2009.01.12   

第21話  より人に役立つ仕事をするには  その2

前話において、将来リーダーとなる志ある若き方たちに、「より人に役立つ仕事をする」ための4つのポイントをあげ、前半の2つのポイントについて話しました。今回は前話に引き続き、後半の2つのポイントについて話していきます。

 「より人に役立つ仕事をするには」の3つ目は、

3. 将来の具体的なイメージをもつこと。

日々仕事をする中で、様々な仕事が次から次に出てきます。今の医療現場では手術はもちろんですが、検査ひとつするにしても患者さんにしっかりと説明をして、「同意書」を得る必要があります。これもとても大事なことですが、こういった仕事は、私が研修医だった20数年前とは比べ物にならないくらい増えており、医師のデスクワークに割かれる時間が益々増えています。その一方で、診療時間は限られており、実際に医師が患者さんを診察する時間が、さらに減ってきているのが現状です。

日々の業務に対処しているだけで一日はあっという間に終わってしまいます。またルーチンワークを消化しているだけでは、毎日がただの繰り返しになってしまいます。今の自分が、まるで津波やさざ波のように押し寄せてくる仕事に、日々右や左に揺られている行き先のない大海の中の小船のような存在になっていないでしょうか? 

仕事にも「羅針盤」が必要です。羅針盤とは「将来の自分の姿」です。自分は、今の仕事を専門として、誰に、どういうかたちで仕事を提供できるようにしたいのか?それとも今の仕事は次なる仕事へのステップであり、他の仕事を専門にしたいのか?将来の自分のありたいイメージである「羅針盤」は、明確で具体的であることが大事です。たとえ嵐が来て難破しそうになることがあったとしても、「羅針盤」がより明確で具体的である程、自分の行きたい目的地を見失うことなく突き進むことができます。

今から4年近く前に新潟で勤務医をしていたときに、私は「薬だけに頼るのでなく、自然治癒力を活かした新しい医療を行うために、東京で開業する」と決意し、開業してたくさんの患者さんを癒している姿をイメージしました。実現までの途中様々な障害もありましたが、将来の自分の仕事へのイメージである「羅針盤」が、今現実にこうして渋谷・桜丘で「塚田クリニック」を開業している自分を導いてくれました。

自分には些細とおもわれる仕事であっても、日々目の前の仕事にきちんと取り組むことはとても大事です。と、同時にいつも3年後、10年後といった将来、「自分はこの仕事をどうしたいのか?」と自問して、具体的なイメージを抱いて下さい。それに向けて行動を起こして下さい。私は、「おもいは必ず実現する」と信じています。

そして、「より人に役立つ仕事をするには」の4つ目は、

4. 時間を作ること。

これは、先に述べた3つ目の仕事に対して「将来の具体的イメージをもつこと」との両輪になります。将来自分がなりたいイメージを持つだけでは、自分の「おもい」は実現しません。同時にその実現のための「行動」が不可欠です。今の仕事を進めることが、そのまま将来の自分のイメージの実現に繋がるにしても、また何か資格が必要な仕事に就くために資格取得のための勉強時間を作り出さなくてはいけないにしても、行動のための時間をどうやって作り出していくか?これが問題になってきます。誰にとっても一日は24時間です。そして自分のしたいことをするためのまとまった時間は、日々の仕事の中でなかなか生まれるものではありません。

私が勤務医として働く日常の中で、専門医やファイナンシャルプランナー(CFP_)の資格そして講演準備などの「時間を作る」ポイントは、次の4つでした。

イ. 朝に時間を作る。
ロ. 隙間時間を利用する。
ハ. 優先順位を付ける。
ニ. その日やるべき仕事を列挙する。

もう少し詳しく、時間を作るための4つのポイントを見ていきます。

 イ. 朝に時間を作る。
 仕事が始まってしまうと、日中には突発的なことが起こったり、電話が入ったり、来客があったりと慌しいものです。そんな中、一日の仕事が始まる1時間でも30分でも早く仕事場に着き、自分のための時間を作ることをお勧めします。朝の静けさの中誰にも邪魔されずにまとまった時間が取れて、資格の勉強や、スライドや企画書作りなど、実に集中してできます。またその日の仕事が余裕をもってスタートできます。

ロ. 隙間時間を利用する。
どんなに忙しい仕事であっても5分や10分、ときに30分と、ぽっかり時間が空く
ことがあります。私の場合検査予定の患者さんのキャンセルが出たときや、診療のながれが一時的に途絶えることがあったときなど、そのわずかな時間を使って専門医試験やCFP_試験のための問題集を取り出して勉強したり、講演のためのスライド作りをしたり、その案を練る時間に使いました。

ハ. 優先順位を付ける。
 自分の今の仕事が、期限がある仕事なのか?全体の仕事の中でどの位置にあるのか?
時間的・空間的な優先順位を付けて、行動を割り振ることです。どうしてもやらなくてはいけない重要な仕事とわかっていても、面倒くさく思い、とかくその仕事を後回しにしてしまいがちです。まずは優先順位第1位の重要な仕事に取り組むことです。そうすることで残りの仕事も、「第一優先の仕事をやらなければ」というこころの重石が取れて、スムーズにできます。

ニ. その日やるべき仕事を列挙する。
一日の仕事がスタートする前に、自分がその日なすべきことをメモに列挙しておくこ
とです。こうすることで仕事の効率が上がり、達成感や充実感も味わえます。もし、どうしてもできなければ次の日に持ち越しとなりますが、そういう日もあります。メモで思い出しましたが、仕事でインスピレーションが湧いたら、これもすぐにメモしておきましょう!後で役立ちます。私は講演内容や論文作成にあたってこのメモが役立ちました。

以上が「より人に役立つ仕事をするため」の、私の経験から得た4つのポイントでした。志ある若きリーダーとなる人たちに、少しでも参考になれば幸いです。もちろん私自身もさらにより多くの人に役立てるように、次の新たなる将来へのイメージを抱いて前進しています。

次回は、さらに私の仕事の専門性について、特に放射線科専門医としての肺癌確定診断の技術や、もうひとつの専門資格であるファイナンシャルプランナー(CFP_)についてお話したいと思います。

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