

 そして戦争。

 

 人が人を殺し、街々を破壊し、人々が飢えていく。

 

 同じ地球上で起こっていることとは感じられませんでした。

 

 

 

 戦争を経験したことの無い僕にとって、戦争は歴史教科書の中での話としての感覚でしかありませんでした。

 

 ところが、テレビを通して、その瞬間にも実際に死に行く人たちがいることを知って、僕は悲しい気持ちになるのと同時に、いてもたってもいられない感情が湧き起こっていました。

 

 それからというもの、マンガや野球など、大好きだったことを全て辞めて、それまでの生活を全て変え、医者を目指して受験勉強だけをするようになったのです。

 初めて夢に向かって行動したのです。そんな夢を持った僕に対して、親は非常に喜んでくれました。そして、父親は一流の医者になるためには一流の大学に行けば良いと教えてくれました。また、そのためには中学校から私学に行く方が良いと教えてくれました。

 

 僕にとって、人生を組み立てる初めての作業です。父のアドバイスで夢に向かっての最初の目標が設定されたのです。

 

一流の大学に行けば、一流のお医者さんになれ、世界中の貧しい人たちを助けることができると考えました。「○○すれば□□になる」という方程式の中、勉強をすればするほど、夢に近づく。勉強さえすれば夢は叶う。勉強だけしていれば良いんだ。そんな風に考えていました。だから、何をおいても勉強するしかないと思い込んでいました。睡眠時間などの生理的現象と小学校に行っている時間以外は受験勉強しかしませんでした。

 

 そんな僕は塾へ行く途中、遊んでいる同級生たちを見ると、とても羨ましく思ったことがしばしばありました。そして、その羨ましさを払底しようと「僕には夢があるんだ。あいつらは勉強していないから、将来、苦労するんだ。今に見とけよ。僕は必ず夢を果たして、幸せに生きるんだ」と言い聞かせて自分を慰めることがありました。

 

 今になって思うと、そういう思いが募れば募るほど、純真な気持ちが穢れていったように感じます。

 

 ともあれ、その甲斐あって、地元大阪の私立中学校へと進学することとなりましたが、そこでも勉強だけの毎日です。特に中学校になってからは、学校内での競争も激しくなり、また、更にハードルの高い有名高校を目指すために有名進学塾にも通いだしていたので、勉強の濃度はより一層濃くなっていきました。

中学校から帰ると塾へ、塾が終わるのが午後11時、その後、帰宅して塾の宿題を午前3時頃までし、それでも追いつかないので、通学途中の電車の中でもトイレの中でも勉強勉強の毎日でした。

 

 勉強といっても、受験勉強ですから、当時は主に暗記です。中3になると、いわゆる赤本(各校の試験問題の傾向と対策)と言われる問題集の丸暗記の日々でした。明けても暮れても暗記ばっかりです。暗記ばかりしているうちに、こんな暗記ばかりしていて、本当にお医者さんになれるのかと、段々と不安になってきました。

 

 そして、その不安は疑惑へとなって行ったのです。

 

 歴史は「いいくに(1192)作ろう鎌倉幕府」のように年号を機械的に暗記、英語も「英語の構文150」を丸暗記、でも話せない。数学は自らがコンピューター化していくように様々な公式や問題のパターンを丸暗記。

 

 暗記 暗記 暗記…

 

 丸暗記ばかりしてて、テクニックばかり覚えて、本当に社会に出た時に役に立つのか?と、ますます疑問を感じるようになり、「暗記ばかりして、いったい何の役に立つんだ!」という憤りが日々募っていきました。

 また、先にも書きましたが、遊べない自分に「今に見ていろよ」みたいな慰めもますます募るばかりでした。

 

 腐っていきそうな自分の心と、小学校4年生の時に志した純真な気持ちとのギャップを強く感じるようになってきたのです。優越感を感じるために勉強しているのではない。人助けをしたいと思って勉強しているのに、意識するのは成績や順位、偏差値ばかり…。

 

 遂には、「なんなんだ〜!!!!!」、「これは本当に勉強なのか〜!!!!!」と、爆発寸前でした!

