2007/06/11
第22話 アドバイスはなぜうまくいかないのか
さらに、聴き方の違いがアドバイスに与える影響をみてみましょう。私たちは、さまざまな場面で、アドバイスをしたりされたりしています。そのアドバイスの仕方や受け方にも四つの聴き方を知ることで、大きな違いが出てきます。なぜなら人は、自分の聴き方が造りだす価値観からアドバイスをしているからです。
「勇」の視点からは、まず勇気をもって行動すること、目標持ってやることが大切だといいます。「まずやってみよう」というわけです。また、責任をとることを強調します。
「親」の視点からは、いかに波風を起さずスムーズに運ぶかがアドバイスの焦点になります。根回しや段取りを重視します。また、一気にやらずに「ゆっくりと」とか、「タイミングを見て」というアドバイスをするのです。
「愛」は、人間関係を重視します。まず話を聴いてコミュニケーションをよくとること、相手の職場や家庭環境、気持ちを大切にすることが大切だと言います。
「智」は、相手にいかに分かりやすく、論理的に説明するかをアドバイスします。説明の仕方や解決方法を一生懸命話してくれます。うまくいかないのは、説明不足ややり方が悪いのだと信じているのです。
同じ問題に対して、それぞれの視点から異なるアドバイスをくれるのです。これらのアドバイスは全く違うので聴く側は迷ってしまいます。しかも、それぞれのアドバイスが正しいと信じて、私たちにしてくれるのです。
アドバイスをされる人はというと、自分の聴き方に相性の良いアドバイスを受け入れる傾向にあります。つまり、自分の耳に心地よいものを聴いてしまうのです。
「勇」は、行動をすることや目標の設定の仕方などは聴きやすいし、「愛」のアドバイスである「人の気持ち」や「人間関係」を大切にするというアドバイスも聴きやすいのです。「愛」もまた、「愛」や「勇」のアドバイスを心地よく聴く傾向にあるのです。
また、「智」は、説明の充実や論理展開の重要性に関するアドバイスは聴きやすく、段取りや根回し、ルールや規則の充実といった「親」のアドバイスは聴きやすいのです。「親」もまた、「親」や「智」のアドバイスを心地よく聴く傾向にあるのです。
つまり、私たちは自分の世界からアドバイスをするのです。また、アドバイスをされる側も自分の世界に心地よいものを聴いてしまう傾向があることになります。もし私たちが自分と人の特有の聴き方を知れば、あなたは相手に本当に必要な視点からアドバイスをすることができます。
私たちは特有の聴き方を持ちその世界観から問題を見るので、そこばかりが目に捉えられそれが問題かのように思えてしまうのです。
面白い例をお話しましょう。私は本書の基となる「天命の暗号」(中経出版)の原稿を書いているときに、原稿の段階で多くの友人に読んでもらいました。それらのアドバイスが全く相反するので驚いたのです。
冒頭に私の生い立ちを二ページくらい書いたのですが、「智」の人は、「読者は情報がほしいのであって、作者の生い立ちなど興味ないから、数行にしたほうがいいですよ」といい、「愛」の人は、「出口さん、これじゃあ全然足りませんよ。読者はあなたのことをもっと知りたいのだから、もっと詳しい具体的なエピソードを入れたほうがよい」というのです。
私は「愛」の人にも読んでほしいと思ったので、「智」の人からのアドバイスをたくさん取り入れたものの、この生い立ちに関しては「愛」のアドバイスを取り入れました。
本を読むのもアドバイスを受けたいという動機があると思います。しかし、大部分の本の選択は、本屋の書棚で見たり、新聞や雑誌の書評を見た上で行う訳ですね。最近はネット上にも、沢山の情報がありますから、それも参考にするという具合に、自分が読みたいと思う動機が引き金となって本を選択するわけです。そこに落とし穴があるということを考えて見てください。
そうです、本の筆者も人間ですから、この『四魂』の傾向は当然にあると考えてください。それが、行間に滲みでている訳です。それをぱらぱらとめくり「読みたいな」と思う読者も、ある傾向で判断するということです。本を読むようになってから、ずっとこれでやってきたと思ったら、何か感じませんか。
つまりさまざまな情報を取り入れようとしながら、実はその取り入れ方は自分の世界の見方に心地よいものを選んでしまい、対極をみる機会を狭めているのです。本当の意味で、あなたを大きく発展させるのは対極なのです。
このように、アドバイスを受け入れるときに、あるいはアドバイスをするときにこのことを思い出してください。本を選ぶとき、本の中身を読んで感ずるときなどにも、すべてこの『四魂』の法則が働いていると意識するだけで、貴方の人生は変ってきます。しかも四魂の窓の法則は、あなたの聴き方の順番まで提供できるのです。
このようなことが自在にできれば生産性は上がり、また豊かな人生になるのではないでしょうか。