2007/05/21
第20話 どのように会議を進めるのか
お互いに気持ち良く、生産的に仕事をするために、どのように話し合いや会議を運営したらよいのでしょうか。典型的な例でお話しましょう。かつて会議の席で、勇の聴き方の強い私が、「智」の人によく腹を立てたことがありました。
少し脱線しますが、「勇」に関して、「腹を立てた」「邪魔された」とか、この本で同じような例ばかりを出していることをあなたはどう感じていますか。あなたは私に「バカ扱いされている」とか「甘く見られている」とか思いますか?思ったならあなたは「智の聴き方」をしています。
なぜ私がこの話を敢えて何度もするかと言うと、「勇」はこれに尽きるからです。自分でも本当に単純だと思いますが、「勇」はとにかく前進したいという一心なのです。あなたが「勇」の聴き方が弱いなら、これをぜひ受け取ってください。また、世の中の管理職には「勇」が多いですから、上司を理解し助けることができ、相互の信頼関係が生まれてきます。
それでは、「腹が立った」話に戻りましょう。
それは、私がある計画を「実行に移したい」と言ったときのことです。すると首をかしげながら不満そうな顔をして、「もっと考えてから。慎重にするべきです」というのです。
このようなとき、私は、自分のやりたいことが邪魔されているように聴こえてしまうのです。「やってみないで初めから結果がどうしてわかる。理屈ばかり言うな」と、思わず机を拳でドンと叩いてしまいました。
「愛」の人たちは、「やらせてあげたい」と思うか、「どうして自分に事前に話してくれなかったのか」と思います。親の聴き方の強い人たちは、様子見をして大勢に合せるという図式になってしまうのです。
そうすると「智」の人たちは黙ってしまい、心のなかで「バカだな。何も考えないで無駄なことばかりしている。間違いなく失敗する」と思うのです。そして、軽率でモノを考えないダメな人だと思うのです。
「智」の人は「それは成功するだろうか」と吟味し、「もっと他に効率的なやり方がある」「こうすれば無駄がないのに」と考えながら聴いているのです。「智」の人は、さらには自分の考えを基本的には聴いてもらいたいのです。
これは笑いごとではありません。組織にとっては深刻なことです。
このようなことがわかるまで、私は自分の言ったことに対して、首をかしげられるだけでムカッとして、ときには怒鳴っていたのです。しかし、「智」の人が、自分なりの考えを検討しながら聴いていると気づいたとき、私の会議の場は、明らかに変化したのです。勇親愛智の全ての聴き方で吟味しないと、計画はうまくいくはずはないのです。
このようなとき、「どうしたらうまくやることができるのか、教えてほしい」と「智」の人たちに言うと、喜んで自分の考えを述べてくれます。なぜなら「智」の人は、いつも「こうしたらうまくいく」「モット他にやり方があるはずだ」と分析しながら聴いているからです。「智」の人たちからの意見は、私が達成したいと思っていることに役に立つことになるわけです。
この聴き方を知ったことによって、以前は腹が立っていたことでも、腹が立たなくなってきました。本当に怒る回数が劇的に少なくなっていったのです。
逆に、「智」の人は、「勇」に常に「邪魔をしているのではない」という聴き方の体制を創って話をする必要があります。「私の意見は、目標を達成するために役に立つと思いますので、まず聴いてほしい。さまざまな角度から検討すると、その企画の成功の確率は高まる」という意味の話をするのです。
また、「親」は、はやる「勇」に対しては、「目標達成のために役割を分担することが大切だ」という意味のことを伝えます。
「親」は、場に適切かどうか、皆から浮かないかどうかと心配でなかなか意見がいえないのですが、自分の意見をもっと言うことが、むしろ他の人たちに歓迎されるのです。「親」が自分の意見を話すときは、恐る恐る話しがちで、そのため「親」の話し方は自信がないように聴こえてしまいます。自分が、どのような役割を果たすのかをはっきりと言うことが大切なのです。
例えば、「私はいつも公平であるかに注意を払うようにしています。このプロジェクトで、不満を持つ人が出ないかという視点からチェックしてみます」と言うことで、「勇」や「智」の聴き方の弱い点を補うことができるのです。
「愛」は「勇」に対して、個人的なつながりを強調するのではなく、あなたの志を話し、「あなたしかいない」という意味のことを訴えます。
また、愛の聴き方は情熱的で、しかも好きな人にのみ目が向いてしまいがちです。周りに何が起こっているのか、場を観ることが不得意なので、「勇」と「愛」だけで盛り上がってしまい、場は白けたものになるかもしれません。「愛」の強い人は場の空気を読むことに注意を払いながら、ここぞというときに応援の言葉を発すればよいのです。これは「親」の聴き方を伸ばすことに他ならないのです。
「智」は「勇」に対して、「すぐには理解できない部分があると思います。ここは他の人たちと具体的な実現方法に関して議論してもらいましょう。そうすれば必ずこのプロジェクトは達成できると思います」と、「勇」の前進する意志を尊重することができます。
さらに「智」は、さらなる実現のためのアイデアを出し、「親」からは段取りなどの意見を聴き出し、全員の参加を引き出すことができるのです。
あなたは、もう会議をうまくいかせるセンスがつかめてきたのではないでしょうか。あなたも自分の周りの人たちの聴き方を捉えながら会議をしてほしいと思います。理解というレベルでは、十分にその力はついていますよ。
「愛」と「勇」だけでは盛り上がっただけで現実化しない。そこで「智」と「親」だけでアイデアや計画を練って「親」が取りまとめても、「勇」が働かないなら、誰も責任をとって果敢に実行する人はいません。「愛」も論理だけで進められても応援しないでしょう。
それぞれの人が役割を果たすための実行の構造を創ることが重要なのです。いかにあなたに能力があっても、自分の知識や経験の枠を出ることができません。成功するためには勇親愛智の全てが、場に必要なのです。私たちは「足らない存在」であり、お互いに補い合う関係ができれば、大きな成果を創ることができるでしょう。
また、人は勇親愛智の全ての要素を持っています。もし自分の中にあるそれぞれを、場の状況を観て、適切に出すことができれば、話し合いや会議は大きく前進していくことでしょう。しかもあなたの四つの聴き方を鍛えていけば、これは実現可能なのです。