第17章-1 ガンの特徴と対策 その1
「病気はない」と言われてやたら哲学的なことを説明されても、ほとんどの方はつかみ所がないですよね。また、様々なガン治療の方法があると紹介されても、ほとんどの医師が無視し(無知し?)、相変わらず昔ながらの治療法を続けている現状では、それらの方法が実際の効果があるのか半信半疑なのが本当のところかもしれません。
でも、せっかくここまでガンのことを書きましたから、本章ではまとめの意味も含めて、あまり難しい説明は抜きにして、ガンの特徴を述べてみたいと思います。普通の細胞(いわゆる正常細胞)とガン細胞の違いがはっきりすると、個人でもできるガンの対策が浮かび上がってきそうです。
(1) ガンは砂糖(糖分)が大好物
甘い物好きな方を脅すつもりはあまりないのですが、ガンはエネルギー源を全面的に糖分(ブドウ糖)に頼っています。ガン細胞は、タンパク質を構成するアミノ酸のうち、グルタミン酸だけはブドウ糖に変換できるようですから、グルタミン酸もエネルギー源だと言えるのかもしれません。でも結局、グルタミン酸もブドウ糖に変換しないとエネルギー源にはならないわけですから、やはり直接のエネルギー源はブドウ糖だけだ、と言ってもいいかもしれません。
これに対して普通の細胞は、糖分のほかに、脂肪、脂肪から派生するケトン体、グルタミン酸やグルタミン酸以外のアミノ酸と、エネルギー源がたくさんあります。ですから、糖分とグルタミン酸を完全に断ち切ってしまったら(実現はちょっと無理ですが)、普通の細胞はサバイバルできますが、ガン細胞は虫の息です。
普通の細胞とガン細胞のこの大きな違いは、エネルギー(熱)を生産するミトコンドリアの働きから生じます。ガン細胞では、ミトコンドリアがほとんど、あるいはまったく活動していません。ですから、ミトコンドリアなしでエネルギーを生産しなくてはなりません。
細胞の発電所(発熱所)であるミトコンドリアは、ブドウ糖をそのまま燃料にはできません。そこで細胞は、ブドウ糖をピルビン酸に変換し、ピルビン酸がミトコンドリアの燃料となります。この変換によって、少し熱エネルギーが生じます。このわずかな熱が、ガン細胞のエネルギーとなります。普通の細胞はさらに、このピルビン酸が発熱所で燃やされて、大きな熱エネルギーとなります。ひとつのブドウ糖から取れる熱エネルギーは、ガン細胞の1に対して、普通の細胞は18です。
ですから、ガン細胞は普通の細胞に比べて、同じエネルギーを生産するのに、18倍ものブドウ糖が必要です。いえ、18倍じゃ足りません。普通の細胞は脂肪などもエネルギー源にできるわけですから、ブドウ糖だけに頼るガン細胞は、普通の細胞が消費する糖分の、20倍、30倍もの糖分が必要となるはずです。
こう見ると、甘いものを食べれば食べるほど、ガン細胞を活気づけていることになります。糖分の高い食べ物は、砂糖のたくさん入ったお菓子系、脱穀した穀類(小麦粉、ヌードル、白パン、白米など)、酒類、ソーダ類がトップ4です。また、最近人気のある酵素ドリンクの大半は60%以上が糖分ですし、ポカリスエットなどのスポーツ飲料も糖分がかなり入っています。
糖分はガンを活気づける以外でも、血液を酸性に傾けるという大きな問題を抱えていて、アメリカの栄養研究者からは目の敵です。人間の血液はpHが7.35から7.45の弱アルカリ性の範囲に収まらないと致命的なのですが、これが7.35と中性(7.0)に近づくほど、糖尿病になりやすい、アトピーなどの皮膚のトラブル、骨粗鬆症など骨や歯の弱体化のほか、アルカリ性で活発化する酵素が働かなくなって生体活動が鈍るなど、様々な問題が噴出します。
ちなみに、糖分がよくないからと言って、人工甘味料(ダイエットコークなど)にすると、さらに大きな問題が待ち構えているようです。
