2014.06.16   

第17章-2 ガンの特徴と対策 その2

前回は、

(1)  ガンは糖分なしでは生きていけませんので、糖分を摂れば摂るほどガンを活気づかせる。

(2)  ガンはタンパク質の隠れ蓑(みの)を被っていて、免疫の攻撃から身をかわしていますから、タンパク質を分解する消化酵素を無駄遣いしないで(つまりタンパク質を食べ過ぎないで)、あるいは消化酵素をサプリメントで補って、隠れ蓑を引き剥がすことができれば、ガンは丸裸になって免疫の標的となる。

ということを書きました。糖分もタンパク質も、体にとっては必要不可欠な栄養素なのですが、現代の食生活はどうも、この2つが過剰摂取されています。いくら体によいものでも、食べ過ぎたら毒になる、ということでしょうか。

(3) ガンは熱に弱い

アメリカのニューヨークで骨専門の手術医をしていたウイリアム•コーリー(William Bradley Coley)医学博士は1890年ころ、自分が手術を担当した患者が骨肉腫で亡くなったことが納得できず、ガンに対する調査を開始しました。病院の過去の事例研究を調べると、フレッド•シュタイン(Fred Stein)という肉腫の患者が、丹毒(化膿レンサ球菌による感染)にかかって高熱を出した後に、ガン腫瘍が消えてしまった記録を見つけました。

これにピンと来たコーリー博士がさらに調査を進めると、ロベルト•コッホ(Heinrich Hermann Robert Koch)、ルイ•パスツール(Louis Pasteur)、エミール•フォン•ベーリング(Emil Adolf von Behring)といった著明な細菌学者が残した記録にも、丹毒によるガン腫瘍の縮小が記述されているのを見つけました。そして博士は、1891年5月に、ガン患者に初めて、丹毒に意図的に感染させる治療をしたところ、患者は著しく病状が改善し、その後8年半生き延びた、という結果が出ました。

コーリー博士は、菌に反応した免疫が、菌を退治するために出した高熱によってガン細胞が死滅する、という理論を提唱し、手術や放射線治療を受けた患者にわざわざ菌を投入する療法を開発しました。これはコーリーの毒(Coley’s Toxins)と呼ばれ、化膿レンサ球菌と、腸内細菌科系のセラチア菌の混合物です。当初は生きた細菌を投与しましたが、別な病気を誘発する恐れがあることと、死んだ細菌を与えても免疫が同じように反応することが分かり、細菌の死骸に置き換えられました。

コーリーの毒が初めて与えられた腫瘍患者は、当時16歳だったジョン•フィッケン(John Ficken)で、1893年1月のことです。腹部の大きな腫瘍は消え、その後再発することなくずっと健康でしたが、26年後に心臓発作を起こし、42歳で亡くなりました。コーリー博士の当初の成功を受けて、コーリーの毒はアメリカやヨーロッパに瞬く間に広がり、42人の医師が、コーリーの毒の成功例を発表するようになりました。

ところが、米国ガン協会(American Cancer Society)や英国ガン研究所(Cancer Research UK)などが次々と、コーリーの毒に対する否定的な見解を発表し、アメリカではFDA(米国食品医薬品局)が臨床試験以外での使用を禁止するなど、医療界の主流は相変わらず、抗がん剤、放射線、手術以外の療法を認めたがりません。

このコーリー博士の発見にヒントを得て開発されたのが、温熱療法(Hyperthermia Treatment)です。温熱と言うより、高熱療法と言った方がいいかもしれません。外から遠赤外線などの電磁波を与え、体の中の温度を上昇させる温熱機が開発されています。

ガン細胞はどうも、熱の代謝がスムーズにいかないようです。普通の細胞は摂氏44度から45度で死滅してしまうのに対し、ガン細胞は43度くらいが致命的だと言われています。体内の一部の温度を上げる局所温熱機は45度くらいまで上げるものがあるようですが、全身温熱機は、43度を狙って44度まで上がってしまうと、普通の細胞も危なくなりますので、だいたい41度から42度の間がターゲットです。

私も全身温熱機を試させていただいたことがあります。横になり、首から下が温熱機で被われました。40度くらいを狙うマイルドなものでしたが、30分くらいで全身汗だくになり、まるでサウナに入ったようでした。

様々なガン治療を試しているメキシコ•ティワナのクリニックではどこも、当たり前のように温熱機を持っていて、ほとんどの患者に使っています。温熱療法だけでガン治療をするのではなく、他の療法との併用です。ガン細胞は41度から42度で死滅はしなくとも、相当ふらふらになって抵抗力が衰え、他の療法がよく効くようになるそうです。ヘルベルト•アルバレズ医学博士は、放射線や抗がん剤と温熱機を併用すると、併用しない場合と比べて、放射線や抗がん剤の量を、半分から、場合によっては10分の1くらいまで減らしても、同じ効果が出る、と言っています。

