第18章―1 隠蔽(いんぺい)されたガン治療法の数々 その1
昨年か一昨年、鈴木富司「寺子屋」塾大番頭を中心に、「寺子屋」塾師匠(執筆者)など何人かが集まった飲み会の席で私が、「ガンの治療法なんて50も100もありますよ」と言ったら、出口光師匠(メキキの会会長)から、「それなら、ガン治療の俯瞰(ふかん)図のようなものを作ってよ」とリクエストを受け、それがずっと心に引っかかっていました。
俯瞰図、あるいは鳥瞰(ちょうかん)図は、それによってガン治療が一望できる、もしかしたら、俯瞰図によってガンから離れて、ガンを外から客観的に冷静に眺められる、という意味だと私はとりましたが、どうやったらいいのか、いまだ私にはよく分かりません。ともかく、目的、あるいは用途別に並べてみよう、というのがこの第18章です。
それにしても一体、50も100もあるガンの治療法がなぜ、一般にはほとんど知られていないのか。効き目がなかったから忘れ去られた、というのなら分かります。でも、どう見ても、今の主流の治療法より効果が高そうなのが多い。
アメリカ合衆国からはほぼ完全に追い出されたか、一部の地区に追いやられたかしている一方、アメリカ国境を越えてすぐのところにあるメキシコの町、ティワナではその治療法の大半が非常に栄えています。しかも、ティワナでその治療を受けているのは、国境を越えてやって来るアメリカの人たちが多い。
一般に知られていないのは、知ってほしくはない人たちがお金と権力を駆使してアメリカから締め出している、というだけではどうも説明がつきそうにありません。それよりも、私たち一般が知りたくないのではないだろうか……。
まあ、この話は章を変えて、または別の機会に述べさせていただきたいと思います。それでは、まずはガン細胞を直接死滅させる方法、天然の抗ガン剤です。主流の医療が使う化学合成薬品の抗ガン剤がひどい副作用を伴う、という大きな欠点を持つのに対し、それとの決定的な違いは、天然の抗ガン剤は副作用があまり、またはほとんどないことです。
1. ガンを死滅させる療法
(1) アミグダリン−ビタミンB17
あんずやりんご、さくらんぼうなど様々なくだものの種、アーモンドなどのナッツ類、ブラックベリーなど様々なベリー類、ムング豆やレンズ豆など様々な豆類、アルファルファやほうれん草などの葉、脱穀していない穀類といった、おそらく数百種類の食品に含まれている天然成分がアミグダリンです。こうした自然の食品を多く食べていれば、かなりの量のアミグダリンを摂取していることになります。
このアミグダリンがガンに効果があると知られたのは、パキスタンのヒマラヤ山脈に住むハンザ族(Hunza Tribe)のことを書いた本が1955年に出版されたのがきっかけです(J. I. Rodale著「The Healthy Hunzas」)。ハンザの人々は長寿で、あんずの種やアーモンドの実などオーガニックの自然な食品を中心に食べ、よく運動をするのが特色でした。
最も注目されたのは、ハンザの人々が成人病(生活習慣病)、特にガンにかからないことです。当時はガンにかかる人が増え始めた欧米の人たちとの一番の違いは、アーモンドなどと一緒に、乾燥させたあんずの種をたくさん食べることでした。乾燥したあんずの種はものすごく苦くて、苦いのが相当得意な人しか食べ続けるのは無理だ、と私は思ってしまいますが、この苦味の成分がアミグダリンです。このアミグダリンが着目され、研究された結果、これがガン細胞を死滅させる仕組みが突き止められました。
アミグダリンはグルコース(ぶどう糖)が2個、シアン化水素が1個、ベンズアルデヒド1個の合計4個の分子が結合した構造をしています。この中で、シアン化水素はシアン化物の一種で、つよい毒素です。シアン化物は例えば、シアンガスを大量に吸い込んだり、シアン化カリウム(青酸カリ)をある程度の量飲んだりすると、すぐに死んでしまいます。もうひとつのベンズアルデヒドも毒性が比較的強い毒物です。
ところが、毒性の強いシアン化水素も、ベンズアルデヒドも、ほかの分子と結合していると、毒性を全く発揮しません。ビタミンB12もシアン化水素が結合していますが、毒性が全くないだけでなく、これがないと細胞のエネルギー代謝に支障が出るなど、私たちの体に必要不可欠な必須栄養素です。
シアン化水素もベンズアルデヒドも毒性を発揮するのは、アミグダリンから切り離されて単体になったときです。アミグダリンを分解して、これらの毒素を単体にするのは、ベータ・グルコシターゼという酵素です。ベータ・グルコシターゼと遭遇したときだけ、アミグダリンが分解して毒素が解き放たれる、ということです。
どういうわけか、ベータ・グルコシターゼはガン細胞の中にはたくさんあるのに、通常の細胞の中にはほとんどか、まったく存在していないようです。これはおそらく、糖分(ブドウ糖)を大量に必要とするガン細胞が、アミグダリンのようにブドウ糖を構成要素にしている栄養素から、ブドウ糖を切り離すために、ベータ・グルコシターゼなどの酵素をせっせと作るからだと考えられます。
ガン細胞はブドウ糖がほしいばかりに、毒素までも食らってしまう、というわけです。これに対し、通常の細胞はベータ・グルコシターゼをほとんどか、全く持たないために、アミグダリンが分解され、毒素が解き放たれることはまずありません。つまり、アミグダリンはガン細胞にとっては毒素となるけれど、通常の細胞には危害を加えない、天然の抗ガン剤だ、ということです。
医薬品業界が製造する化学合成の抗ガン剤の最大の問題は、ガン細胞にとっても毒だけれども、通常細胞にとっても強い毒である、ということです。そのため、通常細胞や免疫などが大きなダメージを受け、私たちの体につらくて苦しい副作用をもたらします。
アメリカではこのアミグダリンが1960年代から話題になり始め、それ以降、アミグダリンを推す人たちと、それに反対する医薬品業界、FDA(米国食品医薬品局)、AMA(米国医療協会)との間でしばらく、激しいバトルが展開されました。結局、業界側がねばりにねばって押し切り、アミグダリンの売買も医療行為もFDAによって、アメリカでは禁止されています。
一方、ほとんどのガン治療法が認められているメキシコ・ティワナでは、ガンを患っている人に対して多くの場合、アミグダリンは液体で、点滴によって直接血管に投与されます。このような形で医療行為に使われるアミグダリンは、レートリル(Laetrile)と呼ばれます。また、ガン予防、あるいはガン退治には不可欠な栄養素という意味で、ビタミンB17と呼ぶ人たちもいます。
ただ、アミグダリンがすべてのガンに有効だというわけではなさそうです。ガン細胞の状態、特にミトコンドリアの状態によって、効き目は大きく違ってくるかもしれません。それでも、もし効かないにしても、副作用がほとんどありませんから、あまり害にはなりません。医薬品メーカーが作る抗がん剤は、効かなくても、たとえガンを悪化させても、つらくて苦しい副作用だけは伴いますし、多く投与しすぎると、生命に危険をもたらします。
レートリルは私の知る限り、メキシコとドイツで製造されています。元のアミグダリンは主に、あんずの種から抽出されています。なお、”規制大国”アメリカでも、個人がメキシコなどから勝手に仕入れて、個人的に使用するのまでは禁じていません。日本でも、ガン治療に使っている人はいるようです。
(続く)