 

今から思うと、単にノイローゼだったのかもしれません。(笑)

 

 

 当時、何かのテレビを見て、左脳と右脳の働きの違いを知った直後のこと、こんな創造力も養われない受け身な詰め込み主義の受験勉強ばかりさせられていて、この受験システムそのものに欠陥か、もしくは何者かの意図があるように感じはじめましたのです。

 

 周りの同級生たちに「夢」について聞いても、「そんなの考えたことない」という風に答える人がほとんどでした。あったとしても、「有名な大学に行ければ良い」、「給料の多い、もしくはステイタスのある仕事に就ければ良い」というような答だけでした。

 

 何か腑に落ちませんでした。

 

 「車掌さんになりたい」とか「花屋さんになりたい」など、漠然とはしていても、多くの人たちが幼い頃からそれぞれの夢があったはずなのに中学生になると、夢がどんどん消えていくことは、受験勉強や学校教育の影響ではないかと考えました。

 

 また、そういった夢や目的意識があるわけでもないのに、中学校を出たら高校へ、高校を出たら大学へと、大学を出たら就職だと、決められたかのようにみんなと同じような人生を生きる人々が多い世の中は、誰かの都合のイイように回っているんじゃないかと、感じ始めたのです。

 

 通学中、満員電車の中で見かける疲れ切ったサラリーマンを見ていると、「この人たちは望むべき人生を生きているのか?」と疑問を感じました。

 そういう大人たちを見ていて、まるで、ベルトコンベアに乗せられた規格化された大量生産品のように、均一化した労働力確保のための日本の教育なのではないかと感じたのです。

でも僕は、「疲れ切った大人にはなりたくない」、「ベルトコンベアには乗りたくない」と強く感じ始めていました。

 

物事は極めて行けば行くほど、それまで見えなかったことが見えてくるように、中3の夏、僕は受験勉強も含め、日本の学校教育は何らかの目的を持って意図的に誰かがこのシステムを作っていると直感で感じました。そして、その直感は、確信へと変わっていくのです…。

 

それからというもの、そのことを考え始めると、気になって気になって、勉強に身が入らなくなりました。

「自分もベルトコンベアに乗せられているかもしれない」と考えはじめ、気になって仕方が無いので調べ出したのです。

 

 教育委員会、文部省、そして文部大臣が受験システムや教育システムを作っているのかもしれない。でも、 文部大臣より偉い総理大臣が指示を出しているかもしれない…。

 当初はいろんな憶測が飛び出しました。

 

 そして、ある時、ふと思ったのです。総理大臣よりもっと力のある人がいるのではないかと。それで、日本の総理大臣より力のある人はいるのかと考え、それとほぼ同時に、アメリカの大統領のことも考え始めたのです。

 時間を割いては本屋に行き、中学生の近寄りそうにもないコーナーで、無我夢中になって本棚を物色していました。

 

 すると、ある日、ある言葉にぶち当たったのです。

 

 

 「秘密結社」 。

 

 

僕の中で何かが弾けました。と同時に、妙に納得できるものがありました。

 

 というのも、株をしていたわけではないのですが、小学校6年生の頃より、しばしば父親の枕元にあった「会社四季報」に目を通していて、あることに気づいていたのです。大企業の株主を見ると大銀行や保険会社などが名を連ねていて、ほとんどの場合、その会社の社長が株主でないことに気づいたのです。

 それに気づく前までは、社長が会社で一番偉い人と思っていたのですが、必ずしもそうではないことに気づきました。また、筆頭株主である銀行や保険会社の株主を見ても、他の会社と同じように、グループ会社などまた別の会社の名前が連なっているのが当時はとても不思議に思えました。会社が会社の株主で、その会社の株主も会社でと、会社は誰のものなのかと、漠然とした疑問がありました。

 

 疑問を持ったまま中学校になった時、通いだした塾の塾長がホワイトボードに「金」と一言書いて、「おまえたちは金のためにがんばってるんだ。世の中は金なんだ。金があるヤツが勝つ」と僕たちにお金の話をよくしていました。

それを聞いていて、漠然とですが、会社というのは誰のものでもなく、実はお金が支配しているのかもしれない。すなわち、お金を作ってるところが支配しているのかもしれないと思っていたのと、この見つけた言葉が符号したのです。

 

 「秘密結社」について書かれていたその本には、お金のことはもちろん、世界の仕組みのこと、戦争のこと、歴史のことなどが書いてありました。僕は食い入る様に読みました…。

 

 

 中学3年生の夏、僕はその言葉を見つけ、今まで知らなかった世界が見えないところに横たわっていることをヒシヒシと感じました。

 

 知ってはいけないものの入り口に差し掛かったように感じたのでした。

 

 

 勉強以外の全てを捨て、医者を目指して5年間勉強し続けてきた僕の転機が近づいてきたような感じでした…。

 

 次回に続く。

 

ホント、転機と天気はわからないものです。(笑)

これまでとは180度変わる高校時代をお楽しみに!

 

次回へ続く

 

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