第18章―6 隠蔽(いんぺい)されたガン治療法の数々 その6
ベートーベンは相当な腕前のピアニストで、演奏家としては若いころ(22才)から人気があったようです。モーツアルトにものすごく憧(あこが)れていて、オーストリアのウイーンに出てきて一時はモーツアルトに弟子入りすることがほぼ決まっていたのに、本国ドイツのお母さんが急に亡くなり、弟など家族の面倒を見なければならなくなって、憧れの人への弟子入りは流れてしまいました。それでも、本格的に作曲を始めたのはモーツアルトが亡くなった後です。
ピアニストとしてはすでに若いころから成功していましたが、ほとんどいつも体調がすぐれず、しばしば具合が非常に悪くなり、耳がだんだん聞こえなくなってきて、一時は自殺を考えたほどでした。つまり、ほぼ常に病気がちだったわけです。
具合が悪いのはともかく、耳が聞こえないのはピアニストとしては致命的です。でも、もしベートーベンが健康的で、耳がよく聞こえる人だったら、はたして作曲に没頭したでしょうか。ピアニストのスターで終わっていなかっただろうか。
作曲家としてのベートーベンがいなかったら、その後の音楽界はどうなっていたか。それまでハイドンが中心となって確立した西洋音楽(今で言うとクラシック音楽)のスタイルをかなり根本的に覆(くつがえ)して音楽史の流れを完全に変えてしまったうえに、シューベルトを始めとしてその後の作曲家に絶大な影響を与え続け、彼らから尊敬を超えてほとんど崇拝されていたベートーベンの音楽がなかったら、19世紀以降の音楽は全く違うものになっていたかもしれません。
ものは考えようですが、病気がいつも悪い方向に働くばかりではないようです。ベートーベンの作曲にとって大きかったことは、私の全くの独断ですが、20才の時にモーツアルトが亡くなったことと、不健康で特に耳に障害があったこと。24才のころから本格的に作曲を始めて、おそらく30才前後から、実に見事で全く独創的なメロディーや曲想がベートーベンの中に湧いて出てきました。
モーツアルトやベートーベンのメロディー、曲想が、もし自分の中に湧いて出てきたら、その感動はどれだけ大きいか。私はそれを想像すると、目から涙が溢(あふ)れそうになるのですが、具合が悪くて耳が聞こえなくなるという非常に苦しい試練のベートーベンを、その感動がどれだけ救ったか。ベートーベンのいくつかの曲は、苦しみを乗り越えて喜びがやって来る、暗黒をくぐり抜けて光が輝く、という展開です。その典型は交響曲の5番と9番。ピアノ協奏曲全5曲とバイオリン協奏曲はすべて、最後(3部構成の第3部)が喜びの表現です。
「天命」という言葉は非常に崇高で、私には全く荷が重いのですが、モーツアルトやベートーベンの作曲は「天命」としか言いようがありません。ベートーベンの場合、不健康や耳の障害はまるで「天命」の一部であるかのようです。
でも、ベートーベンのように病気をわざわざ「天命」に取り込む必要は全くないと思いますし、自分が心の底からやりたいことに邁進したら、病気なんて余分なものは消し飛んでしまいそうです。ですから、病気に苦しんで、それがまるで人生のメインテーマになってしまっている人は、心の底からやりたいことを見つけ、それに邁進する(それが病気に代わって人生のメインテーマになる)ことが一番の特効薬になるかもしれません。
私の無限のゲームが、自分が、あるいは人が感動することだとしたら、モーツアルトやベートーベンのような大天才は私の無限のゲームにとって非常に重要な存在であり、このゲームのキー・プレイヤー(鍵を握る参加者)です。でも、モーツアルトやベートーベンの無限のゲームは、「感動のゲーム」ではなかったかもしれません。
ベートーベンの無限のゲームが何だったかは、200年ほど前にさかのぼって彼に会いに行き、ジェイムス・カース(James P Carse)さんの書いた「Finite and Infinite Games」を読んでもらって本人に聞くしかなさそうです。ある時期から、次々に作る曲がそれまでとまったく違う独特な曲ばかり、ベートーベンの作品の中でさえ似たような曲はあまりないといった、独創という言葉はこの人のためにあるのではないかというベートーベンの無限のゲームは、まさに「独創のゲーム」だったかもしれません。
