2007/03/19
第15話 仕事を前進させる(2)
聴き方の構えを自在に創る
相手の聴き方と自分の聴き方がわかれば、コミュニケーションの何が問題なのかがわかります。そこで、相手の聴き方の構えを自在に創ることができれば、あなたは極めてシンプルに、ストレートに話すことができます。たとえ耳の痛い話であっても、相手はそれを受け入れ易くなります。
つまり、「どの聴き方で聴いてね」とあらかじめ依頼することで、あなたの意図が相手に伝わり、「聴き方の構え」を創ることができるのです。
「そんなまどろっこしいことできるか」とあなたが思ったら、それは「勇の聴き方」ですよ。また、「この場合にはうまくいかないのでは。もっと他にやり方がある」と分析や評価をしているなら智の聴き方、「出口さん、人の心をもてあそんでいるのでは」などと、嫌な感情がしたら愛の聴き方です。「うんうん、そういう考え方もあるよね」と思ったら、あなたは親の聴き方をしているのです。
もしこの聴き方をあなたが自在に使い分けることができたらどうでしょうか?それがあなた自身の聴き方の構えを創ることになるのです。自分のコミュニケーションの目的や意図を自分自身でつかむことで、それらの問題を事前に、あるいはリアルタイムで解消する聴き方の構えを創ることができるのです。
さあこれまでの聴き方の探求を踏まえ、それをどのように応用すれば良いのか、いつくかの実例をお話ししましょう。
どのように目標を達成するのか
仕事の目標を達成するのは、経営者や部署の責任者にとっては、極めて重要なことです。会社の売上や利益目標を達成できなければ、それは会社や自分の存続に関わる問題であることは、誰でも知っています。
ところがあなたが単純に、目標必達を叫んだとしても、多くの人たちはその悲壮な覚悟や行動についてきてくれないのです。
実際の例を使って話しましょう。あなたの会社で、営業を促進するためのセミナーを企画して、100名を集めようとしています。
●愛の目標
愛の人は、100名という数字には魅力を感じません。たとえ参加者が少数であっても、来てくれた人たちが喜んでくれたら、やってよかったと思うのです。100名という目標が大切なのではなく、中身が大切なのです。
「このセミナーを行うことで、参加者に感動や喜び、気づきがあったり、人生の転機になってもらいたい。そんな素晴らしいセミナーを100名でやりたいのだ。ぜひそんな人に声をかけてほしい」という意味のことを伝えると、愛の聴き方に響くのです。
でもこれは構えを創るにすぎません。最後の「一厘の言葉」が必要です。もしあなたが智の聴き方でここを読んでいるなら、もうその答えは浮かんできていると思います。
「そのために、あなたの力を貸してほしい。あなたに助けてほしい」
もしあなたが「愛」で聴いているなら、私の書いていることに不快な想いをされているかもしれません。人の心を弄ぶ(もてあそぶ)ように聴こえるからです。
私はこれをテクニックとして書いているのではありません。また、あなたがこれをノウハウとして捉えているとしたら、日常で使っても役に立ちません。人は、言葉を超えて伝わってくる相手の意図を捉えているからです。あなたの人生は、そのようなことが見抜けない人たちが住む「甘い」世界ではありません。
●智の目標
「智」の人も数字自体に興味はありません。達成を通して何を得ることができるのか、今後どうなるのかということが大切なのです。目標を達成することで、自分の未来が見えればやりたくなります。
このセミナーに人を集めることを通して、「コミュニケーション能力が高まる」、「人の埋もれた才能や可能性を見出すことができる」「営業ツールを作ることができる」といったことが明確になるのなら、やりたくなるのです。
智の人は、マイペースで自分の興味を探求しています。さらに、人生で「真理」を求めています。何か新しい情報、発見や洞察のある人生を送りたいのです。
●親の目標
「親」の人は、皆のために役に立ちたい、貢献したいと思っています。そのために自分の役割が見えないとやる気が起きないのです。
「全体の目標は100人だ。人数は10人しかいない。皆の目標を達成するために、10人ずつやって、役割を果たしてほしい」という意味のことが伝われば、親にとって目標は達成するべきものになります。さらにやり方まで段取りできれば、もっと着実に前進できます。
全体像を示し、その中で自分がやるべき役割が明確になれば、親はその目標を達成しようと思うのです。
●勇の目標
目標数字は、勇のためにあると言って過言ではありません。「100名を我々は必達しなければならない。それができなかったら、明日は無い。目標は達成しなければならない。先頭に立ってやるのは君しかいない。礎になってやってほしい」 このようなストレートで熱のある言葉で十分なのです。
勇の人生は、「達成」「前進」という器の中で起きています。したがって頼もしい存在ではありますが、愛、親、智の人たちがそれぞれの役割を果たす環境が無ければ、決して目標は達成されません。愛の人が作り出す感動、智の人たちのアイデアや情報、物事を着々と進める親の段取りがあってこそ、一つの物事がなっていくのです。