(2) ガンの隠れ蓑(みの)
ガンは、普通の細胞が変身したものです。いったん変身すると、性質や行動がまるで変わってしまうのですが、そのひとつは、ガンは自分の周りをタンパク質の膜で被っている、ということです。この膜は、ガンが免疫から身を守る隠れ蓑となります。
免疫は、対象物を敵(異物)と見なすと、必要な兵隊(免疫細胞)をこしらえて攻撃します。ですから、ガン細胞も免疫に異物と判断されると、たちまち攻撃を受け、ひとたまりもありません。免疫が相手を異物と見なすかどうかのひとつの目安は、電荷です。普通の細胞は表面がマイナスの電荷を帯びているのに対して、ガン細胞は表面がプラスの電荷を帯びています。
ところが、ガンが自分を被っているタンパク質の膜は、マイナスの電荷を帯びています。そのために免疫が、ガンを異物と判断することができません。それなら、この隠れ蓑を引きはがしてしまえば、ガンは丸裸となり、プラスの電荷を帯びていることが発覚して、一気に免疫の標的となるはずです。
このタンパク質の膜を分解して、ぼろぼろにしてしまう強力な酵素があります。それは、私たちのすい臓が作るタンパク質消化酵素で、トリプシンとキモトリプシンの2つです。キモトリプシンの方が、トリプシンより威力が強いようです。また、最近注目されているナットウキナーゼという、納豆の製造過程から抽出される酵素も、タンパク質の分解能力がけっこう高いようです(おそらく、トリプシンに近い)。あと、パイナップルから摂れるブロメライン、パパイヤから摂れるパパインも悪くありませんが、酵素としての生存期間が比較的短いうえに、タンパク質の分解能力はトリプシンほどは高くないようです。
すい臓で作られたトリプシンとキモトリプシンは十二指腸に送られ、ここで食べ物と出会い、タンパク質の分解を始めます。また、一部はこの後の腸で吸収され、血液に乗って各部に運ばれます。そして、ガンのところに届いたトリプシンとキモトリプシンが、隠れ蓑のタンパク質の膜を分解するわけです。
消化酵素がないと、食べ物を分解できず、栄養が吸収されませんから、消化酵素は極めて重要な酵素です。ですから、消化酵素を製造するすい臓はとても大切な臓器です。さらにすい臓は、ブドウ糖を細胞内に取り込むのに必要なインシュリンを作るという大役も担っていますから、大事にしなければいけません。
糖尿病などですい臓を衰弱させると、消化酵素の生産にも支障が出ます。糖尿病を患っている人がガンにかかる確率は、そうでない人の2倍とも言われていますが、その理由のひとつは、タンパク質消化酵素の製造機能が弱るからだ、と言えそうです。ただ、すい臓が弱っている人は、回復するまで、サプリメントか何かで消化酵素を補った方がいいかもしれません。アメリカやメキシコで、通常療法(抗ガン剤、放射線、手術の3点セット)以外の自然療法などでがんを治療している人の多くは、タンパク質消化酵素のサプリメントを使っています。
すい臓がきちんと働いていたとしても、食事でタンパク質を摂りすぎていると、その分解(消化)にトリプシンとキモトリプシンのほとんどを使い切ってしまうかもしれません。そうなると、ガンの隠れ蓑を分解することに、これらのタンパク質消化酵素を回せません。ですから、特にがんを患っている人は、肉などタンパク質が多く含まれる食品はなるべく控えた方がよさそうです。糖分もタンパク質も控える話ばかり続きましたが、現代の食生活は明らかに過剰だとは思いませんか。
なお、タンパク質消化酵素をサプリメントで補給する場合は、サプリメントを選ぶ時にいくつかの注意(コーティングのことなど)が必要です。ここではとても書き切れませんので、興味のある方は大番頭の鈴木富司さんを通して、私の方にお問い合わせいただければと思います。
(続く)