私の哲学の師匠、木村玄空さんの無限のゲームは私から見ると、「トランスフォーメーションのゲーム」ですが、進歩、あるいは進化のひとつひとつのステップはトランスフォーメーションですから、これは「進化のゲーム」と言ってもいいかもしれません。メキキの会が主催している「個の花道場」もある意味ではトランスフォーメーションがひとつの大きな柱ですから、これも「進化のゲーム」と言えるかもしれません。
また谷口雅春さんは、深い悟りの境地で悟ったことを一般に広めようとしましたが、人間の魂が一番求めていることは進化、もっと一般的な言葉では成長であるとして、悟りを広げるために創設した団体を「生長の家」と名付けました。ですから、谷口さんの無限のゲームも「進化のゲーム」だったかもしれません。
私は、木村さんの弟子として哲学を勉強し、「個の花道場」に参加して、さらに谷口さんの書いた本を読み、これら「進化のゲーム」に次々と参加しています。しかし、私がこれらのゲームに参加する最大の理由はおそらく、人がトランスフォームするのには大きな感動があるからです。「個の花道場」に参加されたことがある方なら分かると思いますが、参加者の誰かにトランスフォーメーションが起こると非常に感動しますよね。
トランスフォーメーションを起こそうとして木村さんがやっていること、トランスフォーメーションの場である「個の花道場」、人のトランスフォーメーションがいくつも記述されていて成長(進化)の原理を伝えようとしている谷口さんの本によって、私はとても感動します。私はこれらの「進化のゲーム」に参加しながら、自分の「感動のゲーム」を目一杯やっています。
そして、木村さん、メキキの会(出口光さん)、谷口さん、そして「個の花道場」の参加者の皆さんは、「進化のゲーム」をされていると同時に、私に感動を与えてくれる可能性がありますので、私の「感動のゲーム」の参加者でもあるわけです。そういう意味では、世界中のあらゆる人が、本人の無限のゲームが何であれ、人に感動を与える可能性がある限り、少なくとも潜在的には私の「感動のゲーム」の参加者です。
それどころか、感動を引き起こす可能性のある、あらゆる自然現象(自然の創作物)、アート(人間の創作物)なども私の「感動のゲーム」の参加対象者になります。もしかしたら、宇宙のあらゆるものが私の「感動のゲーム」の参加対象者かもしれません。「感動のゲーム」をやっている私から見たら、本人が参加する気があってもなくても、あるいは参加を意識的に拒否したとしても、あらゆる人がいずれは感動する、あるいは感動を与える可能性がある限り、むしろこのゲームへの参加をずっと避け続けることは実質的にはほぼ不可能、と言えそうです。
すべての人に、その人に独特の「無限のゲーム」があり、すべての人が、意識していようがいまいが、あるいは気がついていようがいまいが、自分の「無限のゲーム」をしている、と私には思えます。そう考えると、出口さんのおっしゃっている「天命」もすべての人が持っていて、すべての人がそれを知っていようがいまいが、積極的だろうが消極的だろうが、なんらかの形で自分の「天命」をやっていそうです。
では、自分の「無限のゲーム」を知っていてやっているのと、知らないでやっているのとの違いは何か。無限と言っても、自分が死んでからもはたして続くのか。自分の無限のゲームをどうやって知るか(これは「Finite and Infinite Games」を読んでいただくのが一番よさそうですが)などについては次回に触れさせていただくとして、本題の「ガン細胞を退治する方法」に移りたいと思います。
(5) リグビア療法 − ウイルスがガンを退治する