ともかく、風邪をひいて高熱を出すのは、必ずしも悪いことではなさそうです。

(4) ガンは酸素に弱い

私たちの細胞は、2つのエネルギー生産手段を持っています。1つはみなさんご存知の、ミトコンドリアの中の、酸素を使った化学反応で、これは好気性呼吸と呼ばれています。もう1つは、発酵と同じ、ブドウ糖を乳酸に変換する化学反応で、酸素が使われないので嫌気性呼吸と呼ばれます。嫌気性のエネルギー生産はミトコンドリアとは関係なく、ミトコンドリアの外で行われます。

ガン細胞は、ミトコンドリア内の好気性のエネルギー生産が全くと言っていいほど、稼働していません。そのため、エネルギーをもっぱら、嫌気性の生産方式に頼っています。嫌気性のエネルギー生産は恐ろしいほど効率が悪く、ミトコンドリアの好気性と、20倍近い開きがあります。それなのにガン細胞がミトコンドリアのエネルギー生産を使わず(あるいは使えず)、話にならないほど効率の悪い方式を採用する(あるいは採用せざるを得ない)のは、大きな謎となっています。ともかくガン細胞が好気性反応を(ほとんど)使わないということは、酸素は(ほとんど)いらない、ということです。

地球に生物が誕生し始めた頃は、ほとんどが単細胞生物で、嫌気性呼吸によってエネルギーを生産していたようです。ところが、これらの生物が吐き出す酸素が充満して、生物が絶滅しかけた、と言われています。当時は生物にとって、酸素は毒ガスでしかなかったわけです。その時になって、毒ガスの酸素をエネルギー生産に使う好気性の生物が登場し、それによって生物は絶滅を免れたようです。好気性の効率の良いエネルギー生産方式によって、その後の生物の進化がスピードアップした、とも言われています。

今でも、嫌気性呼吸の微生物はたくさんいるのですが、ガン細胞はエネルギー生産が太古の時代に戻ってしまった、と言えるかもしれません。そして、太古の微生物のように、酸素は毒ガスでしかなくなってしまったようです。

酸素には、最も強力なフリーラジカルである、スーパーオキシドアニンが含まれています。フリーラジカルは、自分の中に電子が不足しているために非常に不安定で、他の物質から電子を強引に奪い去ってしまう(酸化してしまう)のが特色で、活性酸素とも呼ばれます。酸化の典型的な例は金属が錆(さ)びることですが、例えば細胞膜は、酸化しやすい油脂が主成分のひとつで、それが酸化すると、錆び付いたようになって細胞膜の機能が損なわれ、大きな問題が生じます。それに対し、相手に電子を与え、それによってあまり不安定にならず、他から電子を強奪することをしないのが、抗酸化物と呼ばれるものです。ですから、抗酸化物はフリーラジカルを中和して、無害化します。

太古の嫌気性呼吸の生物は、最強のフリーラジカルであるスーパーオキシドアニンを含む酸素ガスは毒でしかなかったわけです。それに対し、その後進化した、ほとんどすべての植物や動物の細胞は、スーパーオキシドアニンに対抗する抗酸化物を持っています。それはSOD(スーパーオキシド•ディスムターゼ)と呼ばれる酵素(こうそ)で、スーパーオキシドアニンを酸素と過酸化水素に分解してしまいます。過酸化水素もフリーラジカルですが、普通の細胞は過酸化水素を、水と酸素に分解して無害化するカタラーゼという酵素(こうそ)も持っています。

ところが、ガン細胞は過酸化水素を分解するカタラーゼを全くか、少ししか持っていません。ですから、スーパーオキシドアニンは分解できても、それによって生じる過酸化水素が、ガン細胞にとって毒となるわけです。

高気圧で、しかも酸素濃度がほぼ100%の酸素室に入る、高濃度酸素療法(Hyperbaric Oxygen Therapy)は、ガン細胞が酸素ガスに弱いという弱点を狙った治療法です。血行が促進される上に、血液中に酸素が溶け込み、酸素呼吸をしていない嫌気性の微生物や、ガン細胞を退治するのに効果がある、と言われています。メキシコ•ティワナの一部のクリニックには、この酸素室が設けられています。

体に酸素を十分に取り込むためにも、呼吸をおろそかにはできません。
(続く)

 

志あるリー ダーのための「寺子屋」塾トップページへ