ガン細胞だけを破壊して、通常の細胞には全く危害を加えないウイルスがある、と聞いても、ほとんどの人は信じられないと思いますが、そのウイルスがどうも本当に存在するようです。
子供の胃腸から採取したウイルスを、ガン細胞を移植した実験用のハムスターに植え付けると、ガン細胞ばかりに集まって行き、そのガン細胞を破壊する、という現象が1960年ころの実験で明らかになりました。この研究の主任だったラトビア共和国のアイナ・ムセニエス(Aina Muceniece)薬学博士が中心となって1965年、ラトビア科学協会(A. Kirhenshtein Institute of Microbiology)の中にウイルス療法研究所(Virotherapy Laboratory)を設立、腸内細菌の中のどのウイルスがガンを破壊するのかの研究が始まりました。
様々な実験によってガンだけを破壊するウイルスは5種類あることが分かりました。この中で最も強力なのはリグビア(Rigvir)と名付けられ、少なくとも大人には安全であり(体に注入しても、ガン細胞以外には危害を加えない)、大人の体内では増殖しないことが判明しました。
リグビア(Rigvir)という名称は、研究所のある町(Riga)と、ウイルス(Virus)の合成語だと思われます。
その後、ラトビア共和国(1968年)、ロシア(1985年と1987年)で400人から1000人のガン患者を対象とした、政府承認の大がかりなリグビアの臨床試験が実施され、特に黒色種(Melanoma)に効果があること、ガン患者にも全く安全(感染や伝染をしない)で、重症の末期ガン患者でさえ危険はないことが確認されました。
1990年から1995年にかけては、やはりラトビア共和国とロシアで様々なタイプのガンに試され、リグビアは2002年に特許を取得、2004年にはラトビア共和国の医療局から薬品(抗ガン剤)として正式な認可を受けました。現在までに、おそらくヨーロッパの何カ国かで正式に認可されていると思います。
効果があると認められたガン治療法のほとんど全部が正式に認可されているメキシコのティワナで、リグビアをガン治療に採用しているトニー先生(Antonio Jimenez医学博士、通称はDr. Tony)によれば、リグビアは遺伝子操作をされていない全く自然のウイルスで、ガン細胞に寄っていく特性(Oncotropic)と、ガン細胞を破壊する特性(Oncolytic)を兼ね備えています。
リグビアがガン細胞を破壊する機能は主に二つあり、ひとつはガン細胞の中に入ると、いきなり増殖を始めることです。それまで人間の体内で全く増殖しなかったのが、ガン細胞内ではどんどん増殖して数を増やし、そのためガン細胞は破裂(はれつ)するように破壊(はかい)されるそうです。
ガン細胞は白血球などの免疫から自分を守るために、自分たちの周りにタンパク質の膜を張り巡らして免疫からの隠れ蓑(みの)にしているうえに、アンテナ状の突起物を出して、免疫の偵察部隊を撹乱(かくらん)させて免疫に発見されないようにしているようです。免疫の偵察部隊は細胞がガン化して性質が変わっていることを見抜く機能を持っていて、ガン細胞だと分かると、直ちに攻撃部隊を招集して、ガン細胞を破壊します。
ガン細胞内に入らないリグビアは、このアンテナに取り付いてしまうため、免疫の偵察部隊を撹乱することができなくなります。それによって免疫からの攻撃を受け、ガン細胞は破壊される、というのがリグビアのもうひとつのガン退治の機能です。
リグビアはまさにガンの天敵、と言えそうです。これがリグビアの「天命」かもしれません。現在私が書いているこのシリーズは、ガンの天敵を次々とご紹介しているようなものです。
50才代前半のトニー先生は、リグビアを定期的にご自身の体に注射で注入なさっています。お父さんが病気がちでガンなどを患い、比較的若くに亡くなっていますので、念のためのガン予防だそうですが、自分の体で試すことよって、「リグビアの安全性も実証できる」とおっしゃっています。
(続く)